『「カルティエ」のリシュモン、予想超える増収-高級品市場回復の兆し』についての私の見解
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日の動画は、ブルームバーグから出て来た記事をお話ししたあとに、私の見解を少しだけ話していこうと思います。
以前の動画で、スイスの時計輸出産業はインフレの影響で腕時計自体の価格が高くなってしまって、それと同時にスイスフラン高の影響もあり、輸出は伸び悩んでいる。ということを解説しました。
こちらの動画なのですが、私のチャンネルの中では、かなり回っている方ですし学びになることも多いかと思われますので、気になる方はこちらもご覧ください⬇️
そして、今回はその輸出不振を回復させたことを、打ち出すような内容の記事となっております。
リシュモンの利益を上げる構造が分かれば、なぜコングロマリットであるべきなのか?腕時計とジュエリーを扱う必要はどこにあるのか?
この辺が分かってくると思いますので、今日の話は腕時計がメインではありませんが、大きな潮流を学ぶ動画としてご覧ください。
それでは早速やって参りましょう!
「カルティエ」のリシュモン、予想超える増収-高級品市場回復の兆し
高級ブランド「カルティエ」などを展開しているリシュモンは16日、ホリデー商戦期の売上高が2桁の伸びを示したと発表した。
消費者がカルティエのジュエリーに惜しみなく出費し、高級品に対する需要回復の兆しが見られ、市場予想を大きく超える増収となった。
スイスのリシュモンによると、昨年10-12月期の売上高は為替変動の影響を除き前年同期比10%増加した。
アナリストらは1%未満の増加を見込んでいた。
米州と欧州が業績改善をけん引し、高価格のジュエリーが好調で、腕時計の不振を打ち消した。
RBCキャピタルマーケッツのアナリスト、ピラル・ダダニア氏はリシュモンの業績について「異例の強さ」とリポートで指摘した。
リシュモンの発表を受け、高級品業界は最悪期を脱したのではないかという明るい見方が広がり、リシュモンや他の高級品グループの株価が上昇。
高級品業界は長年にわたる積極的な値上げの後、需要冷え込みに見舞われていた。
リシュモンの10-12月売上高はアジア太平洋地域では7%減だったが、それでも予想を大幅に上回るものだった。
不動産市場の健全性に対する懸念から消費者の高級品購買意欲が弱まっている中国だけは依然として低迷し、同四半期の売り上げは18%減少した。
ホリデーシーズンを含む年末の3カ月は通常、高級ブランドにとって最も重要な時期になる。
ハードラグジュアリー
リシュモンは、人気の高いジュエリーブランドであるカルティエと「ヴァンクリーフ&アーペル」を所有。
この市場は「ハードラグジュアリー」として知られ、ハンドバッグやその他のファッションアイテムよりも時代を超越している傾向にあることから、不確実な時代には相対的に好調となることが多い。
リシュモンの腕時計部門も販売減少は予想よりも小幅に収まった。
フォントベルのアナリスト、ジャンフィリップ・ベルチー氏はリポートで、中国「市場は依然として不安定ではあるものの、安定化の兆しを見せている」とコメント。
全体的には「中国と腕時計部門の厳しい状況にもかかわらず、リシュモンは絶好調だ」と評価した。
高級品の中でも富裕層向けの商品を扱う一部の企業は、より一般向けの商品が中心の企業よりも高級品不況をうまく乗り切っている。
イタリアのブランド、ブルネロクチネリは今週、好調な四半期業績を発表し、今年と来年の増収率を10%と予測した。
同社はカシミアやビクーニャのボマージャケットを1万7500ユーロ(約280万円)で販売している。
世界最大のラグジュアリーグループであるフランスのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは28日に業績を発表する予定。
ベルナール・アルノー氏率いる同社は、ハンドバッグやプレタポルテなどのいわゆる「ソフトラグジュアリー」セグメントにより重点を置いている。
と、ここまでが記事の内容になります。
これらを簡単に要約すると、腕時計の業績はあんまり良くなかったけど、宝飾品の需要が爆発して、特にヨーロッパとアメリカ市場が頑張ってくれました。
日本を含めたアジア市場は、成績がよろしくありませんでした。
という内容ですね。
増収の幅も元々は昨年と比較して1%アップくらいであろう!という予想から、蓋を開けてみたら10%のプラスになっているので、思った以上に増収につながっていますね。
ではここから私の見解なのですが、ヨーロッパにもアメリカにも超お金持ちがいるんだなぁ・・・と改めて実感させられました。
アメリカは今もガンガン経済が成長しているので分かるのですが、ヨーロッパも意外と底堅いんだなぁ。といった感じですよね。
そして、このラグジュアリー市場を見ていく時に切り離せないのが、誰がこれらを購入しているのか?
という疑問です。
ジュエリーですので、ブランドが打ち出す導入ラインでも100万円が普通でミドルレンジで500万円、アッパー層になるとアンダーが1000万円といった感じなのですが、私を含めた一般人の感覚では、これらをそう簡単に購入することは出来ません。
ただし、これは私を含めた一般人の感覚であり日本も含めて、一般人とはかけ離れた圧倒的なお金持ちが存在し、それらの人々がこれらのジュエリーを購入していることが考えられます。
そして、これらの人々によって高級宝飾品ブランドは支えられ、もっと行ってしまえば資本家が増えれば増えるほど、こういったコングロマリットは強くなっていくという図式です。
要するに、世界の大きな流れとしては富は一局集中し、持つ人は大量に持ち一般の人々はその恩恵を受けれていないという構図が成り立っているのです。
一昔前は、これはヨーロッパやアメリカだけの話でしたが、今となっては日本もここに含めて良いでしょう。
格差社会というのは、資本主義によって生まれるものなので、個人ではどうすることも出来ないのですが、年月が経てば経っていくほどこの傾向は大きくなっていくことは頭の片隅に置いておく必要があるでしょう。
ではここからは、なぜリシュモンやLVMHはコングロマリットになるべくしてなったのか?
