記事: 【歴代最高傑作】サントスカレの選び方。Ref.2960と2961、そして希少個体まで全4本を見比べ
【歴代最高傑作】サントスカレの選び方。Ref.2960と2961、そして希少個体まで全4本を見比べ
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現行のサントスも良いけど、私には大きい気がするんですよねぇ・・・・
という悩みを持ったお客様に良くお越し頂きます。
これはその人の考え方なので、正解はない部分ではあるのですが、少なからずこの動画を見てる人は小さいサントスに興味を持ってる方が多いと思いますので、その魅力をしっかりと解説して参ります。
角型時計の金字塔。現行モデルにはない「サントスカレ」独自の魅力を4本で解説

サントスは今も現行モデルとしてラインナップされていますが、ヴィンテージのサントスカレには、現行には存在しない“質感の差”がはっきりとあります。
今回の4本を並べると、その違いは単なる古さや懐かしさではなく、「作られ方そのものの違い」だということがよく分かります。
まず最も大きな違いはケースの輪郭です。
現行のサントスは、滑らかさと装着感を重視した曲線主体のデザインになっています。
一方でカレは、あくまで直線と面で構成された角型の美しさを最後まで貫いています。
装着感よりも、モデル名にある『カレ/carre』カレはフランス語で『四角い』という意味ですね。
こちらを優先させている印象です。
悪く言えば、荒削りな部分が目立つ、良く言えばステンレスの素材が持つ魅力を最大限に発揮している工業的なデザインと表現できます。
角は立ち、面はフラットでどの角度から見ても四角です。
この“構造”は、現行モデルでは意図的にやわらげられている部分です。
次に質感です。
さらに、現行モデルにはない“個体差”の豊かさもサントスカレの魅力です。
文字盤の色、インデックスの有無、ブレスの種類、素材の違い。
同じサントスカレでも、4本すべてがまったく違う表情を持っています。
現行の均一な完成度とは対照的に、ヴィンテージならではの「揺らぎ」や「不均一さ」が、逆に個性として成立しています。
サントスカレは、単に古いサントスではありません。
角型時計としての造形を、もっともストイックに突き詰めた時代の答えです。
4本を通して見えてくるのは、流行や機能性ではなく、「形そのもの」が持つ強さだと感じます。
ここからは、これらサントスのもっとディープな世界を見ていきましょう。
80年代カルティエの傑作。サントスカレが持つ「3つの文字盤パターン」

サントスカレの魅力は、ケースデザインやブレスレット構造だけでは語りきれません。
実は本質は文字盤にあります。
今回比較する4本には、大きく分けて3つの文字盤パターンが存在します。
白文字盤に黒ローマンの王道仕様、バーガンディ文字盤でインデックスを排したモデル、同様にインデックスを廃したグレーのゴースト文字盤です。
この3つは、見た目以上に「性格」がまったく異なります。
まず白文字盤に黒ローマンインデックスの組み合わせは、カルティエというブランドのアイコンそのものです。
視認性が高く、腕に乗せていれば「カルティエだ」と誰が見ても分かる安心感があります。
フォーマルにもカジュアルにも振れる万能型で、サントスカレの基準点とも言える存在です。
完成度が高すぎて、逆に個性を強く主張しないというのが、この文字盤の美点でもあり、性格でもあります。
一方、バーガンディ文字盤は真逆の存在です。
インデックスが存在せず、色とケースフォルムだけで成立しています。
