カルティエのウォッチズアンドワンダーズ
こんにちは。ベルモントルの妹尾です。
今日はカルティエの2026年新作、Watches & Wondersの全体についてお話ししていきます。
日本のカルティエではまだ出てないみたいなのですが、海外の方は上がってたのでそちらを見ながら話をしていきますね。
今回の新作を一言でまとめると、「新しいことをやっているようで、実は“過去を使って未来を作っている”」
そんなコレクションのような感じがあります。
カルティエはよく“形の時計メーカー”と言われるんですが、今回の新作を見るとそれがかなり分かりやすく出ています。
例えば現段階で出てきているラインナップを見ていくと、
・クラッシュ
・ベニュワール
・ロードスター
・サントス
といった、いわゆる“既存モデル”ばかりなんですね。
普通に考えると、「新作なのに新しくないじゃないか」と思うかもしれません。
ただ実際は逆で、“形はそのままに、中身と意味を変えてきている”これが今回のポイントですし、これまでに何度もこのような見せ方をカルティエはやってきています。
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それでは話を進めて参ります。
ロードスター
今回のロードスターは、単なる新作というよりも、過去のモデルが現代に合わせて再設計された“復活モデル”という位置付けになります。
まず、この時計の特徴ですが、一目見て分かる通り、カルティエの中ではかなり異質な存在です。
通常カルティエといえば、タンクのような直線的で静かなデザインや、ベニュワールのような柔らかい曲線を持つドレスウォッチが主流です。
しかしロードスターは違います。
ケースは流れるようなトノー型で、ダイヤルはまるで車のスピードメーターのようなデザインになっています。
名前の「ロードスター」もその通りで、これは自動車から着想を得たモデルです。
つまりこの時計は、カルティエの中では珍しく、“動き”や“スピード”を感じさせる時計なんですね。
この個性は今回の新作でもしっかり残されています。
トノーケースや独特の文字盤、そしてリューズ周りの張り出しなど、ロードスターらしさはきちんと継承されています。
ただし、ここが重要なんですが、今回のモデルは当時のままではありません。
ケースバランスや仕上げは現代的に見直されていて、装着感や完成度は明らかに向上しています。
ブレスレットもクイックスイッチに対応し、日常での使いやすさもかなり意識されています。
つまり今回のロードスターは、
「過去のデザインをそのまま復刻した」のではなく、
「今の時代に違和感なく使えるように整えたモデル」
と言えます。
では、そもそもこのロードスターはどういう歴史を持つ時計なのか。
初代のロードスターは2001年頃に登場し、2012年に廃盤となりました。
およそ10年ほどしか生産されていない、カルティエの中では比較的短命なモデルです。
当時はやや大きめのサイズ感や、少し主張の強いデザインが、カルティエらしさと少しズレていると感じられていた部分もありました。
そのため、決して主力モデルという位置付けではなく、ややニッチな存在だったんですね。
ただ、ここが面白いところで、このロードスターは廃盤になってから評価が上がっていきます。
当時は強いと感じられていたデザインが、今見るとちょうどいい個性に見える。
サイズ感も、現代の感覚で見るとむしろ自然に感じられる。
つまり、
「当時は早すぎたデザインが、今の時代にちょうど良くなった」
ということです。
そして今回、カルティエ自身がその価値を改めて拾い上げる形で復活させたのが、この新しいロードスターです。
この流れを踏まえると、この時計は単なる復刻ではなく、
「時代に追いついたモデル」
と見ることができます。
カルティエというブランドは、基本的には“静けさ”や“上品さ”を軸にしていますが、その中でロードスターは少しだけ方向が違います。
だからこそ、好きな人には強く刺さるし、逆に刺さらない人には全く刺さらない。
そういう意味で、この時計は非常に分かりやすいモデルでもあります。
今回の新作をどう捉えるかは人それぞれですが、
少なくとも言えるのは、
「売れなかった時計が復活した」のではなく、
「評価されるタイミングが来た時計が戻ってきた」
ということです。
ロードスターは、カルティエの中でも少し異質な存在です。
ただ、その異質さこそが、今の時代には価値として見直されている。
