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記事: セリタ(Sellita)のムーブメントってETAとは何が違うの?

セリタ(Sellita)のムーブメントってETAとは何が違うの?

動画でセリタのムーブメントってETAとは何が違うの?をご覧になる方はこちらから↓

 

 

セリタのムーブメントを採用している腕時計

セリタ社のムーブメントを採用しているジン(SINN)の腕時計

ここに出ている3つの時計は全てドイツブランドのSINNなのですが、3つのモデルともにセリタのムーブメントを採用しています。

セリタを採用しているブランドの一例ですが、他にもチューダー、ボームメルシエ、ホイヤー、ベルロス、モンブランなどはまぁまぁ知られてるブランドではないでしょうか。

 

では話を戻しまして、左から

ジン U1 搭載ムーブはセリタのSW200-1これは(ETAの2824-2)ですね。

このETAのムーブの話は後から出てくるので、そこで答え合わせをしていきましょう。

次がジン U-50 セリタのSW300-1これはETAの(ETAの2892-A2)ですね。

最後がジン 356フリーガークロノグラフ セリタのSW500これはETAの(ETAの7750)ですね。

 

このようにSINNを始め様々なブランドが、セリタのムーブメントを採用しているのですが、 それはセリタのムーブメントの品質が高いことを証明しているんですね。

まぁ元々はETAの組み立てを行っていましたから、当たり前と言えばそうなのですが。

そんな感じで、ちらほらETAとの関係性が見えて来たところで、ここからはセリタとETAの関係の歴史を紐解いていきましょう。

 

セリタ (Sellita)の歴史と役割

セリタ(Sellita)って会社は、ムーブメントを専属で作る会社なのですが、創業は1950年にスイスのラ・ショー=ド=フォンで設立されました。

こんな感じで、時計業界から見ればそこまで歴史は深くはありません。

 

セリタは1950年当初はETAと同様に、ムーブメント製造を専門とする企業であり、様々な時計メーカーに対してムーブメントの供給を行っていました。

じゃあETAとは何が違うのか?って話なのですがセリタは、ETAのような大規模なムーブメントメーカーとは異なり、当初はETAのムーブメントの組み立てやOEMとしての事業がメインでした。

ETAから提供された部品を使用して、ETAムーブメントのライセンス製造を行っていたため、その事業はETAに大きく依存していたのです。

この状況は、1980年代から1990年代にかけてスイス時計業界全体で広く見られた現象であり、セリタはETAのサプライチェーンの重要な一部として機能していました。

一旦ここまでですね、昔のセリタはETAの下請けとか子会社みたいなポジションだったんだなぁ。

ってことでまとめておいてください。

  

ではここからは、簡単にETAについて解説します。

 

ETAの歴史と起源

このようにセリタの話をするときには、ETAが結構深く関わってきますので、セリタの動画ですがETAについても簡単に解説します。

ETA(エタ)は現在はスウォッチグループの一部であり、時計業界におけるムーブメント製造の巨人です。

ETAの歴史は1793年にまでさかのぼり、時計のムーブメント製造において長い歴史を持っています。

特に、ETAは汎用ムーブメントの開発と供給で非常に有名で、これにより多くの時計ブランドが自社ムーブメントを開発せずに、ETAのムーブメントを利用して自社ブランドの時計を製造できるようになりました。

よってETAのムーブメントは、高品質かつ信頼性が高いため、世界中の多くの時計メーカーがETAムーブメントを採用していたんですね。

 

ETAはスウォッチグループ全体のムーブメントを支える会社ですが、グループ以外にもムーブメントを供給していたために1990年代にはスイスの腕時計の90%はETA社製が搭載してあるんですね。

当時クオーツショックが起きて、製造コストが安い機械式を作れるのがこの会社しかなかったのが理由なのですが、ここはもう端折ります。

といった感じで、かなりいい感じでスイスのムーブメントの土台的な役割を果たしてきたETA社なのですが、2010年ムーブメント供給停止宣言をします。

 