光の当たり方によって赤にも茶にも見えるこの色味は、80年代特有のエレガンスと色気を強く感じさせます。
ローマンがないことで、時間を読むという機能すらも少し曖昧になる。
その曖昧さこそが、実用品ではなく「装飾品」としての腕時計の価値を強く意識させます。
そしてグレーのゴースト文字盤です。
この文字盤を語るうえで最も重要なのは、色味そのものよりも圧倒的に流通数が少ないという事実です。
白文字盤が1番多く、その次がバーガンディであり、これらと比べても市場に出てくる本数が明らかに少なく、意識して探しても簡単には出会えません。
文字盤だけで言えば、白文字盤が10だとすれば、バーガンディが3、グレーが1くらいの感覚ですね。
見るべきポイントは、統一感です。
シルバーのブレスから、ケースに繋がり、とこからグレーの文字盤に入っていくのですが、この同系色でまとめ上げられた繋がりの中に、サントスの造形が組み込まれるので、強烈なかっこよさが生まれます。
量が少ないからこそ価値が生まれ、分かる人だけが反応する。
このグレーゴーストは、サントスカレの中でも最も“選ばれる側の時計”だと感じます。
では次に、素材を見ていきましょう。
ステンレスか、コンビか。サントスカレを購入する前に見るべき「素材」と「印象」の違い

サントスカレを選ぶとき、多くの方が最初に迷うのが「ステンレスか、コンビか」という素材の違いです。
ここでリファレンスが出てくるのですが、オールステンの場合はRef.2960で、コンビの場合が2961に分類されています。
話を戻しまして、見た目の印象はもちろんですが、この選択はそのまま時計との付き合い方や、使うシーンの幅に直結します。
単なる好みではなく、性格やライフスタイルまで映し出す重要な分岐点だと感じます。
まずオールステンレスモデルです。
最大の特徴は、色味が抑えられているぶん、時計そのものの造形がダイレクトに伝わる点です。
ビス留めのベゼル、角の立ったケースライン、ブレスレットのサテンの筋目!
サントスカレというデザインの骨格が最も分かりやすく表れるのが、このステンレス仕様です。
服装を選ばず、仕事でも私生活でも自然に馴染みやすい。
だからこそ、毎日使う「道具としての時計」としての完成度が最も高い素材だと言えます。
一方でコンビモデルは、ステンレスにイエローゴールドが加わることで、時計の印象が少し華やかな印象に変わります。
ベゼルやブレスにあるビスのゴールドが、視線を自然と集めるため、腕元の存在感は明らかに強くなります。
80年代らしい華やかさと、カルティエらしい色気が同時に立ち上がるのが、このコンビの魅力です。
ただし主張があるかというとそうではありません。
たくさんのお客様とお話しして、ほとんどの方がもたれる印象は、そこまでイエローゴールドの印象は強くないですね。ってことです。
このモデルを全体を通して見たときに、ステンの割合は6.5に対してイエローゴールドの比率は3.5程度です。
このようにイエローゴールドは入っているものの、割合は少ないですし、そもそもがケース径29mmの時計なので、主張が激しくありません。
絶妙にちょうどいい、爽やかな印象を与える金の使い方がカルティエらしさをより引き立ててくれています。
どちらが良い、という話ではありません。
ステンレスは「造形美」であり、コンビは「華やかさ」だと感じます。
同じ形、同じサイズでも、素材が変わるだけで印象は驚くほど変わります。
購入前にこの違いを理解しているかどうかで、満足度は大きく変わります。
では次に、ブレスについて見ていきましょう。
ビス装飾のブレス vs ゴドロンブレス。どっちがいい?

