ヴァシュロンコンスタンタンが採用したジャガールクルトの自動巻ムーブメント
ヴァシュロン・コンスタンタンとジャガー・ルクルトの自動巻きムーブメントの展開
ジャガー・ルクルトが初の自動巻きムーブメントを完成させたのは1947年と、比較的遅い時期であったため、ヴァシュロン・コンスタンタンも自動巻きモデルの展開は1930年代頃からとやや後発でした。この影響もあり、手巻きムーブメントと比較して派生キャリバーの数は少なく、全体像も把握しやすいものとなっています。
まず、ジャガー・ルクルトの半回転ローター自動巻き「Cal.476」は、ヴァシュロン・コンスタンタンで「Cal.477」として採用されましたが、搭載されたモデルの製造数は多くなかったようです。これは、おそらく半回転自動巻きムーブメントの厚みや特有のショックが高級時計には不向きと判断されたためだと考えられます。本格的な自動巻きモデルの展開は、ジャガー・ルクルトの全回転ローター「Cal.493」を基にした「Cal.498」が登場した1955年以降となり、これが主力となりました。その後、870系キャリバーや1070系と続き、派生にはスモールセコンド版やデイト表示付きのものも展開され、ラインナップが充実しました。
特に注目すべきは「Cal.1072/1」で、デイト表示付きの1072を基に、パテックフィリップの特許であるフリースプラング式ジャイロマックス・テンプを採用したことで、精度が向上しています。この1072/1は「クロノメーターロワイヤル」の腕時計版に搭載されることが多く、専用ムーブメントとしての特徴も備えています。
続いて開発されたのが、薄型自動巻きムーブメントです。ジャガー・ルクルトの「Cal.920」は、ヴァシュロン・コンスタンタンでは「Cal.1120」として、オーデマ ピゲでは「Cal.2121」として採用されました。デイト表示付きの「Cal.1121」は厚さ6.16mm、2針仕様の「Cal.1120」では2.45mmという薄さを実現しています。これにより、さらに高い精度と安定性が得られるようになり、耐震装置には優れた復元力を持つキフが採用されています。
また、同時期にジャガー・ルクルトが自社の薄型自動巻きモデルで採用していたのは「900系キャリバー」であり、IWCも同ムーブメントを採用していました。これは「920」と異なり、2番車をオフセット配置することで歯車の重なりを減らし、薄型化に適した構造となっています。ジャガー・ルクルトが「Cal.920」をヴァシュロン・コンスタンタンやオーデマ ピゲ専用機としたのは、設計思想の違いに加え、差別化を図る意図もあったのかもしれません。
代表的なムーブメント詳細
Cal.1071
「Cal.1071」はジャガー・ルクルトの「Cal.493」を基に、スイッチングロッカー式の全回転両方向巻き上げ方式を採用した自動巻きムーブメントです。最大の違いは、巻き上げ効率を高める18金製ローターの採用にあります。ローター保持部にはルビーがセットされ、耐久性も向上しています。ジュネーブシールを取得し、毎時18,000振動で動作します。
Cal.1120
ジャガー・ルクルトの「Cal.920」を基にしたムーブメントで、「Cal.1120」は2針仕様、「Cal.1121」はデイト表示付き3針仕様です。これらは1967年に発表され、薄さを追求したムーブメントで、18金製ローターやジャイロマックス・テンプも備えています。