カルティエの腕時計にある『タンク マスト』と『タンク ルイ カルティエ』は何が違うの?
『タンク マスト』と『タンク ルイ カルティエ』の違いについて、動画でご覧になる方はこちらかした↓
なんでこんな激似の時計があるのか!?
という話なのですが、このモデルの歴史を振り返って見ていくと、すんなり理解出来ると思います。
これまでにも激似モデルが複数ありましたが、それはカルティエ社の気持ちになってみると納得できるんですね。
この動画を最後までご覧頂くことで、90%はマスター出来ると思いますので是非とも最後までお付き合いください。
目次は概要欄に入れておりますので、気になるところがありましたらそこからご覧ください。
それでは早速やって参りましょう。
モデル名のどこかに『タンク』がつく理由
まず前提の理解として、カルティエの腕時計にはモデル名のどこかに『タンク』の名称が入るものが複数存在します。
例えば、タンク フランセーズ、タンク アメリカン、そして今回のタンク マストですね。
廃盤になっていったものも含めると、もっとたくさんのモデルがありました。
では、これはなんのために『タンク』がつくのかと言いますと、タンクから派生してることを表しているからなんですね。
要するに、『タンク』とモデル名に入るものはご先祖様に、タンクがいるわけですね。
だからどのモデルも、少しづつデザインが違うものの基本的にはタンクに近い形をしているのです。
そしてこの原型が1917年に誕生した『タンク』のことを指すんですね。
詳細に解説すると、話が少しややこしくなってしまうので、ここでは簡単に解説しますが、その初代が長方形の『タンク ルイ カルティエ』のようなスタイルをしていました。
ですので、この長方形スタイルがタンクのご先祖様的なポジションにあたいします。
ある程度、タンクとその派生についてご理解頂けたかと思いますので、次にこのモデルの必要性が分かるように歴史について解説致します。
マスト シリーズの歴史
1970年代まで話は遡るのですが、この頃は日本のSEIKOがクオーツウォッチの開発に成功したことで、世界的に手巻きや自動巻の腕時計が売れなくなり、特にスイスの時計ブランドは壊滅的なダメージを受けました。
それまでの時計は何に価値があったかと言いますと、もちろんブランド力はそうですが、職人たちが作ったそれぞれのパーツを組み合わせて精度の高い時計を作り出すことだったのです。
よって、そのムーブメント(時計を動かす機械)にも大きな価値があり、そこが高級時計と言われる所以だったんですね。
ただし、クオーツウォッチの誕生によって人々の価値観が変わってしまったのです。
クオーツショックの煽りにカルティエ社も含まれていましたが、カルティエという会社は出自が宝飾品ブランドということもあり、クオーツムーブメントの採用に引け目はなく積極的に採用することになりました。
ここで、2つのラインを誕生させます。
1つがルイ カルティエ コレクションという高級機をメインに展開するコレクションで、ムーブメントは以前の通り手巻きや自動巻を採用し、ケースはゴールドやホワイトの18金が使用されました。
詳細については、こちらの動画で詳しく解説しておりますので気になる方はこちらの動画をご覧ください↓
2つ目がマスト ドゥ コレクションで、これは1970年代後半にスタートしました。
こちらはケースをスターリングシルバー(925/1000)の上から18金のヴェエルメイユを施し、見栄えは高級感がありつつも安価に作れるものでした。
そして、ムーブメントも安価なクオーツウォッチが採用されていました。
マスト ドゥ コレクションについては、こちらの動画で詳しく解説しておりますので気になる方はこちらからご覧ください↓
ここで、初めてマストという言葉が出てくるんですね。
このように2つのラインを展開した理由は、高級ブランドであるという威厳を保ちながら、カルティエというブランドを少し安く販売することで、富裕層だけではないその下の層の人も取り込もうと考えたんですね。
よって、マストという『持たなければならない』という意味を持ったシリーズが新しくラインナップに追加されたのでした。