サントスカレの印象を大きく左右する要素のひとつが、ブレスレットの仕様です。
王道のビス装飾のブレスと、希少なゴドロンブレスの2パターンが存在します。
この2つは、見た目だけでなく、素材同様に、時計が持つスタイルそのものを変えてしまうほどの違いがあります。
まずビス装飾のブレスです。
サントスの象徴とも言えるビスが、ブレス表面に規則正しく並び、ケースからそのまま続く一体感を生み出します。
この仕様は、工業デザインとしてのサントスの魅力を最も強く感じられる構成です。
直線と面で構成されたケース形状と完全に連動し、腕に乗せた時の“構造物を着けている感覚”がはっきりと伝わります。
視覚的な存在感が強く、服装がシンプルでも自然と主役になるのが、このビスブレスの特徴です。
一方でゴドロンブレスは、印象がまったく異なります。
細かな段差を連ねたような立体的な造形は、ビスブレスに比べて圧倒的に装飾性が高く、ジュエリーに近い表情を持っています。
光が当たったときの陰影の出方も柔らかく、腕元に静かな華やかさを加えてくれます。
サントスカレの持つ「硬質なデザイン」を、あえてエレガントな方向へ引き寄せているのが、このゴドロンブレスだと感じます。
装着感にも違いがあります。
ビスブレスは一体感とサントスとしての安定感が強く、時計が腕にぴたりと固定される感覚です。
それに対して、ゴドロンブレスは光がしなやかに動き、アクセサリーのように腕に沿ってアクセントを与えてくれます。
どちらが優れている、という優劣の話ではありません。
実際に現物を見てみて、自分の腕に乗せた時のインスピレーションを感じて頂きたいですね。
画像や映像ではビスが良いって思ってたけど、実際に腕に乗せてみたらゴドロンが良い!ってのは良く良くある反応ですからね。
では次になぜ、「カレ」は口頭し続けるのか?ということについて解説します。
なぜ「カレ」は高騰し続けるのか?Ref.2960/2961の人気を支える3つの理由

サントスカレの中でも、特にRef.2960と2961は、ここ数年で明確に相場が切り上がり続けています。
単なるヴィンテージブームでは説明がつかないこの上昇には、はっきりとした理由が存在します。
ひとつ目の理由は、デザインの完成度です。
カレは、サントスの歴史の中でも「最後の直線的サントス」と言える存在です。
ガルベ以降の丸みを帯びたラインとは異なり、直線と平面を強調した構成は、男性の本能的な部分に備わっている、メカニックな趣味嗜好に刺さりやすいです。
その反面、80年代のデザインでありながら、現代の価値観で見ても古さを感じさせず、“ラグスポ時代に生み出されたデザイン”が、カレ最大の武器です。
ふたつ目は、個体数そのものの少なさです。
コンビモデルの白文字盤のカレはサントスの中でも1番多く製造されています。
ですが、すでに40年近くの時間が経過しているために、市場に出てくる母数が減っています。
市場には出てくるものの、それ以上の需要があることで相場が上がって行ってる!
というのが現状でしょう。
だからこそ、出てきた瞬間に購入され、価格が落ちにくい構造になっています。
そして三つ目が、国境を越えて評価されている点です。
以前は日本国内での再評価が中心でしたが、現在は海外市場、特にアジア圏や欧米のファッション層にも確実に浸透しています。
Ref.2960と2961が強いのは、スペックやブランド力だけが理由ではありません。
造形、希少性、国際的評価。
この三つが同時に成立しているからこそ、サントスカレは“理由のある高騰”を続けているのだと感じます。
10年後も後悔しない時計選び。小型のサントスは何が良い?

