「中古【ヴィンテージウォッチ】の腕時計って怖くないですか?」という疑問にプロが答えます
こんにちは。ベルモントルの妹尾です。
今回は、時計初心者の方からよくいただくご質問に、本音でお答えしていきます。
それがタイトルにもある「中古【ヴィンテージウォッチ】の腕時計って、なんか怖くないですか?」というものです。
とても率直で、でも多くの方が口に出しづらい疑問ですよね。
というわけで、本日はそのことについてお話をして参ります。
ベルモントルは基本的には予約制でご対応させて頂いておりますが、金曜日と日曜日だけはフリーでオープンしておりますので、ちょっと気になる時計があるんだよねぇ・・・って方がいらっしゃいましたら、お気軽にお越しくださいませ😊
「中古【ヴィンテージウォッチ】=不安」という気持ち、当然です
まず結論から言うと、「中古【ヴィンテージウォッチ】に不安を感じる」というのはまったく自然な感覚です。
高いお金を出して買うものなのに、
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本当に本物なのか?
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壊れていないか?
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どんな人が使っていたのか?
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すぐ壊れたりしないか?
そう思うのは当然です。
時計に限らず、中古車でもヴィンテージのバッグでも、最初は「失敗したらどうしよう」という気持ちはつきまといます。
だからこそ、今日はその「不安」の中身を一つひとつ分解して、どうすれば安心して中古時計を楽しめるかをお話しします。
それでは、それぞれを順番に解説して参ります。
不安①:本物なのか分からない
これは一番多い不安です。
時計の世界は奥が深く、素人では見分けがつかない…そう思っている方も多いでしょう。
確かに、昔よりも精巧なフェイクが増えていて、オークションサイトやフリマでは、プロでも迷うような個体が出回っているのも事実です。
だからこそ、私たち販売店の仕事は「本物を見極めるプロセスをきちんと経て、それをお客様に証明する」ことなんですね。
当店では仕入れの段階で、外装・文字盤・ムーブメント・ケース刻印など、あらゆる点を検証し、不自然な点がないか何重にもチェックしています。
あとは結構、重要視してるのが、アーカイブですね。
これまで見たことがないものが絶対に偽物だという訳ではないのが、ヴィンテージウォッチの面白いところです。
しかし、それまでに見たことがないものを判断するためには、それを判断するための材料が必要になります。
その解像度をより鮮明にするのが、マスターピースコレクションなどを掲載している図鑑であり、そう言ったのがあることによってより精度高く真贋を見極めることが出来ます。
さらに、疑わしい個体はそもそも仕入れませんね。
例えばですが、前回はタンクフランセーズのリダンの文字盤についての動画を出したのですが、カルティエにはその文字盤の特徴があります。
マストタンクであれば、実はインデックスが盛り上がっていて立体的になっています。
その他にも、ロゴのフォント、ケースや文字盤の全体像を見た時の整合性が取れてるかなどなど、幾つものチェックをしてお店に出すようにしております。
では次の不安ですね。
不安②:すぐ壊れるんじゃないか?
これもよく聞かれることですが、中古の時計は「ちゃんと整備されていれば」全然安定して動いてくれます。
私も最初から時計を扱ってきた訳ではないので、最初の頃って10年前の時計がちゃんと動く訳ないでしょ!?
って思ってたんですが、勉強していくとムーブメントの作られ方とかしっかりしているので、『一生物の腕時計』って言葉が存在するのも別に嘘ではないと考えています。
私の感覚では、もう70年代に入った時点でムーブメントは90%の完成度まで来ているので、その年代以降の時計であれば、自分が使用する分にはちゃんと定期的にオーバーホールをやっていれば一生使えるはずですね。
新品は確かに全パーツが新しいですが、それゆえに初期不良が出るリスクもゼロではありません。
ほとんどの高級時計ブランド(ロレックス、オメガ、パテック、カルティエなど)が2〜5年の保証をつけているのはなぜか?
