Royal Popが欲しい人とヴィンテージAPが欲しい人は、たぶん別の層の人です
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日の動画では、「Royal Popが欲しい人とヴィンテージAPが欲しい人は、たぶん別の層の人です」という内容で解説して参ります。
昨日、時計好きの間でかなり大きなニュースが出ましたよね。
SwatchとAudemars Piguetのコラボ、「Royal Pop」。
5月16日に発売なんですけど、もう発表された瞬間からSNSがかなりざわついてますよね。
まぁ、あのMoon Swatchのときを思い出しますよね。
Swatch店舗に行列ができて、転売が横行して、時計好きじゃない人たちまで巻き込んでいったあの熱狂が、今回もそれに近いことが起きるんじゃないかって、注目しております。
ただ、私がこのニュースを見て最初に思ったのは、ちょっと違うことだったんですよね。
「これ、欲しい人たちって誰なんだろう」って。
そしてもう一個、「ヴィンテージのAP Royal Oakが欲しい人と、この人たちは、たぶん別の層の人間だよな」って。
今日はそっちの話をしたいと思います。
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それでは話を進めて参ります。
Royal Oakとは何者か?
まず、Royal Popを語る前に、Royal Oakというモデルのことを少し話させてください。
知ってる方には「そんなこと知ってるよ」ってなるかもしれないんですけど、これを知ってるかどうかで今日の話の深さが全然変わってくるので、少しだけお付き合いください。
Royal Oakが誕生したのは1972年です。
デザインしたのはジェラルド・ジェンタというスイス人デザイナーで、この人はパテックのノーチラスも、IWCのインヂュニアも手がけている、20世紀を代表する時計デザイナーですね。
で、このRoyal Oakが登場したときに何が異端だったかというと、ステンレススチールのスポーツウォッチに、当時の高級時計と同等の値段をつけた、ということなんですよ。
当時の時計業界って、「高級時計といえばゴールドケース、ドレスウォッチ」っていう価値観が支配的だったんです。
ステンレスは素材として格下で、安いモデルに使うもの。
それが常識でした。
そこにジェンタは「いや、ステンレスでも美しいデザインと精密な仕上げがあれば高くていい」って言ったわけです。
APの当時のCEOが「これを作ろう」と決断したとき、業界の人間はほぼ全員が「失敗する」と思っていたそうです。
実際に、初年度はほとんど売れなかったとも言われていますし。
これは初代が巨大だったことと、世間にステンレスでこの値段!?っていう予定通りのイメージがあったから、当たり前と言えば当たり前でしょう。
それがだんだんと世間に受け入れられるようになってくることで、今のオーデマピゲ=ロイヤルオークみたいな感じになったんですね。
そして今、ヴィンテージの初代Royal Oakは圧倒的高額です。
ロイヤルオーク誕生を振り返れば、あの八角形のベゼル、ケースからブレスレットへの一体感、細かく仕上げられた面と面の対比。
これを見ると、「当時の人間がどれだけ勇気のある判断をしたか」っていうのを感じるんですよねぇ。
だから僕がRoyal Oakを手に取るとき、このモデルに対してすごく敬意を感じるんですよね。
単に「人気ブランドの人気モデル」として見るんじゃなくて、「一つの賭けが成功した結果として今ここにある!」という物語を帯びている時計として見ると、同じ一本でも全然違って見えてくるんですよ。
ではここから本題のロイヤルポップについての私の感想を話します。
Royal Popという製品の正直な評価
そのRoyal Oakの名前を掲げたコラボが今回のRoyal Popなわけですけど、製品として正直にレビューして参ります。
詳細なスペックなどは、実際に公式を見て頂ければ分かるので、私から詳細を解説することは割愛しますね。
まず、ポケットウォッチだった、というのは私も少し意外でしたね。
というか、みんなてっきり腕時計が出ると思っていたと思うんですよ。
Moon Swatchのスタイルで、Royal Oakのケースシルエットをバイオセラミックで作ってっていう想像をしていた人が多かったと思うんですけど、実際に出てきたのはランヤード「ストラップ/紐」で携帯するポケットウォッチでしたね。
ポケットウォッチじゃないことは意外でしたが、少し考えるとこれはこれで筋が通っているといった印象なんですよ。
Swatchには「POP」というラインが1986年からあって、ケースヘッドをパチンと外せるモジュール設計が特徴だったんですよ。
ベルトを変えたり、ケースを付け替えたりして自分好みにカスタマイズできる、というコンセプトでですね。
その「POP」の遊び心と、Royal Oakの「Royal(王室)」を掛け合わせて「Royal Pop」になってるんでしょうが、この名前には、ちゃんと両者の歴史が入っているんですよね。
単なるネーミングじゃなくて、プロダクトのコンセプトとして成立しているわけです。
今回のRoyal Popはストラップの長さが3種類あって、首から提げるタイプ、バッグにクリップするタイプ、ポケットに入れるタイプ、と着け方を変えられるようになっています。
ポケットウォッチという形態ながら「腕以外のどこに時計を置くか」という選択として、現代的なライフスタイルとの接点を作ろうとしているのが見えますよね。
ケースの形式も2種類に分かれていて、リューズが12時位置の「Lépine(レピーヌ)」と、クラウンが3時でスモールセコンド付きの「Savonnette(サボネット)」があります。
レピーヌが2針で正面から見た時に、正方向に作られているモデルで価格は57200円。
後1個のサボネットが2種類あって、61600円。
こちらはスモセコの秒針がついてて、正面から見たら文字盤が横になるように設計されています。
前述した通り、ポップシリーズは縁の取り外しができますので、おそらくこのサボネットは後から取り替え用のストラップが出て、ポケットウォッチスタイルでも腕時計スタイルでもどっちでもいけますよ!ってなると考えております。
そしてムーブメントですね。
正直ここが一番驚いたんですけど、SISTEM51の新しい手巻きバージョンを今回のためにゼロから新開発しているんですよ。
SISTEM51というのはSwatchが2013年に発表した自動巻きムーブメントで、51個の部品で構成されていることからこの名前がついています。
いつもの、機械がムーブメントを全部作ってくれるやつですね。
しかしここで気になるのが、2013年なら最新じゃなくない?