ということについて解説して参ります。
LVMHとリシュモンの経営
LVMHには代表ブランドにヴィトン、フェンディ、ベルルッティ、ディオールなど、腕時計は少し弱いですがゼニス、ウブロ、ホイヤー、ブルガリなどを所有しています。
ヴィトンは最近、ムーブメント製造企業を買収したことで、マニュファクチュールに進化していますが、それでもまだ腕時計ブランドとしての認知は弱くどちらかというと、ファッションやお酒に強みのある、フランスのコングロマリット企業だと言えるでしょう。
リシュモンはと言いますと、記事の中にもあった通りカルティエ、ヴァンクリーフ、ランゲ、ヴァシュロン、IWC、ジャガールクルト、ピアジェなど、ダンヒルとかクロエも入っていますが、どちらかというと腕時計とジュエリーに強みのあるスイスのコングロマリットです。
LVMHは元々はルイヴィトンとモエ・ヘネシーというお酒の会社が合体したことで誕生したのですが、そこからいろんなブランドを買収していくことによって、今となっては業界1位に躍り出てきた会社です。
ではなんで革製品の会社と、お酒の会社が合体する必要があったかというと、お互いを補完することが出来るからです。
ファッションというのは、流行り廃りがありますのでその年は大当たりを当てたとしても、次の年も大ヒット商品を生み出せる保証はありません。
しかし、そこにお酒という一見すると全く関係ないような業界が入ってくることによって、爆発的なヒット作が出てくるわけではないけれども、常に安定して売れ続ける土台はあります。
また、富裕層はお酒を飲むシーンが多いために、ヴィトンの顧客と相性が良いんですね。
そもそもはこのような思惑があり、合体するという道を選んだのですが、会社を大きくすることと同時に、もっと基盤を安定させるために様々なブランドを買い占めて行ってという背景があるのです。
そうなると、ファッションがその年はダメであっても腕時計と化粧品やお酒が下支えしてくれたり、ファッションが良い時には業績はさらに底上げされる。
このような相乗効果が得られるんですね。
よってLVMH会長のベルナールアルノー氏は常に、長者番付トップ10に入っていますよね。
これは業界2位のリシュモンも同じ理由で、腕時計と宝飾を積極的に展開しています。
LVMHと比較すれば、メイン業種は腕時計とジュエリーなので少ないですが、その分1個1個の単価が高く、この2業種だけでも充分に補完し合うことができるということですね。
そして、この補完し合う関係というのが、今回の業績と直結していますし、私が一番伝えたい分かりやすい事例です。
前回は腕時計が不振だったけども、今回は宝飾ジュエリーが頑張ったことで腕時計の不信を相殺して、なんならお釣りが来るくらいの利益が出せた状態です。
リシュモンになる前の話ですが、スイスのそれぞれのブランドはクオーツショックを経験しており、1つの業種だけでは何かがあったときに壊滅的なダメージを受けてしまうことを学んでいます。
日本のように内需が強いわけでもなく、95%は輸出に依存しているので、1つの業種が潰れた時の代替えがないと、クオーツショックの時のように共倒れになってしまうんですね。
その経験が根底にあるために、リシュモンも積極的にブランドを買収し巨大コングロマリットに成長していくことになりました。
このようにそれぞれの会社は、取り扱うブランドは違うものの、その根本にある狙いは業績の安定化であり、どこかが転んでもどこかが下支えするような構図を作り上げるために、どんどんブランドの買収を続けてるんですね。
もちろん、ただ無闇にブランドを買収するだけでその買収先のブランドも、コングロマリットも業績をあげれるわけではありません。
そのブランドを吸収することによって、そのブランドの真価を引き出すためにマーケティングを行い、誰もが欲しい!と思うブランドに作り上げる工程も必要ですからね。
今回の動画では、軽く触れる程度にしますが先ほど説明したルイヴィトンのムーブメントもそれと同じです。
元々ヴィトンは時計なんて作ってなかったのに、ムーブメント製造会社を買収し、それをヴィトンの中に組み込んでヴィトンの時計は自社製です!
という触れ込みで売り出しています。
自社製というだけで響きが大きく変わりますし、そこに付随してその工房の理念やどんな技術者がどんな思いでムーブメントを作っているのか?
などを魅せていくことで、ヴィトンであるにも関わらずなんか良い感じの時計に見えています。
今はなんか良い感じの時計に見えていたとしても、これがまた10年も経過すればヴィトンは革製品が素晴らしいのは変わらないけど、腕時計も凄いよね。
みたいな空気感になってるかもしれません。
そして、これがある程度売れてしまうと、これまた誰もが持っているということになるので、それは夢とか憧れのブランドから離れてしまいます。
今のヴィトンはどっちかっていうと、憧れから離れてる気がしますが。
でも、腕時計であればとりあえずめっちゃ高く値段を設定していれば、誰もが買えるブランドにはならないので、おそらくそっちに持っていくのではないかなぁ。と考えています。
革製品もステルス値上げで高くしていって、エルメスまでは行かずともまた憧れのブランドに戻して、時計は時計でロレックスに近づけていくのではないか。
そんな感じですね。
このように、ただ買収するだけではなく、その後に続いていくストーリーもしっかりと押さえているので、この辺のマーケティングは学ぶべきところが多いでしょうね。