それは高級時計を購入したのに、不具合が出たとしても修理して貰えるという安心感というのが前提ですが、その裏には「製造段階での不具合が完全には避けられない」ことを想定しているからです。
万が一、歩度不良・針ずれ・カレンダー不動などのトラブルがあった場合でも、無償で調整・修理できる体制が前提になっています。
この表現は、中古を肯定するための誇張ではなく、機械式時計という精密工芸品に対する現実的な理解ですよね。
一方で、中古時計は「すでに実用に耐えうる個体であることが証明されている」という面もあります。
もちろん、長年使われていた分だけパーツの劣化はありますが、そこは当店のようなショップでオーバーホールや部品交換をしてから販売することで解消できます。
当店では整備済みの個体に保証をつけてお渡ししています。
元々仕入れの段階で直近でオーバーホールされているものは、重ねる必要がないので機械点検だけで済ませますが、どちらにしても1年の保証期間を付属しています。
ヴィンテージウォッチを購入する時の大事なポイントってのは、「壊れないか?」ではなく、「壊れても対応してくれるか?」が、本当の安心ポイントなんですよね。
不安③:誰が使っていたか分からない
この感覚、実は多くの方が持っています。
よって私は新品しか購入しない!って方も視聴者さんの中には一定数いらっしゃると思います。
特に身に着けるものだからこそ、「どんな人が使っていたか分からないものを着けるのはちょっと…」という感覚は、ごく自然です。
多くの人が言語化しにくいこの不安は、突き詰めると次のような感情です。
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「その人がどんな使い方をしていたか分からない」
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「雑に扱われていたら嫌だ」
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「何か悪い運気を引き継いでしまうかも」
3番目とかは、よく野球選手の口から出てくることがありますよね。
車を買い換えたら、成績が落ちたからまた買い替えるとかですね。
こうした感情は、理屈よりも感覚の世界です。
だからこそ、中古時計を扱う立場として、こういった感情に真摯に向き合う必要があります。
もう少し深ぼって考えてみましょう。
「人が使ってきた歴史があるからこそ、そこに物語がある」とも言えるのではないでしょうか。
たとえば、1970年代に製造された時計が今も動いているとしたら、それは誰かが大切に使い、誰かが引き継いできた証です。
それって、新品にはない“時間の深み”なんです。
「誰が使っていたか分からない」という不安の正体は、「不透明さ」や「コントロールできない過去」への抵抗です。
でも、中古時計とは「誰かの時間を受け継いで、自分の時間へとつなげていくもの」だと考えると、見え方が変わります。
要するに、今持ってるこの時計は後世に受け継がせるために、一時的に自分が保有しているだけ・・・という考え方ですね。
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傷は思い出の証
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エイジングやかれ感は時間の証明
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“前の誰か”の人生が、あなたの手元でまた時を刻み始める
それって、ノスタルジックじゃないですか?若い方に向けては『エモい』ですよね。
ここまでの話というのは、結構感情論に寄せて話して来ているので、そう簡単には心は切り替えられない部分だと思います。
こう言ったアンティークとかヴィンテージって工芸品とか美術に対するある程度の知識とか理解とかがないと、なかなかキッカケが生まれないはずなんですよね。
1本の動画を見ただけで理解が進むとは思っていませんので、私のチャンネルではいろんな角度からヴィンテージウォッチの魅力などを解説してます。
せっかくですね、この動画を開いて頂いて、ここまで動画をご覧下さってる訳ですから、是非ともですね他の動画もご覧くださいませ。
「人の使ったものが気になる」という方の解決策としては、新品同様のコンディションの個体を選ぶという選択肢もあります。
いきなりヴィンテージはねぇ・・・って方であっても、コンディションの良いヴィンテージウォッチなら、結構ハードルが下がると思いますよ。
私のところで言えば、ヴァシュロンコンスタンタンのリールとかIWCのインヂュニアとかは1990年代のモデルなので、ヴィンテージなのですがそれでも時計の外観はとても綺麗なので、ヴィンテージって言われても多分違和感はないはずですね。
新品じゃなければならない!
そう思ってた方も、意外に結構ヴィンテージウォッチも良いじゃん・・・って感じて頂ける自信はありますね。
では次にこのような中古やヴィンテージウォッチを選ぶメリットをお話ししますね。
中古【ヴィンテージウォッチ】時計の“いいところ”とは?
