ベニュワール
動画でベニュワールの歴史と魅力をご覧になる方はこちらから↓
今日のこの記事では、カルティエの『ベニュワール』というモデルについて歴史と魅力を解説して参ります。
カルティエの腕時計といえば、やはりタンクが代表でありあの長方形の形を最優先にイメージされると思いますが、丸型もありますし長円形もあります。
そして、その長円形の中でも一定の人気を誇るベニュワールの特徴と派生系を解説させて頂きます。
この記事を最後までご覧頂く事で、カルティエの腕時計を選ぶ幅が大きく広がるかと思いますので、是非とも最後までご覧ください。
カルティエ腕時計『ベニュワール』の魅力
カルティエの腕時計の中で、有名ではないものの密かな人気を集めるモデルがあります。
それがベニュワールです。
このベニュワールですが、フランス語で『バスタブ』という意味を表します。
ダイアナ妃はクラシックテイストのタンク、ケイト妃はスポーティなバロンブルーを愛用するなど、王侯貴族は常にカルティエのアイテムを身につけてきた歴史があります。
もちろん、このベニュワールも王侯貴族に愛されていたモデルです。
しかし、ベニュワールはあまり知られていないモデルだと思います。
そんなベニュワール コレクションは、フランス メゾンの卓越したシェイプ技術を示す代表的な作品です。
1912年にルイ・カルティエが製作したデザインをベースにした "ベニュワール "は、一本の線で構成された楕円形のフォルムで滑らかな曲線を描いています。
それは伝統的なラウンドケースを引き伸ばすことで、手首の曲線に沿い、優雅で美しさのある手首を演出してくれるようにデザインされていました。
そして、このデザインは大きな変更を加えることなく、原型を留めて現代に至るのです。
では、このベニュワールというモデルがどのような歴史を辿って誕生したのかを、一緒に見ていきましょう。
ベニュワール誕生の歴史
ベニュワールが一般に発売されたのは1957年ですが、最初の非公式なカルティエ・ベニュワールは、1912年にルイ・カルティエが当時、最高の個人顧客であったロシアの大公妃マリア・パヴロヴナに楕円形の腕時計を贈ったことから生まれました。
冒頭で、バスタブって意味になりますよって話をしたんですがこれはパヴロヴナさんが『西洋の浴槽』と言った事をヒントにネーミングされたと逸話が残っています。
こちらの画像の時計は、実際に贈られたものではなくイメージなのですがこのようにプラチナの土台と、ベゼルにダイヤモンドがあしらわれたモデルだったそうです。
その後、少しデザインを変えて1957年に一般に販売が開始されましたが、ある女性が着用していたことで世界中の女性から愛されるようになっていきました。
フランスの女優で、カトリーヌ・ドヌーブさんという方がいるのですが、この方が1965年に公開された映画『Repulsion』でベニュワールをつけていたことで、大変な人気になったのです。
映画自体も大ヒットし、カトリーヌさんはレッドカーペットにも呼ばれ、その時にもベニュワールを身につけていたそうです。
壊れたベニュワールからインスピレーションを受けた『クラッシュ』
このように世界的に人気になったベニュワールですが、ここからさらに派生したモデルが誕生しました。
1966年に誕生したのが『クラッシュ』になります。
カルティエの顧客が、自動車事故で破損し溶けて変形したベニュワールをロンドンのメゾンに持ち込んだことが、「クラッシュ」のアイデアの始まりだったといわれいます。
この歪んだベニュワールが、宝石商ジャン=ジャック・カルティエにインスピレーションを与え、世界で初めて、アシンメトリーなケースを作り上げたそうです。
クラッシュはそのデザインから発売当時、前衛的と言われてそうですが今の私たちが見てもこういったデザインを採用するというのは、かなり挑戦的に思えますがそこはやはりカルティエですので、上手く仕上げてきていますよね。
しかし、これは都市伝説とも言われています。
というのも、クラッシュがロンドンのメゾンで誕生したことに間違いはないのですが、1960年代のイギリスというのはスウィンギング・シックスティーズの震源地となってました。
要するに、簡単に分かりやすくいうと、アジアの若者の流行の発信地は原宿と言われていますが、そんな感じで当時のロンドンも様々な新しいものが生み出され、そのムーブメントは世界を席巻しました。
それを総称して『スウィンギング・シックスティーズ』というんですね。
分かりやすいのは、ビートルズとかがそうですね。
映画、音楽、ファッション、建築といった芸術はもとより、人々の思想やライフスタイルに至るまで、大胆なファッションやデザインへの関心が高まっておりロンドンのメゾンも、それに合わせて革新的なデザインを求められたという説です。
どちらが本当の情報かは定かではありませんが、こう言った秘話に思いを馳せることができるのも、モデルの誕生を楽しむことができる要素であることは間違い無いですよね。
そんなクラッシュですが、当時の映画界のレジェンド、スチュワート・グレンジャーやヒップホップスターのカニエ・ウェストなど、さまざまなコレクターに支持されました。
ベニュワールを引き伸ばした『アロンジェ』 と『マキシ・オーバル』
クラッシュの誕生から1年後の1967年には、また新しいモデルである『マキシ・オーバル』を発売します。
『マキシ』には、普通より大きいという意味が含まれおりベニュワールと比較して、少し大きいオーバル型をしたモデルということですね。
このマキシ・オーバルですが生産数が限りなく少なく、一部の富裕層に向けて作っただけなので、どちらかというとプロトタイプになります。
