CPCP&コレクション・プリヴェ
動画でプリヴェ・コレクションをご覧になる方はこちらから↓
この記事では、カルティエの最高傑作に分類される『プリヴェ・コレクション』について解説して参ります。
名前は聞いたことはあるけれど、それが何を指しているのか?どういった概要のものなのかが分からないという方は多いのではないでしょうか。
先に言ってしまうと、プリヴェとは『生産数が限定されているマスターピース』と表現するのが、一番しっくりくるでしょう。
私たちは、職人が作った手の込んだ作品に惹かれるものです。
そんなカルティエの最高傑作について、これから詳細に解説して参ります。
『プリヴェ・コレクション』の誕生の秘話
1970〜90年代前半までは、世界的に機械式時計の需要は大きく低迷しておりそれは日本のSEIKOが起こした、クオーツショックによるものでした。
しかし、1990年代後半になってくるとその流れ変わり再度、機械式時計に関心が寄せられていくようになりました。
よってスイスの時計ブランドは、再度息を吹き替えしオーデマ・ピゲやヴァシュロン・コンスタンタンのような老舗マニュファクチュールも、複雑機構に着目した個性的で珍しいモデルを発表しました。
そんな中、カルティエは「コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ / Collection Privée Cartier Paris」略してCPCPを発表し、真の時計ブランドとしての信頼性を新たに確立しようとしました。
『プリヴェ』は英語でプライベートを意味し、「カルティエ・パリのプライベートコレクション」と訳すことができます。
その頃のカルティエ社は、まだ自社でムーブメントを作ることが出来ず、本当の時計ブランドとして認知されるには厳しい状態にあったのです。
要するに、世間的に機械式時計に注目が再度集まってきたタイミングで、カルティエも本気を出せば凄い機械式時計を作れるんですよ!
というのをアピールして、宝飾品のサブジャンルの時計会社ではなく、宝飾もいけるけど時計もマジで凄いよ。というイメージを作りたかったんですね。
そして、1998年に各社が複雑機械式時計を発表している最中(さなか)に、メンズ向けの最高級ラインである『コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ』が登場したのです。
これは1998年から2008年の10年間にかけて行われ、カルティエは歴代の保管されてきた記録を再度見直し、サントレやタンク シノワなど、長年眠っていた歴史的なデザインを復活させていきました。
1998年に一部モデルが発表されたのですが、この年のは“プリヴェ”の名は無く、翌年の1999年からコレクションとして誕生することとなります。
『カルティエ・プリヴェ・コレクション・パリ』とは?
では、「コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ」は何を意味するのでしょうか。
その目的は、カルティエの豊かなアーカイブを掘り起こし、数十年間放置されていたカルティエの代表的な作品を再現するという意味になります。
タンクやサントスといったクラシックなデザインから、1935年に初めて製造されたタンク モノプソワール クロノグラフのような無名のものまで、さまざまな作品が新しく生まれました。
しかし、それらのデザインは当時の完全に復活させるわけではなく、古くからあったそれらの多くのデザインを微妙に現代的にアレンジして、時にはサイズアップさせて、モダンなタッチで復活させています。
10年間の間に23のモデルが誕生し、それぞれ異なった独自の個性を持っていました。
初期のカルティエの工房は様々なモデルを作っていたので、実際に少量だけ作られた時計も含めるとコレクションのベースとなるものはたくさんありました。
何種類のモデルが作られたのか正確な数字はありませんが、少なくとも4種類のタンクの形、8種類のトーチュの形が存在し、いかに様々なケースが想像されていたかが分かります。
ちなみに、現在もプリヴェ・コレクションが毎年発表されていますが、2008年に一度終了し2010年に再度復活しています。
2009年に終了したのには、理由がありこの10年間の間に蓄えてきたムーブメントの技術を自社で独自開発ができるようになりました。
その結果、2009年以降はカルティエの自社製造ムーブメントを搭載した「オートオルロジェリー」のコレクションが展開されていくこととなり、それと同時にプリヴェ・コレクションに移行していったのです。
CPCPとほとんど差はないと考えて問題ありませんが、CPCP時代に作られた作品よりも、より現代的なアレンジが加わってデザインされています。
