トノー
動画のカルティエのトノーの魅力と歴史を知りたい方はこちらから↓
この記事では、『トノー/Tonneau』について解説をして参ります。
現行のラインでは展開されてないので、カルティエが大好きな方しか分からないモデルだと思いますが、やっぱり他社が真似できないデザインを生み出してくれているのが、カルティエが宝飾品ブランドである所以だと思うんですよね。
今日の記事をご覧頂くことで、『トノー』の歴史から魅力、どんなサイズがあってどんな素材があって、現在ではどこのポジションに置かれているのか?
というのが分かると思いますので、是非とも最後までお付き合いください。
カルティエ腕時計『トノー』の歴史
トノーの最初の原型は1906年と、初期の頃にデザインされています。
カルティエ初であり、腕時計初と言われている「カルティエ サントス」なのですがこちらが1904年に誕生したものであり、トノーは実は2番に古いモデルなんですね。
このトノーというモデルの語源を見ていきましょう。
トノーとは、フランス語で『樽』を意味しそのネーミング通り、中央部に膨らみがありつつ、ベルト部分はしまっている形になっています。
ケースを見てみると、滑らかに湾曲しておりすんなり腕に馴染むようにデザインされ、貴族が好む上品さを備えたモデルと言えるでしょう。
また、誕生した時から男性用モデルとして位置付けられており、その後80~90年代にかけてレディースモデルにも派生していくことになります。
そんなトノーなのですが、これまでの歴史の中で何度か販売されてきましたが、決められた期間だけ販売され、それが正式なラインナップとして登場することはありませんでした。
このようにどちらかというと、トノーは愛好家のためのモデルでありそれがあまりトノーが知られていない理由と言えるでしょう。
こちらの時計なのですが、初代のトノーではないのですが比較的初期に作られたトノーになります。
文字盤中央には、薔薇模様から放射されているギョーシェ彫りの装飾が施され、文字盤はネジで止めてあります。
一般的な時計であれば、6時位置の下にSWISSやカルティエであればPARISの文字が入ってくるのですが、初期作品なだけあってまだその部分に印字はありません。
また、ラグの部分に注目して頂きたいのですが、こちらはネジでベルトを固定するタイプになっています。
本来のラグの役割というのは、ベルトと時計ケースを接続することにあるのですが、カルティエはこのラグの部分までをも宝飾の一部として取り入れています。
要するに、ラグの部分までをも含めたデザインということですね。
ちなみに、このラグまで含めたデザインというのは後に誕生する『ディアボロ』にも受け継がれています。
この頃の時計というのは、かなり力を入れて富裕層に向けて作られていたので、やはり時計というよりは宝飾品に近いものを感じますね。
1900年代前半の時計とは思えないくらい、美しい時計です。
トノーの歴代コレクションをチェックしよう
そんなトノーなのですが、次に市場に出てくるのが80年代とかなり時間を置いてからでした。
この時にも、一時的に生産される高級モデルとしてのポジションで販売され、18kイエローゴールド、プラチナの素材でレディースモデルにはダイヤモンドがあしらってあるモデルなどが展開されました。
しかし、ここでは男性からはあまり受け入れられずどちらかというと、レディースモデルとして認識される時代でした。
と言いますのも、この頃の世界的な時計の流行というのは、だんだんと大きいサイズの時計が求められている時代の先駆けであり、トノーのラグが絞られたデザインとそこから伸びる細いベルトというのが男性からすると、エレガントすぎて女性寄りに感じてしまうという問題が起きたのでした。
そういった背景から、80〜90年代に作られたトノーの生産数は多くなく、この時代に復刻されたというのもあまり知られていません。
CPCPの中で『トノー』を復活
そして、次に日の目を浴びるのが2006年になってからになります。
1906年に誕生したトノーですのが、誕生100周年を記念して2006年に復刻版が誕生します。
2000年代に入ると、さらに巨大な時計がブームになっていました。
この頃になると、パネライのルミノールやラジオミールが大人気になったことをきっかけに、オーデマピゲのロイヤルオーク、パテックフィリップのノーチラスなど大きな時計が市場では求められるようになりました。
よってカルティエ社も、前回の苦い経験から時計のサイズを大きくして、この時にXLサイズのトノーを市場に送り込んだのでした。
サイズは前回の39mmから、かなり大型化され43.4 mm(ラグまで含めると52mm) x 29.4 mmとなり細いラグと、細いベルトの問題も解決されました。
CPCPを簡単に説明すると、『Collection Privee Cartier Paris』の略であり、プリヴェは英語で『プライベート』の意味を持ち、カルティエの最も歴史的なモデルを復活させたコレクションのことを指します。
トノーだけでなく、他のモデルも復刻されそれらの時計は職人が1つ1つ丁寧に製作し個数が決められた、限定生産されているのが特徴です。