ではここからは、そんなETAの2010年問題を一緒に見ていきましょう。

 

2010年 ETAムーブメント供給停止宣言

その内容はETAがムーブメントの供給を、段階的に縮小するというものでした。

この決定は2002年にスウォッチグループのCEOであるニコラス・ハイエック氏が表明したもので、2010年を目処にETAがムーブメントの外部供給を徐々に減らしていくという方針を打ち出したのです。

この決定の背景には、スウォッチグループの自社ブランド(オメガやロンジン、IWC、など)を強化し、外部の競合ブランドにムーブメントを供給することを減らす、という戦略的意図がありました。

あと、ETAのムーブメントを載せてるくせにそのことを公表せず、自社製を載せている!とか謳ってる別グループの時計会社が気に食わなかったのも理由です。

当たり前ですがこの発表は、時計業界全体に大きな波紋を呼びました。

というのも、ETAムーブメントに依存していた多くの独立系ブランドは、自社でムーブメントを開発するリソースや技術を持っておらず、ETAの供給が減少することで深刻な影響を受けることが予想されたからです。

分かりやすくいうと、GoogleがOSを提供するの辞めるから、あとは中国のポンコツOSとか載せといて。

って言ってるようなもんですよね。

話を戻しまして、そんな感じで、2010年には供給辞めますから!

って宣言したものの、スイス競争委員会っていうお偉いさんから、イヤイヤそんな意地悪したら、スイスの国力が落ちるでしょ。

とりあえず、もうちょい長く供給してさぁ、その期間に別の方法考えればいいんじゃない?

って怒られて、ETA社も

『分かりましたよ。じゃあ2020年には絶対に供給ストップするから、それまでに時計ブランド各社は自分たちでムーブメントどうにかしてくださいね。』

ってことで、2020年に実際にスウォッチグループ以外へのムーブメントの供給がストップするのでした。

この問題に関しては、こちらの動画で詳しく解説しておりますので気になる方はご覧ください↓

ではここからは、再度セリタに話を戻してセリタの役割を見ていきましょう。

 

 

セリタの役割と独立したムーブメントメーカーへの転換

ETAがムーブメントの外部供給を縮小するという決定を下したことにより、セリタのようなムーブメントメーカーには大きなチャンスが訪れました。

セリタは元々ETAムーブメントのライセンス生産をしていたため、ETAが供給を縮小するという決定はセリタにとっても転機となります。

要するに、セリタはETAのムーブメントを作って来てたので、1からそれを再現することが出来るわけですよ。

このようにして、セリタはETAの代替品となるムーブメントを自社開発し、時計メーカーに提供することを決意します。

その結果、セリタは独自のムーブメントの設計・製造を開始し、特にETAの代表的なムーブメントである「ETA 2824-2」を基にした「Sellita SW200」などを開発しました。

「ETA 2824-2」と「Sellita SW200」

ここで重要なことを解説します。

そもそもETAが供給停止するって言い出して、自社でもそれが作る技術があるからってマルパクリして良いのか問題です。

中国であれば、そんな倫理観は0なので良いのでしょうが、スイスはそういったところはしっかりしてるので、日本と同様そんな特許の丸パクリは認められません。

ではなんでそれが実現できたのか?って話ですが、多くのETA社製のムーブメントの特許は、ETA社が供給停止を宣言した時点で期限切れとなっていたのです。

要するに、ETA側はセリタが同じようなムーブを出してくるのではないか?