って思った方もいらっしゃると思いますが、最新です。
2013年のは自動巻きバージョンで、今回のが手巻き板です。
よって、このロイヤルポップのために手巻き版を新しく作ったということですね。
手巻き化するにあたって15の新たな特許を取得していて、パワーリザーブは90時間以上。
アンチマグネティックのNivachron/ニバクロン合金を使ったヒゲゼンマイも採用されています。
ポップなデザインの裏側に、これだけの技術開発が入っているというのは、率直に言って、誠実だと思うんですよね。
本来であればこういったモデルって、ムーブメントの部分をもっと安く作って売値は安いけど、製造でもっと安く作るって感じが多いイメージですが、意外にちゃんと作られてる印象です。
では次に、文字盤を見て欲しいんですがこの作り込みも素晴らしいですよね。
文字盤しか見えてない画像だけ、swatchのロゴが無かったら腕時計版のロイヤルオークと間違えてしまうくらいの繊細なタペストリーが刻まれていますからね。
質感とかがまだ分かりませんが、これで6万円前後であれば、凄くコスパ良くオーデマピゲを楽しめると思いましたね。
「名前だけ借りたコラボ商品」ではなくて、ちゃんとプロダクトとして本気で作ってあるわけで、この点はSwatchもAPも、素直に評価して良いと感じます。
では次にカラー展開を見てみましょう。
全部で8色
ホワイト、ピンク、グリーン、オレンジ、イエロー、レッド、ライトブルー、ネイビー。
ポップアートの文脈で言うと、アンディ・ウォーホル的な原色の反復と大量複製の美学みたいなものを感じさせる色使いになっていて、コレクターアイテムとしての「欲しいと思わせる力」は相当あると思います。
全色揃えたくなる設計、というのはよく分かりますね。
蓋を開けてみないことには、何も分かりませんがおそらく白黒が1番売れて他がまぁまぁ売れる。
OTG ROZのピンクが1番売れないで、30年後にはこれはプレミアになってる。みたいな感じかなぁと想像しています。
ただ、一点だけ言うと、Royal Oakが持っている「あの魅力」、つまりラグジュアリースポーツウォッチとしての佇まい、腕に巻いたときのあのフィット感と存在感、それは見れば分かりますが、Royal Popにはないんですよ。
当たり前なんですけど、ポケットウォッチですから。
八角形のベゼルを腕の上で感じるとか、ブレスレットの一体感とか、そういう体験はここには入っていないです。
これは否定じゃないんです。
製品として、そもそも別のカテゴリーにいる、ということを確認しておきたいだけですね。
ではそのまま次のパートに行きましょうかね。
ここが私の思う核心「別の層の人」論
では4年前の2022年のことを思い出してほしいんですけど、Moon Swatchが出たときに何が起きたかって話ですが、Swatch × OmegaのMoon Swatchは大ヒットしました。
店舗に行列ができて、すぐ売り切れて、転売価格は定価の何倍にもなって。
時計好きじゃない人たちも巻き込んで、社会現象みたいになりましたよね。
でも、MoonSwatchを買った人たちが、その後にヴィンテージのSpeedmasterを買ったかというと、ほぼ買っていないんですよ。
これ、統計とかじゃないですよ。
でも肌感として、そうなんですよね。
Moon Swatchから本物のOmegaに入門した人はいても、Moon Swatchから「やっぱり1960年代のヴィンテージSpeed masterが欲しい」という流れになった人は、ほとんどいなかった。
なぜかというと、欲求の種類が違うんですよ。
Moon Swatchが刺さる欲求というのは、「これを持っていることを友達と共有できる」「ポップカルチャーの一部になれる」「手が届く価格でちょっと特別なものを手に入れる」という欲求です。
これはこれで本物の欲求で、否定するものではありません。
ヴィンテージウォッチが刺さる欲求は、そこと全然違うところにあるんですよね。
「この一本だけが持っている固有の歴史と物語」「誰かの人生に寄り添ってきた時間の蓄積」「同じように見えて実際には異なる固有性」そういうものに惹かれる欲求です。
この2つは、交わらないとは言いませんけど、基本的に別のところから来ているんですよ。
今回のRoyal Popでも、たぶん同じことが起きると思っています。
Royal Popが欲しい人と、ヴィンテージのオーデマピゲやRoyal Oakが欲しい人は、たぶん別の層の人なんですよ。
ここで一つ、皆さんに伺いたいんですが視聴者様が今、このRoyal Popの話を聞いて何かを感じているとしたら、それはどっちの欲求ですか?
