タンクMC
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タンクMCの全てを解説
カルティエの腕時計のモデルの中で、最も有名なのは『タンク』シリーズを思い浮かべる方は、多いのではないでしょうか。
そんなタンクなのですが、タンク ルイ カルティエを頂点としてそこから様々な派生モデルも誕生しました。
例えば、
『タンク アメリカン』
『タンク フランセーズ』
『タンク アングレーズ(廃盤)』
『タンク ソロ』
などがあり、冒頭にタンクがつくのはタンクの派生系であることを表しています。
そして、今回ご紹介する『タンクMC』と言うモデルは、上記のモデルの中でも最新の2013年に男性専用モデルとして誕生しました。
タンクMCの魅力
まずはこのタンクMCの名前の由来を見て行きましょう。
タンクMCのMCは『マニュファクチュール・カルティエ』の意味になります。
このマニュファクチュールというのは、時計のデザイン、組み立てだけでなく時計の製造に最も難しいムーブメントまでをも自社で一貫して作ることが出来る、時計メーカーのことを指します。
老舗ブランドで言えば、ジャガールクルトは元々はムーブメントを作る専門の会社だったのが、そこから別の部品も作れるようになってマニュファクチュールとなりました。
しかし、ムーブメントを作れるというのは、非常に技術の必要な領域であり私たちが知る『ロレックス』『ブライトリング』『ホイヤー』なども実は自社製ムーブメントを搭載できるようになったのは、1980年代以降なんですね。
そこでこのタンクMCと言うネーミングは、それだけでカルティエ社が自社でムーブメントを作って搭載してあるんだなぁ。と言うのが分かるんですね。
自社製ムーブメントの歴史
皆様がイメージされるカルティエのイメージといえば、まだまだデザインウォッチのブランドではないでしょうか?
ムーブメントはそこまで力を入れてないイメージ。
と言うのが、正直な感想ではないかと思います。
そもそもカルティは、宝飾品ブランドであり時計の中のムーブメントに関しては基本的に、社外のムーブメントを搭載していました。
その流れが変わるのが、1998年のCPCPコレクションをスタートしてからです。
当時カルティエはリシュモングループに種族していたために、そこに属していた『ジャガー・ルクルト』『ピアジェ』『ジラールペルゴ』『スヴェン・アンデルセン』エボーシュメーカーからは『フレデリック・ピゲ』など、名だたるメーカーから提供、共同開発されました。
よって、カルティエ社はこの頃に機械のパーツで動く手巻きや自動巻の基本的な技術と複雑機構である、ジャンプアワーやクロノグラフなど、様々な技術を蓄えることに成功したのです。
ただし、このCPCP時代に作られた時計は他社がカルティエのために作ったムーブメントであったために、カルティエ社が0から作ったものとは言えませんでした。
CPCPについてはこちらの動画で詳しく解説しておりますので、お時間のある際にご覧ください↓
そして、CPCPコレクションが2008年に終了し、次に誕生したのがコレクション・プリヴェになります。
こちらもCPCPと似た、特別な時計だけを作っていくやり方だったのですがCPCPと大きく違ったのが、自社製ムーブメントを搭載していたことです。
この時に展開されたモデルには、全てがカルティエで設計され製造されたものが搭載されています。
そして、プリヴェ・コレクションでも成功を手にしたカルティエ社はタンクMCとして、通常のラインにも自社製ムーブメントを搭載させたモデルを加えたのです。
搭載ムーブメントなのですが、2010年に登場したカリブル・ドゥ・カルティエと同じ自社ムーブメント 「Cal.1904-PS MC」 が搭載されています。
プリヴェ・コレクションの技術が応用されており、このムーブメントはカルティエの一般ラインを強く補強する為の重要なムーブメントになりました。
そしてこのムーブメントは、カルティエ初の量産型自動巻ムーブメントとして知られており、48時間のパワーリザーブを保有しています。
このようにカルティエ社は自社を客観的に見ても、デザインウォッチ会社と理解している為に、自社で作り出したムーブメントと言うのは、箔があり『自社でもムーブメントを作ることが出来るんですよ!』と言うのをアピールしたいんですね。
タンクMCの様々なデザインを見てみよう
タンクMCにも、様々なデザインが準備されておりスタンダードなステンレスモデルは、クラシックなシルバーダイアルにブルースチール針が組み合わされ、王道のデザインになっています。
ステンレスのケースには、黒文字盤とブルーの文字盤もありギョーシェ彫が施されていることで、より美しくその色を楽しむことができます。
ピンクゴールドのモデルは、より高級感があり黒文字盤と組み合わさることで落ち着いた大人の印象を与えてくれています。