そして、最も大きな違いは『PARIS』の文字が入らないことです。
CPCP時代に作られたものは、PARISと記載が入るモデルがほとんど(全てではありません)でしたが、2010年以降のプリヴェ・コレクションにはそれがありません。
詳細については、後述します。
ムーブメントも徹底的にこだわり再現
それまでのカルティエ社は、外部調達のムーブメントに頼っていたために、高品質のムーブメントを作るノウハウや設備がありませんでした。
そのため、カルティエは様々な専門メーカーに依頼し、それらの技術を同じリシュモングループである『ジャガー・ルクルト』『ピアジェ』『ジラールペルゴ』『スヴェン・アンデルセン』エボーシュメーカーからは『フレデリック・ピゲ』など、名だたるメーカーから提供、共同開発されました。
よって、カルティエ社はこの頃に複雑機構である、ジャンプアワーやクロノグラフなど、様々な技術を蓄えることに成功したのです。
近年、自社製ムーブメントが良いという考え方がありますし、ほとんどのブランドはそれを実現できていますが、昔は高品質なムーブメントを求めるのであれば、外部のエボーシュメーカー(ムーブメントを作る会社)を利用するのが一般的でした。
例えば、パテックフィリップやヴァシュロン・コンスタンタンでさえも、歴史を振り返ればレマニアや、ジャガールクルトが生産したムーブメントを乗せて時計を販売していましたし、ロレックスのデイトナの初期のクロノグラフは、バルジューのムーブメントが搭載されています。
一方、より高度な複雑機構は、当時オーデマ・ピゲの傘下にあったルノー・エ・パピさんと、フランソワ・ポール・ジュルヌさんとパスカル・クルトーさんが共同で設立した、テクニクス・ホロジェール・アップリケ社がカルティエ向けに特別開発しました。
1988年、設立したばかりの会社の作業台にて、ドミニク・ルノーとジュリオ・パピ(提供:ドミニク・ルノー)。
簡単にこの3人とその会社について解説すると、『オーデマピゲで修行を積んだ複雑機構に精通した時計職人たち』とその会社ということになります。
これらのムーブメントはカルティエの社外から生まれたものですが、すべてカルティエの工房で装飾が施されています。
例えばこちらは、ピアジェのムーブメントをベースにしたキャリバー437MCを搭載した「タンク・ア・ヴィス・デュアルタイム」の装飾です。
その特徴は、面取りやペルラージュといった伝統的な技法に加え、ブランドの特徴である「ダブルC」装飾がコレクション全体に施されています。
また、これらのコレクションはプラチナモデルを除き、CPCPのほぼすべてのモデルにその装飾の美しさが見えるように、サファイアのケースバックが装備されています。
こだわって作られた文字盤とケース
これらの時計に関わる職人技は、当時カルティエが行っていた他のどの時計よりもはるかに高いものでした。
文字盤を見てみるとほぼすべてのモデルで、針のすぐ下の中央に花のモチーフがあり、それが放射状に広がり、古典的なギョーシェ模様になっています。
もうひとつの特徴は、ブランド名に "Paris "を冠したことです。
これは、「サントレ」を除くコレクションのすべてのモデルに見られます。
2002年のカタログによると、これはルイ・カルティエがコレクション・プリヴェの基礎となるモデルの大半をデザインした場所がパリであり、そのパリへの敬意を込めて『PARIS』と入れているそうです。
では次にケースを見てみましょう。
ケースは全てイエロー、ピンク、ホワイト、どれかの18金で作られており、それ以外ではプラチナ製も作られました。
当時はスチールや金メッキの作品が多かったのですが、新しく作られたプリヴェの作品は品質を重視したため、すべて貴金属製で作られました。
また、これらのケースには特別な時計であることを証明するために、裏蓋には色々なメッセージが含まれています。
例えば、裏蓋のエングレービングには、より伝統的なスタイルが採用され、スクリプトのような書体や手彫りのエングレービングが使用されています。
限定モデルはすべて、そのシリーズごとに個別の番号が振られ、その他のモデルには単に昇順のケース番号が振られました。
特別な付属品たち
また、時計本体だけでなく、付属の箱や書類にも細心の注意が払われました。
当時カルティエが使用していた箱よりも少し大きめの箱に入れられ、高級な革製で「Collection Privée Cartier Paris」とサインされていました。
こちらの写真は、CCPモデルが納品された大きめの赤いレザーボックスです。
この箱の大きさは、これらの作品の重要性を強調するためであり、また時計に付属する証明書を収納するためのスペースでもありました。