ここまで「怖い」と思われがちな中古時計の不安についてお話ししましたが、逆に中古時計には新品にはない魅力がありますので2つご紹介しますね。
1. すでに製造されていない“名作”が手に入る
ロレックスの旧型エクスプローラー、カルティエの手巻きマストタンク、オメガのヴィンテージスピードマスターなど、今では作られていない名作に出会えるのが中古市場です。
前回の動画で話しましたが、ヴィンテージウォッチって名作は価格がどんどん上がっていくんですよね。
昔の価格を知っていれば、損した気分になる・・・というような話をしたんですが、でも全部の時計が名作になれる訳じゃないんですよ。
だから、価格の上がってる時計ってのは誰もが名作だと認めるための安心料としましょう。
という話をしたんですが、最初から名作と分かっているものを購入すれば、まず間違いは発生しませんよね。
今の新品腕時計には何千本というモデルが存在ます。
30年後にこの中から名作が残ってるはずなのですが、それはその時にならないと分かりません。
もちろん、腕時計の購入は自分が良いと思ったものを購入するのが一番なので、名作を選ばないといけないという考えはありませんが、新品の腕時計にはこだわりはなくて、腕時計の歴史において名作と言われている腕時計を購入したい!と考える方にはこれはかなり分かりやすい判断基準になりますよね。
では2つ目ですね。
2. コストパフォーマンスに優れている
「コスパがいい」と聞くと、多くの人は「安くて性能がいい」と考えますよね。
ですが、腕時計の世界におけるコストパフォーマンスは、単なる「価格」や「性能」ではなく、その時計がもたらす満足度や価値体験に対して、いくら払ったかという観点で判断されるべきです。
また、同じ価格帯であっても、新品より一段階上のクオリティの時計が買えることもあります。
例えば視聴者様が新品で50万円の予算を持っていたとします。
新品だと、ミドルクラスの現行モデルが対象になりますが、中古ならブランドを選ばないのであれば18Kモデルの個体も手にすることが出来ます。
つまり、同じ予算でも中古なら「ワンランク上の時計」に手が届くというわけです。

例えば、こちらは弊社で扱っているジャガールクルトの18Kイエローゴールド、レクタンギュラー型の腕時計ですが、これで48万5000円ですので現行の新品を購入するのと同じくらいの価格で、高級素材で作られたモデルを手にすることが出来るんですよね。
その他にも、名作ムーブメントを“実用価格”で楽しめるという利点もあります。
今回のジャガールクルトでいえば、この会社は世界3大時計ブランドにも、カルティエにもIWCにもムーブメントを納品していた歴史があります。
これは、無敵のマニュファクチュールの名機ムーブメントというのを理解しておかないと、辿り着けない部分ではありますが、こうしたモデルは、ムーブメントの質や構造にこだわりたい人にとって、「価格以上の満足感」を得られる選択肢になります。
ジャガールクルトのムーブメントがいかに素晴らしいものなのか?
というのをしっかり理解したい方は、メンバーシップ限定ですがこちらの動画で解説しておりますので、気になる方はこちらの動画もご覧ください⬇️
話を戻しまして、中古時計の中には、ケースサイズ・デザイン・仕上げが高級モデルとほぼ同じでありながら、価格が大きく抑えられているものもたくさんあります。
特にヴィンテージ系のモデルは、
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手巻きの薄型ムーブメント
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堅牢性のある高品質汎用ムーブメント
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ギョーシェ彫りの文字盤
など、手間のかかった造形や仕上げが味わえるのに、価格は数十万円から・・・というものも多く、非常に「コスパが良い」のです。
では最後に、「中古の時計って怖い」と思っている方が、安心して選ぶためのポイントを3つお伝えします。
✅ 1つ目は信頼できるショップから買う
→ 専門知識があり、保証や整備履歴を提示してくれるショップがベストですよね。
もちろん弊社でも、整備履歴をお問い合わせ頂ければそれは公開します。
✅ 2つ目は整備済みかオーバーホールの有無を確認する
→ 価格が安くても、整備されていない個体は後で修理費がかさむ可能性があります。最悪の場合は修理が出来ない可能性があることも理解しておかないといけません。
✅ 3つ目はわからないことはどんどん質問する
→ 良いお店は、「これはどうですか?」という質問に対して丁寧に説明してくれます。
購入者様の疑問に答えて、寄り添い、理解を深めることが、信頼のおける時計屋さんの条件です。
「中古の時計って怖い」という感覚の根っこには、**“知らないからこその不安”**があります。
でも、今回お話ししたように、きちんと整備されていて、信頼できるショップで購入すれば、むしろ一生モノになりうる選択肢なんです。
ぜひ、あなた様だけの物語を持った1本に出会ってください。
それではまた次回の動画でお会いしましょう。