時計選びでよく聞く言葉に「一生モノ」という表現がありますが、現実には10年使い続けられるかどうかが、ひとつの現実的な基準だと感じます。
その視点で見たとき、小型のサントスカレは非常に“後悔しにくい時計”の条件を満たしています。
流行に左右されにくく、年齢を重ねても無理が出ず、腕元の主張も過剰にならない。
このバランス感覚こそが、小型サントス最大の価値です。
まずサイズ感です。
小型サイズは、手首の太さに関係なく自然に収まります。
大きすぎる時計は、その瞬間は満足感があっても、10年後にファッションや価値観が変わったとき、突然「違和感」に変わることがあります。
補足説明ですが、大きい時計には大きい時計にしか出せない魅力がありますので、私は大きい時計も好きです。
今回は、長期的目線での話で。ということでご理解ください。
小型のサントスは、派手さで印象を作る時計ではなく、輪郭と比率で美しさを作る時計です。
だからこそ、年齢や服装が変わっても“外れない”という強さがあります。
よって、たくさんのサントスをお渡ししてきましたが、年代に偏りはありません。
20代の方から70代の方にまで、お渡ししてきましたし、小さいし軽いのでほとんどの方は満足されます。
次に、使い続けるための現実性です。
小型のサントスは、重量が軽いために、長時間着けても疲れにくいです。
これは10年単位で考えると、非常に大きな差になります。
飾るための時計ではなく、自然と「着け続けてしまう時計」になりやすいと言えるでしょう。
この無意識の着用頻度の高さこそが、後悔しない理由のひとつです。
さらに、小型サントスは“主張しなさ”が最大の個性でもあります。
時計が語りすぎない分、持ち主の服装、所作、年齢がきれいに前に出てきます。
分かりやすく説明すると、あなたを引き立てるための1つのアイテムということですね。
時計が主役ではないということですよ。
若いときは軽やかに、年齢を重ねれば自然と落ち着いた印象に変わっていく。
その変化を邪魔せず、むしろ受け止めてくれるのが、小型サントスの強さです。
10年後に後悔する時計には共通点があります。
それは「ブームに乗って選んだ時計」です。
腕時計の好みは、歳を取れば変わっていくものなので、その時にその時計を欲しいと思ったのであれば、それは間違いではなく正解です。
ですので、矛盾してるように聞こえますが、ブームに乗って購入したとしてもそれは正解なのです。
ただし、10年後にもそれをホールド出来てるかどうか。って視点で考えれば、サントスカレのような時計の方が強いというのは、なんとなく分かって頂けるのではないでしょうか。
では最後に歴史を買うという意味について解説します。
ただの時計じゃない、歴史を買うという意味
ヴィンテージのサントスカレを手に取ったとき、多くの人が感じるのは「古い時計」という印象よりも、「時間が積み重なった物質」に触れている感覚です。
新品の時計は、今この瞬間から物語が始まります。
しかしヴィンテージは違います。
すでに何十年もの時間を生き抜いてきた上で、今、自分の手元にやってくる。
その事実そのものが、すでに価値になっています。
「美術品」とか「工芸品」なんかもアンティークが好まれるのですが、その色褪せることのない美しさが評価されているんですよね。
80年代に生まれたサントスカレは、その当時の価値観、技術、デザイン思想をすべて内包した存在です。
現行モデルが合理性や安全性、最新の技術を売りにしているのに対し、サントスカレには、前述した通りまだ“作り手の思想の角”がそのまま残っています。
歴史を買うというのは、今私が話しているこの動画のように無料の消費材の情報を眺めることではありません。
年代や型番、相場を知ることは入口にすぎず、本質は「その時計が通過してきた時間を受け取る」という行為なのです。
同じモデルでも傷の入り方も、文字盤の表情も、ブレスの馴染み方もすべて違います。
それは劣化ではなく、確実に積み重なってきた時間の痕跡です。
新品の時計は、買った瞬間がもっとも美しく、そこから先は使用によって変わっていきます。
ヴィンテージは逆です。
過去の時間をすでに背負った状態で手元に来て、そこから先は、いまの自分の時間が静かに重なっていきます。
この「過去と現在が一本の時計の上で繋がっていく感覚」そして、今は自分がこの時計を所有し、いずれはまた誰かの手に渡る。
この普遍的な年月の経過の中に、自分が保有する期間がある。
これこそが、歴史を買うという行為の核心だと考えています。
今回見てきたように、サントスカレは文字盤、素材、ブレス、サイズ、そのすべての選択が時計の性格を決定づけますし、所有者の印象を大きく左右します。
どれが正解という話ではなく、どれが自分の時間と合うかが最も大切な基準になります。
そしてヴィンテージである以上、そこにはすでに積み重なった時間があります。
その上に、これからの自分の10年を重ねていく。
その感覚こそが、サントスカレ、もちろん他のヴィンテージウォッチもそうですが、それらを選ぶ一番の価値だと感じます。
今回紹介したサントスカレは全て概要欄を開いて頂ければ出てくるようにしています。
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