そういう視点で見ていただくと、この時計の面白さがより伝わるのではないかと思います。
ベニュワール myst
では次にベニュワール mystですね。
名前にベニュワールが入ってるので、そのモデルの派生ラインだと思われます。
一見すると「綺麗な時計だな」という印象で終わってしまうかもしれませんが、今回のモデルはカルティエが考える“腕時計とは何か”がかなりはっきり表れている内容になっています。
そして特に大事なのが、従来のベニュワールと何が違うのかという点です。
ここを理解すると、このモデルの本質が見えてきます。
まずベニュワールという時計ですが、これはカルティエの中でも非常に象徴的なモデルのひとつです。
楕円形のケース。
細く繊細なライン。
そして主張しすぎない上品さ。
いわゆる“ドレスウォッチ”として完成された存在で、どちらかというと「時間を見るための美しい道具」という立ち位置にありました。
シンプルで、控えめで、あくまで装いの中に溶け込む。
それがこれまでのベニュワールの魅力だったと思います。
では今回の新作は何が違うのか。
結論から言うと、
「時計というより、ジュエリーに大きく振ってきた」という点です。
今回のベニュワールは、ケースやブレスレット、さらには文字盤に至るまで、同じテクスチャーが施されています。
いわゆる“クル・ド・パリ”と呼ばれる、細かいピラミッド状の装飾です。
これによって何が起きているかというと、
時計の中での役割のバランスが変わっています。
従来は「時間を読む」という機能が中心にあって、その上で美しさが乗っていた。
でも今回のモデルは違います。
まず最初に“美しさ”や“存在感”があり、その中に時間表示が含まれている、という構造になっています。
つまり、
時計が主役ではなくなっているんですね。
そしてここで重要なのが、「Myst」という言葉です。
これはおそらく“ミステリー”の意味で、カルティエが得意とする、“時間を目立たせない設計”を指しているんだと考えられます。
従来のベニュワールは、時間を美しく表示するための道具でした。
一方で今回のモデルは、美しさや装飾が主役で、時間はその一部に過ぎません。
この違いはかなり大きいです。
そしてこの変化は、今の時代の価値観ともリンクしているように感じます。
スペックや機能で選ぶのではなく、自分が納得できるかどうかで選ぶ。
人にどう見られるかではなく、自分がどう感じるか。
そういった選び方に寄ってきている中で、今回のベニュワールはかなり象徴的な存在だと思います。
正直に言うと、この時計は“便利な時計”ではありません。
でも、それでも成立する。
むしろそれが価値になる。
ここにカルティエの強さがあると思います。
腕時計というのは、単なる時間を知るための道具ではなくて、
身につける人の価値観や美意識を表すものです。
今回のベニュワールとMystは、そのことを改めて教えてくれるモデルです。
サントスデュモン
新しいサントスデュモンですが、これも非常に美しいですね。
どちらかというと、ブレスの方をメインに見せたいのかなぁ。と言う印象を受ける新作です。
サントスといえば、1904年に誕生した世界初の実用腕時計のひとつとして知られています。
飛行家アルベルト・サントス=デュモンのために作られたこの時計は、「ポケットウォッチではなく腕で時間を確認する」という、新しい価値を提示した存在でした。
つまりサントスはもともと、非常に“機能的な時計”だったわけです。
四角いケース。
ビスで固定されたベゼル。
高い視認性。
これらはすべて、実用性を前提に設計された要素です。
だからこそサントスは、長い歴史の中でも「道具としての完成度」が評価されてきたモデルでもあります。
では今回の新作はどうなのか。
結論から言うと、
このサントスは“機能の象徴”から少し離れています。
一番分かりやすい変化は、ブレスレットです。
今回採用されているのは、非常に細かいリンクで構成されたブレスレットで、その数は約394個とも言われています。
これによって、従来のサントスにはなかった“しなやかさ”が生まれています。
手首に沿うように滑らかに動き、まるでジュエリーのような着け心地です。
ここで重要なのは、
このブレスレットが単なる装飾ではないという点です。
装着感そのものが価値になっている。
つまりこれは、視覚だけでなく“触感”も含めて設計された時計です。
さらに文字盤には、黒曜石、つまりオブシディアンが使われています。
