カルティエの中古腕時計って実際どう?プロが語る“本音”の話
こんにちは。ベルモントルの妹尾です。
今回は「カルティエの中古腕時計って実際どうなの?」という、これから購入を考えている方に向けた、プロとしての本音をお話しします。
ネットを見れば「中古はお得」「ヴィンテージがいい」といった意見がある一方で、
「本当に大丈夫なの?」「品質に不安がある」「修理代が怖い」など、気になる声も多く聞きます。
そこで今回は、「中古カルティエ」のリアルを、新品との比較やメリット・デメリットを踏まえて、わかりやすくお伝えします。
ベルモントルは予約制でご対応させて頂いておりますので、気になる商品がございましたら、そちらから予約をお願い致します。
それでは早速やってまいりましょう。
カルティエは“デザイン”で選ばれるブランド
まず前提として、カルティエの腕時計はロレックスやオメガのような“スペック重視”の時計とは少し立ち位置が異なります。
いわば「美しさ」「装いとの調和」「洗練された存在感」で選ばれるブランドです。
タンク、サントス、パシャ、パンテールなどなどカルティエの時計は、どれも“時計として”だけでなく、“ジュエリーとして”“ファッションとして”も成立する完成度を持っています。
だからこそ、新品か中古かという違いにも、“実用性”だけでなく、“価値観”の差が表れてきます。
新品と中古。
どちらが良い悪いというより、**どちらが“自分に合っているか”**を見極めることが大切です。
そして特にカルティエの時計は、中古市場でも非常に流通量が多く、状態・価格・希少性の幅が広いのが特徴です。
同じタンクでも、30万円台から1000万円超えまで揃っています。
この辺の中古市場については、こちらの動画で詳しく解説しておりますので、お時間のある際にでもご覧ください⬇️
話を戻しまして、ではまず、比較してみましょう。
【比較①】新品と中古の価格の違い
今回色々と客観的に見て、正直な感想をお話しします。
去年までは新品の価格よりも4〜5割くらい中古の方が安くなるので、お買い得ですよ。
みたいなニュアンスの説明をしてきました。
ですが今年はそういった説明が出来ない状況まで来ています。
正直なところ、もはや新品とほとんど変わらないか、もしくは安く買えるとしても新品と比較して2〜3割引程度かなぁ・・・といった印象です。
じゃあいつもの『サントス』の比較をしましょう。

項目 | 新品 | 中古 |
---|---|---|
購入価格 | (112〜123万円以上) | 86〜100万円前後 |
新品の方は現行型のMMサイズのスタートが112万円で、LMサイズが123万円です。
中古の方は一番流通量が多いサントスカレを出していますが中古市場においては、大体これくらいの相場感かなぁ・・・といった印象です。
中古の価格に開きがあるのは、その個体にある付属品やコンディションが影響しているからですね。
去年までは毎年、新品腕時計の価格がガンガン伸びていたので、それに引っ張られて中古相場も上昇していると考えていました。
しかし、新品は去年の中頃から値上げがなくなりましたが、中古市場は上昇を続けています。
今回はサントスカレを例題にあげているのですが、普段から私が進めているマストタンクもサントスほどではありませんが、中古相場が上がっています。
サントスを筆頭に、他のモデルもジワジワと上昇してるような印象ですね。
直近の5年の価格の推移を見ていくと、新品の価格を超えることはないと思ってたのですが、サントスカレはこのまま行けばロレックスのエクスプローラーとか、そんな感じになりそうな気もしています。
これが現在のリアルな数字の解説なので、一概に中古が安いからそっちで良いや。ってはなりにくいのですが、パシャなどはサントスとかと比べればやはり安いので、この辺もモデルを狙うのは充分にアリだと思いますね。
では次に状態と気持ち良さについて解説します。
【比較②】状態の違いと“気持ちよさ”
新品の最大の魅力は、やはり完璧なコンディションです。
キズひとつない、保証書・箱もすべて揃った状態で、正規店で接客を受ける“体験”も含めて、それは確かに特別です。
一方、中古はというと同じ「中古」と言っても、状態はピンキリです。