という考えがあって、今後も自分のところで作ったムーブが、別のとこにパクられるなら、もうグループ内だけで囲むスタイルにして、他社には使わせないようにしよう!と思ったのではないかと考えています。

 

では2社のムーブメントの話に戻しまして、以下はほぼ同じムーブメントの代表です。

ETAとセリタのムーブメント比較

 

表の見方ですが、左側がETAのキャリバーナンバーで右側がセリタのキャリバーナンバーで、一番右がそれぞれのムーブメントの違いを説明しています。

まぁ、このように書いてますがほとんど中身は同じです。

これらのムーブメントが誕生したことで、ETAムーブメントとほぼ同じ設計を持ち、時計メーカーがETAから、セリタに切り替えることが容易になったのです。

これにより、セリタはETAの供給縮小に直面した時計メーカーにとって、重要な代替供給元となったのです。

これがセリタがETAのジェネリックと言われている所以なんですね。

そしてセリタも、独立系ブランド業界を救った救世主と言えるのです。

ではここからは、そんなジェネリックセリタとETAのムーブメントに違いがあるのかを見ていきましょう。

 セリタが開発したムーブメントは、ETAのムーブメントとほぼ一緒と考えて頂いて問題ありません。

ですが、セリタ側の罪悪感からなのか、中国みたいな丸パクリに引け目を感じてなのか分かりませんが、めっちゃ微妙な違いがあります。

 

例えば、SW200はETA 2824-2と互換性があるものの、SW200は軸受が1つ多い26個搭載してあり、完全なるコピーではありません。

1つパーツが多いことが必ずしも正解とは言えませんが、軸受が1つ追加されているのにETAよりも安いというのは、良い方に解釈して良いですよね。

また、セリタはETAと同様に柔軟な供給体制を持っています。

ではそのグレードを見てみましょう。

これはETAも同じようなものだと考えてください。 

 

セリタのムーブメントのグレード

このグレードの詳細を解説したら、もうめっちゃつまらない動画になってしまうので、興味がある方だけ動画を止めてご覧ください。

要約すると4段階のグレードがあって、下はスタンダードで一番良いのになるとクロノメーターを取得して、装飾ゴリゴリムーブメントに進化させることが出来るってことですね。

このように、ETAと同様、セリタのムーブメントは、グレード分けがされており、時計ブランドはこれらのグレードから選択して、自社の時計に適したムーブメントを採用できます。

ちなみに、このように4段階のグレードからベースムーブメントを選ぶことが出来ますが、時計会社はここからさらに調整とか装飾を加えて時計に搭載させます。

もちろん、ハイエンドモデルなんですけどね。

よって、最初の段階でグレードがあるし、そこからさらに時計ブランド各社が調整を加えて時計が完成しているので、腕時計というのはいろんな工程を経て完成しているのが分かりますよね。 

 

 

8. 現在のセリタの地位

現在、セリタはETAに次ぐスイスの主要なムーブメントメーカーとしての地位を確立しています。

ETAの供給縮小以降、セリタは急速に成長し、多くの独立系ブランドや新興ブランドがセリタのムーブメントを採用するようになりました。

セリタのムーブメントは、高品質かつ安定した性能を提供し、時計メーカーにとって信頼できる選択肢となっています。

また、セリタは独自の技術開発にも力を入れており、ETAとは異なる新しいムーブメントを開発することで、市場での競争力をさらに高めています。

セリタは、ETAの影響力が依然として大きい中でも、スイスのムーブメント製造業界における重要なプレイヤーとして存在感を示し続けています。

 

と言った感じで、セリタのムーブメントの歴史を簡単に解説しましたが、 このようなムーブメントの競争の激化は、結果的にスイス時計業界全体にとってプラスに働いたとも言えます。

ムーブメント供給の多様化が進み、時計メーカーは多様な選択肢を持つことができるようになりました。

また、ムーブメントメーカー同士の競争が激化することで、ムーブメントの品質や技術の向上も進むことになりましたからね。

現在では、ETAに次ぐスイスの主要なムーブメントメーカーとして、多くの時計ブランドにムーブメントを供給しています。

セリタは、一昔前のETAのような役割を果たしていますし、スイスの時計業界からは外すことは出来ません。

よって今後も時計業界の重要なプレイヤーとして成長していくことでしょう。

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