「面白そう、ちょっと欲しいな」という感覚ですか。
それとも
「Royal Oakというモデルの本質って何なんだろう」という引っ張られ方ですか。
どちらが正解ということはないんですけど、この問いに答えてみることが、自分がどういう時計との付き合い方をしたいのかを知るヒントになると思うんですよねぇ。
一つ補足しておくと、APは今回のコラボで得た収益を、全額「次世代の時計師育成と技術の保存」に充てると発表しています。
これ、表向きは業界貢献メッセージなんですけど、私の読みとしては、APはこのコラボを「次世代の顧客への入口」として戦略的に使っているんだと思うんですよね。
要するに、今Royal Popを買った20代が、10年後20年後にRoyal Oakを探し始めますよね。
このような若い層が今の段階で、ロイヤルオークのスタイルに触れておくことで、その先にある超高額なロイヤルオークへの憧れは生まれるはずです。
その導線を、APは意識して作っているはずです。
だから、導入として作られているから、この値段で作られています。
すごく長期的な視点だなと思って、その点は素直に感心しましたね。
では次に、ヴィンテージのRoyal Oakを探すとき何を見るか?ということについて解説して参ります。
ヴィンテージのRoyal Oakを探すとき何を見るか?
ここまで見てる方はほとんどいないと思いますので、ヴィンテージのオーデマピゲが好き!って方だけそのままご覧ください。
じゃあ、後者の方ですね、「本物のヴィンテージのAPに興味がある」という方に向けて、実際に私がヴィンテージのAPを見るときに何を確認しているかを少し話しますね。
まず一番最初に見るのは、ケースのシャープさですね。
APってロイヤルオークだけが注目されがちですが、ロイヤルオーク誕生前夜のAPの作品って1個1個丁寧に作られているので、ロイヤルオークみたいに主張はないんですが、静かな高級感があります。
それで実はケースもオーデマピゲが作ってたわけじゃなくて、ケースを専門に製作してくれる工房に依頼して作ってもらってたんですよね。
だから、ケースの作りとかもとても美しくて手作り感があって、うっとりする仕上げになっているものがほとんどです。
これは現代のモデルでは見られない、あの頃の人件費だったからできる職人技な訳ですよ。
だから、ヴィンテージ全般に言えることですが、ケースもムーブメントもブレスも、メーカー以外が作ってて、餅は餅屋の側面が強かったんですよ。
要するに今の垂直統合型ではなく、プロフェッショナルたちの総合演出って感じで作られてるから良いんですよ。
このケースについては、こちらのパテックフィリップとオーデマピゲの腕時計が似過ぎだがケースは同じなの!?の中で詳細に解説しておりますので、気になる方はご覧下さい⬇️
話を戻しまして、次に見るのがダイヤルとケースの整合性です。
ヴィンテージの世界では、ダイヤルだけ後から交換されているケースが時々あるんですよ。
見た目がきれいなダイヤルに替えてある場合、「コンディションがいい」と誤解されやすいんですけど、ケースの年代とダイヤルの年代がちぐはぐになっていることがたまにあります。
これはヴィンテージとしての価値を大きく下げる要因になるんですよね。
具体的には、インデックスの経年変化の仕方、文字色のフェードの具合、、こういうものがケースの時代感と合っているかどうかってのは、数字や知識だけじゃなくて、目で積み重ねた経験が問われる部分ですよね。
当たり前ですが、Royal Popとは、根本的に違う見方ですよね。
Royal Popは8色あってどれも同じスペックです。
ヴィンテージのAPは、同じリファレンスでもシリアル一本一本が別の物語を持っています。
この違いを理解した上で、どちらに惹かれるかというのが、さっきの「別の層の人」という話に戻ってくるわけですね。
今回はSwatch × APのRoyal Popを題材に、ちょっと違う角度の話をしました。
Royal Popが欲しいと思った方は、それはそれで正直な欲求だと思います。
ポップアートとしてのデザインの完成度は高いですし、手巻きSISTEM51という誠実なムーブメントが入っていますし、AP公認のコレクターアイテムとして意味がある一本だと思います。
ただ、今日の話を聞いて「本物のヴィンテージのRoyal Oakが気になってきた」という方、もしくは「自分はどっちの人間なんだろう」とちょっと考えてしまった方は、はぜひ一度、弊社のショップをご覧頂けると嬉しいです。
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