CPCPについては、こちらの動画で詳しく解説しておりますので気になる方はご覧ください↓
コレクションはプラチナ、18ホワイトゴールド、イエローゴールド、ピンクゴールドの素材が採用され、時刻表示の通常モデルだけでなく新たなデザインのデュアルタイムゾーンモデルも展開されました。
シルバーのギョーシェ彫りが施された薔薇模様の文字盤に「Paris」の文字が刻まれ、初代トノーを限りなく再現しており最新のコレクションでありながらも、手が込んだヴィンテージ感も感じられるのです。
針にもこだわりが見られソード針と最近ではなかなか見かけることのなくなった、ブレゲ針の2つのパターンがあります。
また、特筆すべき点は、当時ムーブメントにおいてはそこまで技術力がなかったカルティエ社のムーブメントを同じリシュモングループである、ジャガールクルトやピアジェが設計や製造を担当しカルティエ社に提供しているという点です。
ちなみにこの他にも、フレデリックピゲ社やジラール・ペルゴ、スヴェン・アンデルセンなどとも共同で開発を行なっています。
今回のトノーのムーブメントは、ジャガールクルト社の手巻きムーブメントをベースにしたCal.9790 MCが搭載されています。
リューズが2つありますが、これらは独立したムーブメントを搭載しておりそれぞれのタイムゾーンは、独立して動作するようになっています。
2018年 コレクション・プリヴェで再度トノーの復活
CPCPコレクションから12年後の2018年に、トノーはSIHH(Salon International Haute Horlogerie)で再び復活し多くの人々を賑わせました。
このコレクションは「プリヴェ トノー」として発表され、歴史にインスパイアされたデザインの始まりを告げました。
先ほど載せていたCPCPの動画で解説をしてるのですが、CPCPとプリヴェ・コレクションは別でCPCPは2008年に終わり、2009年以降はカルティエの自社製造ムーブメントを搭載した「オートオルロジェリー」のコレクションが展開されていくこととなり、それと同時にプリヴェ・コレクションに移行していったのです。
要するに、プリヴェ・コレクションというのはCPCP時代に実現出来なかった自社製ムーブメントを搭載させたコレクションのこというんですね。
新しいコレクションは、前回同様に通常モデルとデュアルタイプモデルが準備され、18Kローズゴールドとプラチナの素材で作られました。
新しいモデルは、オリジナルのトノーが持っていた曲線美はそのままに、プロポーションとデザインを現代の基準に合うようにアップデートされています。
ケースサイズは、時刻表示のみのモデルが46 x 23mm、デュアルタイムモデルが43.4 mm(ラグまで含めると52mm) x 29mmでこちらも大型のサイズでデザインされました。
このモデルからトノーは大きくデザインを変更させていますので、それぞれのデザインを見ていきましょう。
文字盤は、旧モデルに見られたシルバーの放射状文字盤から、新しいスタイルではグレーまたはシャンパンカラーのサンバーストスタイルの文字盤が採用されています。
装飾に凹凸がなく、サテン仕上げされた繊細な極細ラインが放射状に広がっています。
ムーブメントには、自社製Cal.1917 MCが搭載され、手巻きでパワーリザーブは38時間が実現されています。
プラチナ製(ref.WGTN0005)の100本限定モデルは一般的な他のモデルとは違い、リューズにルビーが取り付けられているのが特徴です。
では次に、スケルトン・ディアルタイムモデルを見てみましょう。
搭載されているムーブメントは自社製Cal.9919MCはシングル・ムーブメントであり1つの香箱、輪列、レギュレーターで、独立した2つの時刻表示を備えています。
パワーリザーブは60時間が実現されています。
そしてこのムーブメントの凄いところが、このムーブメントは湾曲しており、香箱のラチェットと歯車輪列がわずかな角度で噛み合って動作しているということなんですね。
2時位置のリューズは巻き上げと時刻合わせ用で、4時位置のリューズは下側の文字盤の第2時間帯を1時間単位で進めるプッシャーになります。
カルティエ社といえば、やはり外装が美しいブランドというイメージがありますが、このようにムーブメントも他社に引けを取らないくらいの実力を持っているんですね。
まとめ
最後にまとめなのですが、トノーというモデルはこれまで説明して来た通り、カルティエの中でも特別なモデルに分類されます。
快適でありながらエレガント、曲線と直線のコンビネーションが見事なトノーは、カルティエを代表するモデルと言っても良いでしょう。
値段は全然安くはなく、物凄い高額になってしまいますがこの記事をご覧になられたことで、その値段に納得出来ると思います。
この時代に職人が丁寧に手がけた素晴らしい時計を身につける事ができるというのは、なかなか体験できるものではありませんし、それにどれくらいの価値があるのか?というのが分かっておかないとその魅力も分かりません。
トノーってかっこいいなぁ、そう思われていた方こそこの機会に手にされるのが1番良いタイミングなのではないでしょうか。