タンク ソロの誕生からタンク マストへ
このマスト コレクションですが、大人気モデルのロングヒットになったことで、2000年代前半まで継続して生産が続けられました。
そして、2004年にマスト コレクションは役目を果たし次世代につながる『タンク ソロ』にその役割を果たしたのです。
ソロには、マストという名前は入っていませんが実際の役割を見てみると『タンク ルイ カルティエ』の素材を見直しているモデルであり、マストシリーズの廃盤が決まって新しく入れ替わったので、マストシリーズの役割を継承しています。
2004年から継続して販売されていた、タンク ソロなのですがこの時計もまた2021年に役目を終えて次のモデルにバトンタッチしたのです。
タンク ソロについてはこちらの動画で詳しく解説しておりますので、気になる方はこちらの動画もご覧ください↓
では、次のバトンを受け取ったモデルは何だったのかと言いますとこれが『タンク マスト』だったんですね。
ここまでの話をまとめると、マストシリーズというのはカルティエの中でもリーズナブルで購入出来るシリーズのことを指すんですね。
タンク マストまでの歴史が分かったことで、次はタンク マストとタンク ルイ カルティエの違いについて一緒に見ていきましょう。
タンク マストとタンク ルイ カルティエの違いを見てみよう
こちらの画像をご覧ください↓
こちらは2つのモデルを正面から見た比較で、左がタンク マスト右がタンク ルイ カルティエになります。
どちらもLMサイズであり、条件を同じにして比較をしていますがぱっと見ではほとんど違いはありません。
ソロの方が、見分けるのはかなり簡単だったのが分かりますね。
では、文字盤を拡大してよ〜く見てみましょう。
文字盤を見たときに、少し違うなぁというのが分かってくるのですが、マストの方は文字盤はオフホワイトが採用されています。
ルイ カルティエの方は、シルバーよりのホワイトでミニッツレールの内側には、ギョーシェ彫が施されています。
ギョーシェ彫とは、一般的に時計の高級モデルに施される装飾のことで、時計の高級感の向上や日の光による反射の抑制効果があります。
文字盤に手間をかけてるか、かけてないかでまず違いがあるのが確認できました。
次はリューズを見てみましょう。
これは、ぱっと見で分かる部分ではありませんがマストの方は少し膨らみがあり、ルイ カルティエの方はとんがっているのが分かりますね。
ルイ カルティエがこのようにとんがっているのは、冒頭で説明した通りこの時計の誕生が、戦車の平面図からインスピレーションを受けて誕生したために、リューズの部分は砲弾をイメージしてデザインされているからです。
また、このリューズなのですがそれぞれ素材も違います。
ルイ カルティエには、天然のブルーサファイアの石が使用され、ダイヤモンドモデルにはダイヤモンドの石が取り付けられています。
その反面、マストの方は人工で作られたスピネルという石が使われています。
もちろんスピネルの方が、安価に入手できる為にこう言ったところで差別化を図っているのです。
それぞれのモデルの素材を見てみよう
素材を見てみると、意外なことにステンレスの展開しかありません。
あったとしても、ダイヤモンドモデルだけで他のモデルのように、イエローやピンクゴールド、それらとステンレスのコンビがありません。
素材やムーブメントを安価なものに置き換えるのが、マストシリーズの役目ではありますが、ここまでラインナップが少ないと選ぶのが少し難しくなってしまいますよね。
旧モデルであった、タンク ソロにはピンクやイエローゴールドのメッキバージョンがあったことを考えると、少し物足りなさを感じてしまいます。
タンク ルイ カルティエとの素材の違いを見てみましょう。
カルティエの腕時計の中でも、トップに君臨するために安価なステンレスが存在しません。
ケースから最高のものが使われており、18金のイエロー、ピンクゴールドが使われています。
このように、ルイ カルティエの方にはステンレスモデルが存在しないので、使われている素材を最初に見るのが一番簡単に見分ける方法だと思いますね。
文字盤のバリエーションを見てみよう