そこには証明書やコレクション・プリヴェ専用のマニュアルも収められていました。
コレクション・プリヴェの限定品に付属するペーパーワークです。
このような箱、説明書、証明書が揃っているかどうかを確認することは、購入する前にの重要なチェックポイントになります。
18Kゴールドの文字盤や精巧に仕上げられた手巻きムーブメントなど、これらの作品の特徴を紹介するカルティエのカタログです。
先に述べたように、これらの時計はかなり限られた数しか生産されませんでした。
そのうちのいくつかは、50本、100本、150本のシリーズで生産され、個別の番号が付けられた限定版でした。
その他の時計については、どのモデルであっても200から500本程度が作られたと推定されています。
世界300カ所で販売されたことを考えると、その数はそれほど多くはなかったといえるでしょうし、日本に振り分けられた数もかなり少ないこともご理解して頂けると思います。
主要モデルについて
コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリの10年間には、様々な作品が生み出されました。
その数は数え切れないほどありますが、その中でも特に注目すべきものがいくつかあるので、ここからはそれらをご紹介して参ります。
この時期のカルティエのデザインは、近年再び注目を集めており、その中でも特にコレクターに注目されているものがあるようです。
その希少性、独特の美しさ、歴史的なモデルの継承など、どれをとっても、それぞれの魅力があります。
タンク・サントレ
100年前の1921年に発表された「タンク」の兄弟モデル「サントレ」ですが、この時計が登場したとき、腕時計は腕にはめるだけの機能的なものではない、という新しい考え方が生まれました。
そのデザインは、腕に馴染むようにケースは弧を描いており、それを実現させるためにタンクを引き伸ばした形状に作られたのです。
要するに、機能性に美を追加した世界で初めての時計でした。
カルティエはその長い歴史の中で、サントレを極めて限定的にしか製造せず、他のモデルのような商業化から守ってきた歴史があります。
そのため、少量でしか生産しないことが前提である、コレクション・プリヴェに採用されるのは自然な流れだったのでしょう。
そんなサントレなのですが、その美しさからアメリカの俳優である、スティーブ・マックイーンもイギリス俳優であるスチュワート・グレンジャーもサントレを着用していたことで知られています。
色々なパターンのサントレが製造されましたが、特に素晴らしいものが、ウルドゥー語の数字を使ってインデックスが表示されているものです。
私たちが一般的に見るのが、アラビアで次がローマンであり、他にも楔やバーなど色々なインデックスを見てきましたが、そもそもウルドゥー語の存在も知りませんでしたし、ここまで独創的なデザインはやはりカルティエにしか出来ない至高の領域と言えるでしょう。
この時計は、ケースはプラチナで作られジャガー・ルクルトのエボーシュをベースにした手巻きムーブメント、キャリバー9770MCを搭載しています。
※朱色とウルドゥー語の数字が描かれている(George Cramer氏提供)
ケースバックには「2007/n.1」の文字が刻まれており、このモデルが製造された年を表しています。
こちらはそのまま、サントレの形を現代風に作ったシンプルなタイムピースでしたが、後1つあり、デュアルタイムという2つのバージョンの「タンク・サントレ」が存在します。
ピンクゴールド製で、底文字盤に漢数字を配した100本限定の「タンク・サントレ・デュアルタイム」。
デュアルタイムのものは、2つの文字盤が重なり合い、上がローマ数字で下が漢数字で、別々のムーブメントで動く現代的なものに作り込まれています。
ケースも若干変更され、ラグが四角くなり、角度がよりシャープになっています。
ムーブメントは、ケースサイドにある2種類のリューズでセットされます。
これはアジア市場のみで販売されたもので、ホワイトゴールド製が100本、ローズゴールド製が100本の限定生産とされています。
また、プラチナ製でサーモンピンク色の文字盤が特徴的なものもありましたが、こちらは50本しか製造されませんでした。
漢数字モデルは、私たち日本人には非常に馴染み深いですがカルティエがデザインすると、ここまで美しくなるので漢数字のインデックスもかっこいいなぁとしみじみ思いますよね。
タンク ア・ギシェ
1928年に発表されたこの原型モデルは、クラシックな「タンク」の流れを汲みつつ、文字盤を完全に閉じ、ジャンピングアワーとワンダリングミニッツのみを表示するものです。
日本では、ヴィンテージウォッチの市場では『鉄仮面』の愛称でも知られており、1930年代のどのブランドからも大体この形は出されていました。
