カルティエの腕時計【サントスガルべ/カレ】【サントスオクタゴン】のブレスレット(ピン)の修理
こんにちは、ベルモントルの妹尾です😊
本日はサントスガルべ/サントスオクタゴンのベルトの修理対応について解説致します。
今回の動画の作業は、私が出来るわけではなく工房の職人さんがやってくれる作業ですので、その一連の行程の解説というのをご理解ください。
まずサントスガルべの初期モデルですが、それぞれのコマの繋ぎ目はピンで繋がっています。
後期モデルからは、現代でも一般的な横からマイナスドライバーでピンを抜くタイプに変わっています。
では前期モデルのピンタイプの話をメインに進めていくのですが、まずコマの仕組みをお話しします。
このタイプのコマは、凹側と凸側の形状があり、スライドして入れ込みます。
途中までは、その枠にはめれば入っていくのですが、ピンとぶつかるので、ピンを押し込んで、中央まで持っていくことでピンと隙間がドッキングして、コマが繋がるという仕組みです。
このピンの収縮は小さいバネによって実現されています。
今回は既にコマが繋がっているために、外すことはしないのですがこのように、ピンの収縮によってコマが固定されており、受け手側はそのピン分の隙間が掘られています。
そして、この部分が結構壊れやすい部分でもあります。
なぜ壊れやすいかと言いますと、長年腕に着用しているとそこ(隙間と隙間とピンの間)に汗が入りますし、汗の水分で空気中の泥(黄砂みたいなのをイメージされるとわかりやすいと思います)などや埃を巻き込んで固着していきます。
かなり狭い空間なので、そこに水分が残ればピンもバネも腐食して、ピンも折れやすくなるし、バネもバネとしての機能を果たせなくなってしまいます。
もちろん3シーズンとかでは全く問題はありませんが、ガルべが誕生してから既に40年は経過してるので、メンテナンスが行われてない個体はピンの部分が腐食して、バネも機能してないし、折れていることがほとんどです。
では実際に写真を使って解説して参ります。
まずこんな感じで、最初はコマが外れています。
ピンで固定されてないと、スライドさせれば手で動かすだけで簡単に外れてしまうので、ピンはとても大事な働きをします。
写真では洗浄まで終わってしまってますが、繋ぎ目の部分は大体黒くなってて油が固まったような硬さがあります。
ひどいものは、固まりきってて洗浄だけでは落ちないので、工具を使って剥がすこともあります。
断面図はこんな感じですね。
腐食したピンは折れてしまってる場合もあれば、その場で固着してしまってる場合もあるので、元々あるピンを取り除く作業が入ります。
ピンセットで取ったり、ドリルで削ったりなどの作業ですね。
こんな感じで、コマ側の準備が出来たら、新しいピンとバネを取り付けていくのですが、これは新しく制作をします。
こちらが新しく作成したピンです。
ステンレスの細い棒があるのですが、それを旋盤でピンの形に作り上げていきます。
ケース側のサイズに合うように、ピンの幅を微調整して作り上げていきます。
その後、バネと合体させてコマに取り付けて完成となります。
サラッと流して解説していますが、これら一連の動作で大体1ヶ月から45日はかかりますね。
横ピンタイプもそうなのですが、あのコマとコマが重なる空間や、さらにコンマ何ミリで挿入されているネジやピンの腐食を防ぐことはほぼ無理です。
夏場は時計を着用し終わったら、ケースを拭いたりすることは出来ますが、ブレスレットのそういった隙間は、どうやっても拭けない部分が出てきます。
ケースとムーブメントは適切なオーバーホールをちゃんとやっていれば大丈夫ですが、ブレスはその範疇に入らないというのが私の考えです。
乾燥剤を入れたボックスなどに入れておくとまだマシなのかもしれませんが、それでもこの隙間の水気を完全には除去できないでしょうし、先ほども申し上げた通り、泥や埃を噛み込んでるので、それがまた水気の除去を阻害します。
よって、ブレスレットは出来る限り大切に扱い、壊れたものはそれはそれで寿命と捉えるのが一番ではないかなぁ。と思いますね。
家電とかであれば、すぐに交換が出来るので『まぁ寿命だよねぇ・・・・』で終わらせることが出来ますが、ブレスの寿命ってのはその日が来るまで分かりませんからね。
そして、壊れた時にそのまま使い続けるか、新調するか?ってのを決定すればいいのではないでしょうか。
コマの修理代金 1コマ(一箇所) 16500円
修理はメーカーに出して頂くのが一番だと思われますが、おそらくこのブレスレットタイプは製造終了となっており、修理も受け付けてくれないと思われます。
(ブレスの修理をメーカーに依頼すると、大体は下取り交換で同じ幅のままのベルトに新調されます)
同じ幅のベルトになっても良い方は、そのままカルティエ社で交換してもらい、片方向ブレスは修理とか交換の在庫をカルティエが持ってないので、そちらは修理するという選択になると思いますね。
どっちが正しくてどっちがダメなんてのはその人の中にか答えはないはずですので、自分の思われたやり方が正解だと考えることが大切ですよね。