オフホワイトにローマ数字が配置されたスタンダードモデルの他に、1970年代に人気を博したカラーダイヤルバージョンも存在します。
スタンダードモデルは、タンク マスト ウォッチと呼ばれますがカラー文字盤の方は70年代のオマージュとして、敬意を込めてタンク マスト ドゥ カルティエ ウォッチと呼ばれています。
では、カラーダイヤルの方を見てみましょう。
こちらは、1970年代にも同じように展開されたカラーでそれを復刻させたものになります。
カルティエらしくシンプルなデザインではあるものの、物足りなさを感じさせず、気品があり美しい時計になっています。
しかし、上記の3つのカラーは現在ではカルティエの公式サイトでは確認できず、どうやら廃盤になってしまったようです。
2021年に誕生したのを考えても、生産されたのはかなり短いのでおそらく今後は高騰してくいのではないかと考えられます。
ちなみに現在は、ブラックだけは現行品として購入することが出来ます。
ブラックも、もちろんかっこいいのですがやっぱり自分の個性を出すためのカラーだと思いますので、その選択肢が狭まったのは残念ですよね。
70年代に作られたものと比較すると、ほとんど違いはないように見えますが70年代のものの方がリューズに丸みがあり、可愛らしい感じに仕上がっています。
また、文字盤を見てみると70年代の方には『must de』の文字があるのに対して2021年モデルには、それがありません。
ケースの大きな違いは、18金のヴェルメイユ(金メッキ)があるかないかで、70年代のものはスターリングシルバーといって銀を1000として見たときに、925%含まれている純銀の上からメッキが施されていました。
このように考えると、素材だけを見れば70年代の方が良いのが分かりますね。
それでも安価なラインとして展開されていたので、こういったところにヴィンテージウォッチの魅力があるのだと思います。
タンク マストのサイズを見てみよう
タンク マストのサイズ展開はSM,LM,XLの3つで展開されています。
基本的にカルティエの腕時計には、SMの次にMMが来るのですがこのモデルでは、MMは飛ばしてなぜかLMが来ます。
その理由は分からないのですが、おそらくカルティエの中に何かしらのサイズ基準があって、MMサイズに出来なかったのだと思われます。
実は、ソロも同じようにMMがなかったのでここからも、ソロの後継機であることがわかります。
では、どれがレディースでどれがメンズなのかという話になるのですが、こう言った時にはムーブメントを見ていくと分かります。
SMはクオーツムーブが入ってるので、レディース向けであるのが分かります。
女性は手元をおしゃれにするので、付け爪などをしてることが多くそう言った場合にリューズは回しにくいですし、自動巻も男性と比べたら運動量が少ないので、巻き上げが難しいからですね。
よって一般的にどのブランドも、レディースウォッチにはクオーツムーブメントを中心に添えてあります。
LMは一般的には、メンズ向けサイズになりますがこのマストは、ムーブメントがクオーツなのもあって、これがユニセックスの役割を果たしています。
そして、XLには自動巻ムーブメントが入ってるのでこれは明確に男性に向けたサイズだというのが分かりますよね。
まとめ
カラーダイヤルの展開がまだ継続されていれば良かったのですが、廃盤になってますし、旧モデルのタンク ソロと比較するとバリエーションがかなり狭まっているイメージが拭えません。
私の総評としては、男性はこの中から選び抜くことが出来ると思いますが、女性の方はステンレスだけの中から、お気に入りを見つけるのは難しいかなぁと思いますね。
ダイヤモンドモデルでSMサイズがあるので、レディースもカバーしているのですが、どっちかっていうとメンズ向けのモデルになっていってるのかもしれません。
とは言っても、まだ誕生して2年目ですのでソロのように、これから様々なデザインの文字盤が限定で発表されるはずです。
その時に、ほぼ確実に女性の方にも好まれるクリスマスモデルなどが出てくると思いますので、その時のために基礎知識として理解しておくのが、この動画の活用方法かなぁ、と思いますね。