150本限定の「タンク・ア・ギシェ」のプラチナ製モデル(提供:オートタイム)。
タンク・ア・ギシェはコレクション・プリヴェの時だけ復活したと思われがちですが、実はその少し前にも再現されています。
1996年、カルティエはプラチナ製とイエローゴールド製をそれぞれ3本ずつ製作しています。
その1年後、ブランド創立150周年を記念して、別のプラチナ・バージョンが150本限定で製造されました。
これらはCPCP結成の1年前に発表されたものですが、同じコレクションであることが広く知られています。
そして、CPCPの期間中には2006年に誕生しましたが、実際に製造された本数が何本だったのかは定かではありません。
CPCPのテスト用で、販売したような感じなのかもしれませんね。
CPCシリーズとして製作されたローズゴールドの「タンク・ア・ギシェ」。
2004年、コレクション・プリヴェの時代になって、同じデザインがローズゴールドで再現されましたが、今度は少し大きめのサイズになりました。
この時に作られた数は100本の限定生産でした。
不思議なことに、このローズゴールドはプラチナよりも希少価値が高いのです。
逸話として、ブラッド・ピットがこのローズゴールドの「タンク・ア・ギシェ」を着用しているのを偶然目撃されたことがあり、それがプラチナよりも希少価値が高い理由だと言われています。
閉じたローズゴールドの文字盤の下部にあるランニングミニッツの窓。
機械的にも、「タンク・ア・ギシェ」はなかなか興味深いものです。
これらはピアジェのエボーシュをベースにしたキャリバー9752MCを搭載しています。
このムーブメントの複雑さは、時間が変わるときにアワーディスクが突然「ジャンプ」するために必要な大きな精度とエネルギーにあり、そのため、繊細でありながら強力なコンプリケーションとなっています。
クラッシュやサントレなど、革新的で大胆なデザインで時計製造に貢献してきたカルティエにとって、このタンク・ア・ギッシュは、その精神を最も忠実に再現したもののひとつと言えるでしょう。
タンクシノワーズ
シノワーズは1922年、カルティエが初めて製作したモデルです。
当時、ヨーロッパのデザイン界では「極東」の美学が大流行していました。
シノワーズ」とはフランス語で中国語を意味し、クラシックな「タンク」のシルエットに、中国の寺院の楼閣をイメージして文字盤の上下に太い横棒を付けたモデルです。
タンクシノワーズは、モノクロームの提供により、オリジナルの長方形のドレスウォッチに新しい表情を与えました。
それ以来、シノワーズはフランスのジュエラーのコレクションに時折再登場するのみで、なかなかお目にかかれないモデルとなっています。
コレクション・プリヴェでは、ケースを少し大きくし、サファイアのケースバックからピアジェが製作したキャリバー437MCを見ることができるようにしました。
プラチナとローズゴールドの2種類があり、2005年のカタログによると、前者は11,750ポンド(日本円で190万円)、後者は7,200ポンド(116万円)で販売されていました。
シノワーズは、CPCPが終了した2008年には完全に売り切れたとされています。
タンクシノワーズのコレクション・プリヴェの例です。
アシメトリックやサントレなど、コレクション・プリヴェのデザインを現代に再現してきたカルティエですが、シノワーズはまだ復活されていません。
コレクション・プリヴェが再びアーカイブを重視するようになった今、シノワーズは近い将来、再度発表されるかもしれません。
タンク・アシンメトリック
CPCPシリーズで再現された、より冒険的なモデルのひとつと言われるアシンメトリックは、カルティエのクラシックなデザインで、長年にわたりコレクターに求められてきました。
当初は「タンク オブリーク」と呼ばれ、1936年に運転手のためにデザインされました。
平行四辺形のケースに、斜めに傾斜した文字盤を備え、ハンドルに手をかけたときに文字盤がちょうど正面になるように工夫されていました。
その後、「タンク・アシメトリック」と改名され、これまでに何度も異なる形状に変化して来ました。
コレクション・プリヴェは、ジョージ・クレイマーの提供により、「タンク・アシメトリー」をアップデートしました。
1996年、コレクション・プリヴェの正式発表の直前に、プラチナ製100本、イエローゴールド製300本で復活を遂げました。
また、"Cartier "と "Paris "のサインは上下に分かれています。
ジョージ・ゴードン著『A Century of Cartier Watches』より、CPCP Asymétriqueの初期のデザインスケッチ。