上の写真は1968年にカルティエ・ロンドン店で誕生したものです。
このマキシオーバルなのですが、ロンドンの男性に人気があったようでロンドン・ボンドストリートのブティックを通じて販売されていました。
そのため、文字盤の6時位置を見るとLondonと記載されてるんですね。
文字盤はオパランのデザインが取り入れられており、中央から放射状にビッグアラビア数字が配置されています。
縦方向のサイズが53mmあるので、男性に向けて作られています。
その後継機に当たるのが、アロンジェでありこれが1990年に発売されます。
アロンジェ(allongé)にはフランス語で『引き伸ばした』という意味を持っておりそのモデル名の通り、ベニュアールを縦方向に長くしたデザインになっています。
ケースの長さが最大で47mmであり、不思議なことですがアロンジェを含めたベニュワールシリーズは、レディース用の展開しかありません。
なぜメンズラインが存在しないか分かりませんが、おそらくメンズラインにクラッシュを当てて、レディースラインにベニュワールモデルを当て分担したのだと思います。
(補足なのですが、クラッシュはメンズもレディースも廃盤になっています。レディースラインにも、クラッシュは販売されておりMMサイズから展開されていました)
アロンジェのデザインを見ても、マキシ・オーバルとほとんど違いがないことからそのままのデザインを踏襲して、レディースウォッチとして誕生させたのです。
こうやって見ていくと、カルティエの時計というのは流行に流されたりせず、シンプルであるが故にどの時代を生きる女性にもマッチしてくれるのでしょう。
ベニュワールのそれぞれのサイズを見てみよう
ベニュワールはレディース専用で作られているので、ミニとSMしか存在しません。
そして、ベニュワールの中にアロンジェも含まれています。
それでは下記の画像をご覧ください↓
ベニュワールの素材を見てみよう
ベニュワールは女性専用モデルということもあり、素材もラインナップが多いことが特徴です。
また、一般的に使用されるステンレスのラインナップが存在しません。
よってこちらのモデルは、レディースウォッチの中でも高級モデルに分類されるでしょう。
使われている素材は、ホワイト、イエロー、ピンクの18Kゴールドであり全てが高級のある時計になっております。
ホワイトゴールドは気品さを、イエローゴールドはエレガンスさを、ピンクゴールドはより可愛らしくフェミニンさを表現するときに選べるのではないでしょうか。
また、それらの素材にダイヤモンドがあしらわれるモデルも存在します。
ダイヤモンドは、女性との相性が良いですし、より手元を華やかに美しく際立たせてくれることでしょう。
ミニベニュワールの魅力
ベニュワール ミニは、特に女性向けにデザインされたコンパクトなモデルです。
ダイヤモンドがセットされたイエローゴールドやピンクゴールドのケースが魅力的で、エレガントなシーンを演出したい女性にぴったりのデザインです。
小ぶりながらも存在感があり、日常使いから特別なシーンまで対応できるアイテムです。
購入しようと思った時に手にすることが出来るのが、おそらく2009年前後に作られたモデルになると思います。
ここからは、比較的近代に作られたそれらのベニュワールのデザインとサイズを見てみましょう。
左のモデルが2009年以前のモデルで、右側のが2009年に新しくなったモデルです。
1個前のモデルの特徴は、リューズがないことですね。
これは裏面にあるボタンを押すことによって、時刻を正常に戻す機能がありました。
カルティエは時計であったとしても、ジュエリーの一部(延長線上)にあるという理念があるために、おそらくリューズを外してかなりジュエリーに寄せて作ったのだと思います。
そして、2019年モデルは通常の時計の形に戻って再度リューズが実装されるようになりました。
この辺は好みによって変わりますので、自分の見せ方でどちらの時計が良いかが変わってくると思いますね。
SMとLMサイズ
SMとLMサイズの比較の画像になりますが、MMサイズの展開はありません。
多分MMはアロンジェが補っている、という役割ではないかと考えています。
SMとLMですが、サイズを見比べて頂くと分かる通り大きく違います。
時計はケースのサイズが1mm変われば、印象が大きく変わりますのでここまでサイズの違いがあると、ほぼ別物という感じになるでしょう。
SMはやはり女性にはすんなり馴染んでくれる万能タイプで、LMはおしゃれをより楽しみたいとか、手元をもっと華やかにエレガントにしたいという女性に向けたモデルではないかと思いますね。
ミニとSMはクオーツの展開しかありませんが、LMは手巻きになってますのでさらに上を行く高級ラインのポジションですね。
LMは現在は生産終了になっておりますので、お探しの場合は中古になります。
まとめ
今回は、カルティエのベニュワールコレクションについて詳しく解説しました。
そのモデルが誕生した歴史や秘話を知ることによって、そのモデルがより理解できますし、さらにそのモデルに愛着が沸くものだと思っています。
カルティエといえば、長方形というイメージが先行されますがこのように丸型でも、可愛いモデルがたくさんあるんですね。
カルティエの新しいベニュワール コレクションは、エレガントでユニークなデザインを求める人々にとって、最適な選択肢と言えるでしょう。
これからも、カルティエはベニュワールシリーズを通じて、その卓越したデザイン力とクラフトマンシップを世界に発信しよの女性を虜にしていき続けるのではないかと考えております。