パテックフィリップRef.3987と3989のリファレンスとケースの違い考察
1. Ref.3989とRef.3987のケースサプライヤーの違い
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Ref.3989 → Favre & Perret(ファーブル・ペレ)製、ハンマーヘッド115
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Ref.3987 → Atelier Réunis(アトリエ・レユニ)製、ジュネーブキー28
両方とも1980年代後半から1990年代にかけて製造されたEllipseの派生モデルで、ケース形状・サイズ・ラグデザインはほぼ共通です。
2. パテックがリファレンスを分けた可能性
パテック・フィリップは、同一デザインであっても「ケース製造元の違い」で別リファレンスを割り振ることが過去にもあります。
特に1980年代〜90年代は、Favre & Perret(ル・ロックル)とAtelier Réunis(ジュネーブ)を併用していた時期で、同じモデルを複数工房に発注するケースが多く見られます。
考えられる理由は以下のとおりです:
(1) 品質トレーサビリティの確保
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ケースサプライヤーによって金属加工方法や仕上げがわずかに異なるため、後年の修理やパーツ交換で識別できるよう、内部的にリファレンスを分けた可能性があります。
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特にジュネーブ刻印(28)とル・ロックル刻印(115)では工程が異なるため、製造履歴を明確にしたい意図があったと考えられます。
(2) 生産体制のリスク分散
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当時、Favre & Perretはパテックにとって重要なケースサプライヤーでしたが、アトリエ・レユニも長年のパートナーでした。
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同じモデルを複数サプライヤーに発注することで、供給トラブルや納期遅延を回避していた可能性があります。
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ただし、ケース会社を跨ぐと仕上げ精度が若干変わるため、パテックとしては「同一モデルであっても別管理」としたかったのではないかと推測できます。
(3) ジュネーブシールとの関係
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Ref.3987のケースを担当したAtelier Réunisはジュネーブに所在し、ジュネーブシール刻印を扱うケース製造で有名です。
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Ref.3989のFavre & Perretはル・ロックル拠点のためジュネーブシールとは無関係。
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製造地・検定の違いも、リファレンス分割の要因になり得ます。
3. 私の見解
「外観が同じなのにリファレンスを分けた理由は、ケース会社を明確に識別するため」
これはほぼ間違いないと考えています。
パテックは、ムーブメントが同じであってもケースメーカーが違えばリファレンスを分けることがしばしばあります。
3987と3989はまさにこのパターンで、修理・補修・再研磨などアフターサービスを見据えた識別だった可能性が高いです。