その後1999年には、カルティエはマカオ返還を記念して、左利き用と右利き用の2種類の腕時計が製作されました。
それぞれ99本の限定生産で、この歴史的な出来事のあった年にちなんでその数になっています。
一般的に現代にあったサイズ感に変更されるプリヴェですが、このモデルはオリジナルデザインのプロポーションを尊重しており、23mm x 32mmというそのままのサイズで作られています。
フィリップス提供のイエローゴールドのCPCPアシンメトリック。
その後、アシンメトリックはコレクション・プリヴェとして2006年に再登場を果たします。
この時のプロポーションは、より現代的なテイストにアップデートされ少し大きく作られています。
タンク・ア・ヴィス
懐中時計に代わって腕時計が登場したとき、その最初の目的のひとつは防水性でした。
カルティエは長方形の時計を製造していたため不利な立場にありましたが、それでもこの取り組みに参加しようとしました。
マラケシュのパシャがプールに入るときに着用できる腕時計を欲しがっていたという噂があり、1931年に「タンク・エタンシュ」が開発されました。
ネジでしっかりと固定された独創的なケースデザインにより、防水機能を備えていました。
CPCP Tank à Visは、特徴的な影を落とします。
タンク エタンシュは、後にコレクション プリヴェの一部として発表された、タンク ア ヴィスのインスピレーションとなりました。
要するに、エタンシュを元に新しく進化させタンク・ア・ヴィスを作ったということですね。
大きめのサイズと厚めのベゼルにより、クラシックとモダンテイストをバランスよく融合させています。
タンク・ア・ヴィス・デュアルタイムとそのシングルムーブメント。
興味深いことに、「タンク・ア・ヴィス」はCPCP時代にカルティエが取り組んだ珍しいコンプリケーションの代表格でもあります。
実際、このモデルには時刻表示のみ、デュアルタイム、ワンダリングアワーの各バージョンが用意されていました。
また、スケルトン仕様のものもあり、過去と現在を融合させるというカルティエの意志が感じられます。
タンク・ア・ヴィスのベゼルにある防水用のネジ。
デュアルタイムはサントレとは異なり、同じムーブメントを搭載し、同じリューズでセットされています。
カラーはホワイトゴールド、イエローゴールド、ローズゴールドの3種類で展開されました。
ワンダリングアワーモデルにはホワイトゴールドとイエローゴールドがあり、2005年のカタログによると、後者の小売価格は13,400ポンドでした。
これは、同じ金属で作られたタンク・シノワーズの約2倍の価格であり、カルティエがこの複雑なムーブメントを開発するために行った投資の大きさを物語っています。
スケルトンの「タンク・ア・ヴィ」は、プラチナ製で20本限定と、圧倒的に希少なモデルとなっています。
トーチュ
プリヴェの10年以上の歴史の中で、おそらく最も人気のあるモデルだったのが『トーチュ』でしょう。
1999年、2000年、2003年、2004年、2005年と、コレクション・プリヴェが発売された期間の半分の期間において、トーチュはCPCPのベストセラーモデルとなっています。
トーチュのケースには様々な複雑機構が組み込まれており、ミニッツリピーターから永久カレンダーまで、少なくとも8種類のモデルが確認されています。
ホワイトゴールド製のトルテュのパワーリザーブ。
モノプソワールについてはすでに触れましたが、その他にもいくつか注目すべき事例があります。
特にミニッツリピーター、トゥール・ビヨン、永久カレンダーは、先ほど紹介したルノー・エ・パピと共に開発されたもので、カルティエの複雑機構の代表とも言えます。
CPCP時代に作られたトルテュのモデルの中から、ほんの一部をご紹介します。
その他、デイ&ナイト表示、日付表示付きパワーリザーブなどのバリエーションがあります。
もちろん、シンプルな時刻表示のみの「トーチュ」もあります。
まとめ
コレクション・プリヴェは、カルティエの歴史において興味深い転換期を迎えています。
1960年代以降、カルティエは事業を商業化し、大衆市場へと舵を切ったが、真の時計メーカーとしての評判を落とし、代表的なデザインの数々をないがしろにしてきたと言う人も多いでしょう。
1998年、ブランドは再びその遺産に焦点を当て、高品質の手巻きムーブメントを搭載した歴史的な名作のいくつかを再現することを選択しました。
10年にわたるコレクション・プリヴェの活動は、その精神を体現するものであり、当時の一部の顧客たちに喜ばれていました。
すでに、これらのコレクションの製造は終了してしまいましたが、消費者の嗜好が変化する中で、カルティエが残した不朽の遺産が評価されるようになったことは、私たちにとって大きな喜びです。