天然素材特有の奥行きや光の揺らぎがあり、ひとつとして同じ表情のものが存在しません。
これはスペックでは測れない価値です。
ここまでの要素を整理すると、今回のサントスは
「時間を正確に読むための道具」ではなく
👉 “身につけたときにどう感じるか”を重視した時計
に変わってきています。
従来のサントスは、
機能性とデザインのバランスが魅力でした。
しかし今回のモデルは、そのバランスをあえて崩しています。
機能を削ったわけではありませんが、
優先順位が変わっているんですね。
まず“触れたときの感覚”があり、
その次に“見た目の美しさ”があり、
その中に“時間表示”が含まれている。
この構造の変化はかなり大きいです。
そしてこれは、今の高級時計市場の流れとも重なっています。
スペックや性能ではなく、
どれだけ納得できるか。
どれだけ自分にとって意味があるか。
今回のサントスは、まさにその方向に振ったモデルです。
正直に言うと、この時計は従来のサントスのような“実用時計”としての分かりやすさは少し薄れています。
でもその代わりに、
“身につける体験そのもの”に価値を持たせている。
ここが今回の一番のポイントだと思います。
サントスというモデルは、もともと「腕時計という文化の始まり」を象徴する存在でした。
そして今回の新作は、そのサントスが
👉 「これからの腕時計の価値」を提示している
そんな一本に感じます。
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クラッシュ
今回の新作として登場したクラッシュは、単なる復刻やデザイン違いではなく、改めて“この時計とは何か”を問い直してくるようなモデルになっています。
まずクラッシュという時計ですが、これは1967年に誕生した非常に特殊なモデルです。
ケースの形を見ていただくと分かる通り、通常の時計とはまったく違う、歪んだようなフォルムをしています。
まるで溶けたような、崩れたような形。
この非対称のデザインこそがクラッシュの本質です。
一般的な腕時計というのは、視認性や整ったバランスを前提に設計されますが、クラッシュはその常識を完全に無視しています。
では今回の新作は何が特徴なのか。
ひとつは、スケルトン仕様です。
通常のスケルトンウォッチというのは、ムーブメントを見せることが目的ですが、今回のクラッシュは少し違います。
ムーブメント自体が、この歪んだケースに合わせて設計されているんですね。
さらに特徴的なのが、ローマ数字のインデックスがそのままブリッジとして機能している点です。
つまり、文字盤の役割と構造の役割が一体化している。
これは単なる装飾ではなく、かなり高度な設計思想です。
ここで重要なのは、この時計が“見せるための機械”ではないということです。
むしろ、機械を使って“形を成立させている”という考え方に近いです。
そしてクラッシュというモデル自体、もともと生産数が非常に少なく、長年にわたって供給が限定されてきました。
その結果、コレクター市場では極めて高い人気を持つ存在になっています。
実際にオークションでは非常に高額で取引されることもあり、需要に対して供給が追いつかない状態が続いています。
ではなぜ、ここまで評価されるのか。
理由はシンプルで、他に代わりが存在しないからです。
クラッシュは、スペックでも精度でもなく、“形そのもの”に価値がある時計です。
ここで少し視点を変えて考えてみると、
通常の時計は「時間を正確に読むための道具」です。
でもクラッシュは違います。
時間は読めるけれど、それが目的ではない。
むしろこの時計は、
「どんな美意識を持っているか」を表現するためのものです。
今回の新作を見て感じるのは、カルティエが改めて
“時計は機能ではなく、文化である”
ということを強く打ち出している点です。
歪んだケース。
非対称なバランス。
そしてそれを成立させるための専用ムーブメント。
これらすべてが、合理性とは逆の方向にあります。
でも、それでも成立する。
むしろそれが価値になる。
ここにクラッシュの本質があります。
腕時計というのは、時間を見るためだけのものではなく、
その人の価値観や審美眼を映すものです。
クラッシュは、その中でも特に極端な存在です。
だからこそ、合う人には強く刺さるし、
合わない人にはまったく理解されない。
今回の新作は、そのクラッシュという存在を、
さらに現代的な技術で再解釈した一本です。
単なる復刻ではなく、“なぜこの形なのか”を改めて提示している。