また、裏蓋なのですがこちらはカルティエの腕時計としては、珍しく裏蓋はスケルトンがデフォルトです。
プリヴェ・コレクションなどの特別モデルではこのようなスケルトンはありましたが、一般のラインで採用されるのは非常に珍しいことです。
やはりカルティエ社としては、この自社で作り上げたムーブメントを見て欲しいと言う思いが強いのでしょう。
実際にそのムーブメントも手抜き感はなく、コートトジュネーブの装飾(縦ラインに入っている装飾)が入ってますし、これが表面から1番見えるローターの部分だけでなく、その下もその周りのブリッジにも装飾が施されていますので、非常に手間隙がかかっています。
デザインの魅力
ではタンクMCのデザインを見てみましょう。
男性専用のモデルとして作られているので、タンクでありながらもサイズはケース直径が34.3 mm縦のサイズが44.0 mmと大きく、様々な機能を搭載出来る空間があります。
ちなみに、普通カルティエはこの他にもサイズ展開を準備しているのですが、MCにはこのサイズしかありません。
まず目を引くのは、カルティエ社ではあまり採用されていないスモセコが6時位置に大きく配置されており、3時位置にはデイト表示があります。
文字盤自体のインデックスは、伝統的なローマンインデックスですがスモセコとデイトの数字はアラビア数字を使っており、伝統と現代的なスタイルの融合が感じられます。
また、時計の厚さもあることから無骨でスポーティな印象を与えてくれることも、現代的な印象を与えてくれています。
文字盤には、ギョーシェ堀が施されています。
高級モデルにしか採用されることのないギョーシェ彫なのですが、タンクMCに搭載されているムーブメントは先ほど説明した通り、カルティエ社の汎用ムーブメントに分類されるために、そこで費用を抑えギョーシェ彫の分の技術料を相殺出来ています。
これらのことから、従来の様々な「タンク」よりも手首に存在感を与えながらも、主張しすぎることはない、カルティエらしいスタイルを維持出来ています。
タンクMCのクロノグラフ
タンクMCにはクロノグラフも展開されていました。
こちらも3針モデルと同様に、様々なデザインがありますがどれもカルティエらしく、非常にかっこいいですね。
サイズは34.3 x 44.0 mmであり、これは3針タイプと同じ大きさになります。
これまでのカルティエの傾向からすれば、サントス100などを見れば分かる通り通常のモデルよりも、クロノグラフになったら大型させていましたが、タンクMCは珍しく同じサイズで展開されています。
サントス100についてはこちらの動画で解説しておりますので、気になる方はこちらの動画もご覧ください↓
おそらく、こちらもかなり手が込んで作ってあるので採算上同じケースを流用して、コストを下げるのが最善策だったからなのではないかと考えています。
搭載されいるムーブメントは「Cal.1904-CH MC」であり、もちろんこちらもカルティエ社が作ったムーブメントになります。
このムーブメントの特筆すべき点は、なんと言ってもコラムホイールが採用されているところです。
画像の赤丸の部分のパーツをコラムホイールというのですが、クロノグラフを動作せせるための需要なパーツで1970年代頃から人件費の高騰で、プレスで作ることが出来るカム式が採用されるようになっていきました。
このコラムホイールというのは、職人が手で作り上げないといけないので、手間がかかり人件費が高い現代では、積極的に採用されることはありません。
しかし、こちらのムーブメントにはコラムホイールが採用されているのを見ると、お金をかけてでも自社でコラムホイールを使ったクロノグラフムーブメントを作ることが出来ることをアピールしたかったのでしょう。
まとめ
いつ廃盤になってしまったか追うことはできなかったのですが、どうやら2019年までは公式サイトにあったみたいなので、その辺で生産終了になってしまったようです。
6年間という短命に終わってしまったモデルですが、その原因はおそらく値段に対して価値がしっかり伝わってなかったことが原因だと考えます。
説明して来た通り、カルティエ社初の素晴らしいムーブメントを搭載し、文字盤にも装飾が施されていることで値段が高額になってしまいます。
しかし、それを知ってる人は良いとして知らない人からすればカルティエが『自社製のムーブメントを載せただけの高い腕時計』と認識されてしまったのかもしれません。
カルティエには、まだまだデザイン性に優れた会社だというイメージが付き纏っています。
ですが、ここまで話して来た通り、タンクMCは素晴らしい時計であることは間違いありません。
このように自社製ムーブメントを搭載したモデルがいくつも誕生することで、今後はカルティエのイメージも真の時計会社と認知されていくと思われます。