オーバーホール済で新品同様の個体もあれば、小キズが多いが味わい深いものもありますし、一部パーツ交換されている個体などもあります。
そしてこの状態というのは、基本的には腕時計の金額と相関関係にあります。
要するに、コンディションが良ければ値段は高くなるし、よろしくないのであれば安くなるということですね。
ここで重要なのは、これらを理解して“自分がどこまで許容できるか”を知ることです。
あとここには、年代も大きく影響します。
1930年代の腕時計で、70年代のようなコンディションの時計はまずあり得ませんよね。
そんな感じで、ヴィンテージウォッチは、その時計に対してのコンディションはこんなもんだろうなぁ・・・っていう許容が必要です。
そしてプロとして正直に言いますが、信頼できるショップで買えば、中古でも本当に美しい個体が手に入ります。
むしろ新品にはない“経年の美”を感じられる個体もありますよね。
そして、新品と中古の2つを比較したときの一番大きなポイントは『防水性』です。
製造から10年程度であれば、まだ防水機能は働いていると考えていいと思いますが、20年以上経過している中古であれば、基本的には非防水の時計として扱わないといけません。
よって、防水時計じゃないと生活は不便であるとか、水のことを気にしながら腕時計を扱うなんて面倒・・・って感じる方は、やはり新品との相性がいいですよね。
【比較③】モデルの幅と選択肢
比較項目 | 新品 | 中古 |
---|---|---|
現行モデル | 購入可能 | 状態が良ければ流通あり |
廃番モデル | 入手不可 | 入手可能(豊富) |
色やサイズの選択肢 | 限定的 | 非常に多い |
たとえば、現行のタンクマストは文字盤のバリエーションは5つしかありませんが、これがヴィンテージのマストタンクになるとさまざまな文字盤が作られていたので、その中から選ぶことが出来ます。
さまざまな文字盤があるということは、自分の好みに合うデザインに出会える確率が高まると共に、より個性を打ち出すことが出来ます。
しかし、サントスを見てみると、こちらは素材、文字盤ともに現行型の方がバリエーションが多いのかなぁ・・・といった印象ですね。
現行型はお金を払えばすぐにそれを手にすることができますが、廃盤モデルだともちろんそういったことはなく、希少なモデルになればなるほど一期一会の要素が大きくなります。
こうした今では手に入らない名作たちは、中古市場にしか存在しません。
「自分だけの1本」に出会いたい人にとっては、中古やヴィンテージの方が夢が広がる世界ですよね。
では次に保証とメンテナンスについてのお話をします。
【比較④】保証とメンテナンス
ではこちらの図をご覧ください。
比較項目 | 新品 | 中古 |
---|---|---|
保証期間 | 2年(メーカー保証) | 店舗ごとの保証(0〜12ヶ月程度) |
アフターサービス | メーカーで一貫対応 | 店舗 or 外注により差あり |
安心感 | 高い | 店によって差がある(見極め必要) |
保証期間ですがcartier careってのがあって、ここに入ったら8年まで保証が延長されるんですが、2年が過ぎてからはオーバーホール代は有料です。
じゃあなんの保証なのかといいますと、定期点検を無料で受けられるって保証です。
要するに、定期点検に出して『これは修理が必要ですね、不要ですね』ってのを無料でチェックしてもらうってことですね。
中古の時計の場合だと、店舗ごとに保証期間が違うんですが、一般的には1週間から1年の間で収まるのかなぁといった印象ですね。
アフターサービスは、カルティエのブティックに出せばスイスの工房でしっかりとメンテナンスを行なってくれますし、ブランドがやってくれているという安心感がありますよね。
中古の場合だと、その時計店でそのままやったり、その時計店お抱えの工房にお願いするような流れになります。
これは店舗とその店舗が抱えている外注先によって、差が出てくるところです。
私のところは購入から1年の動作保証を約束していますし、私がお願いしているところの公房はリシュモンで働いていた方なので、その辺も遜色ないくらいの実力だと考えています。
そして、メンテナンスとオーバーホール金額の件ですが、これはやはりブランドでお願いした方が高くなります。
車の車検がわかりやすいと思いますが、車検もトヨタに出せば結構な値段になりますが、町工場に出すと価格を抑えることが出来ますよね。
ただその町工場が信頼のおけるところなのか?が問題な訳であって、そこが信頼のおける会社であれば全く問題がないのと同じです。
項目 | 正規カスタマーサービス | 時計修理専門店 |
---|
クォーツ式の料金 | 44,000円〜 | 約30,000円〜 |
手巻き式・自動巻きの料金 | 66,000円〜 | 約45,000円〜 |
納期 | 約1〜3ヶ月 | 約2〜4週間 |
カルティエの腕時計のオーバーホール料金は、正規のカスタマーサービスに依頼した場合、クォーツ式ムーブメントで44,000円~、手巻き式・自動巻きで66,000円~が相場です。
時計修理専門店に依頼する場合は、クォーツ式で3万円前後~、機械式で45,000円前後が目安かなぁ・・・といった印象ですね。
納期は、正規のカスタマーサービスで約1~3ヶ月、時計修理専門店で2~4週間程度といった印象ですね。
このメンテナンスも、どっちが正解でどっちが間違いというのはありませんので、車検のようなイメージで適材適所で選ばれるのがおすすめです。
では最後に、私の考えるヴィンテージウォッチが値上がりし続ける理由を私なりに考えてみたので、そのことをお話しします。
多分前から小さい時計が求められてきたんだと思う
このパートは全て私の考察なので、2年前くらいに流行ったそれってあなたの感想ですよね?程度で聞いてみてください。
『小さい腕時計専門店』としてやらせて頂いているのですが、『自分、結構腕が細いんですよねぇ・・・だから小さい時計を探してて』という方がいます。
確かに平均より細めですねぇ・・・って方もいれば、いえいえ、〇〇さんは平均的な手首周りですよ。
って方もまぁまぁの確率でいらっしゃいます。
細腕の方は、もちろん小ぶりの腕時計は満足して頂けますが、自分の中では細めだと思ってる普通サイズの手首周りの方も基本的には満足してくれます。
普段から動画でお話ししてるんですが、日本人の平均的な手首周りのサイズは16.5cmなんですよね。
普段自分の手首周りを測ることもないでしょうから、そういった勘違いをするのも全然理解出来るんですが、これまでいろんなお客様と話してきてなんとなくわかったことは、『時計って別に大きくなくて良い』ってことです。
もちろん、これは手首をベースにした考え方なので、手首が太い方とか身長が高い方は大きい時計の方が似合うと考えています。
体格が良いガチッとしたお客様にも時々お越し頂くんですが、ロレックスのスポーツモデルを着用してあるとカッコいいなぁと思いますしね。
これまではずっとでかい時計が求められてきたし、時計ブランドもそういったでかい時計を押してきていました。
でもついこの前開催された2025年のウォッチズアンドワンダーズでは、時計各社それぞれ小ぶりな時計を発表しています。
不思議なもので、これまではでかい時計こそ正義みたいな風潮だったのが、小さいのは小さいのでこっちもいいよね。
みたいな風潮になっています。
ですので、今までは小さい時計=肩身が狭いみたいな感じだったのが、今はそういったのがなくなっています。
そして、ヴィンテージのカルティエなのですが現行型と比較すれば、結構小さいんですよね。
でもこれがずっと値上がりし続けていて、新品の価格に並びそうになってるのは、純粋にこのサイズが求められているからでしょうし、特に平均的な日本人であればこのサイズ感が馴染みが良いと思うんですよねぇ。
前述した通り、去年までは新品が高騰してたから、新品が買えないから仕方なく中古を・・・って方が相場をした支えしてるんだろうなぁ・・・って思ってたのですが、どうやらそうじゃないってのが明確に分かってきました。
要するに、確実にこのサイズに需要があるということですよね。
サイズ感は人それぞれの好みがあるし、サイズだけでヴィンテージを選ぶ!という判断にはなりにくいと思われますが、それでも小さい時計をもっと自信を持って着用してほしいなぁ・・・と皆様にお伝えしたいですね。