腕時計のオーバーホールのタイミングはいつがベストなのか?
腕時計のオーバーホールのタイミングはいつがベストなのか?を動画でご覧になる方はこちらから↓
この記事では『オーバーホールの適切な周期』について解説して参ります。
時計のオーバーホール(修理)なのですが、そもそもどのタイミングですればいいのか分かってない方って多いのではないでしょうか?
別に今はちゃんと動いてるし、動かなくなった時に修理に出せばいいのでは?
そう思ってる方は、裏で結構ヤバい状況になってる可能性があります。
使用頻度に対して、これくらいでオーバーホールをすべきではないか?
と言うのを職人に伺いながら作っております。
オーバーホールの必要性を正しく理解して、今あなた様がお持ちの腕時計を孫の代まで残して行けるよう指南させて頂きます。
オーバーホールってなに!?
女性の方も見てると思いますので、かなり噛み砕いて話していくのですがオーバーホールってのは『修理』のことです。
車を2年に1回車検に出して、問題ないかチェックしますがそれと同じようなことを腕時計でもやるって考えて頂くと分かりやすいと思います。
このオーバーホールをしないと、時計が動かなくなったり時間が大幅にずれたり、最悪の場合使えなくなってしまいます。
これは手巻きでも、自動巻でも、クオーツでも全部共通ですね。
腕時計というのは、ご存知の通りたくさんの歯車とパーツが組み合わさって、それらが綺麗に噛み合うことで動作しています。
しかし、それらのパーツの間に異物が混入すれば、そこが毎度毎度干渉(ぶつかる)し、一度の干渉が小さくてもそれが毎日毎日積み重なることで、不良につながっていきます。
そんなオーバーホールですが、どんなことをするかというと、油を刺したり、固着した油を除去したり、パーツの錆を落としたり、細かなチリ屑を取り除いたり、と言ったことをやって時計を綺麗にして、歯車の噛み合わせを正常にするようなイメージです。
このオーバーホールを、正しくオーバーホールを行なっていれば、100年間はその腕時計を使うことが出来ると思っています。
100年前と言えば、1924年のアールデコが盛り上がってた時代ですが、その時に作られた時計はまだまだパーツに耐久性などがないので、今も使うってのは厳しいでしょうが、1940年代以降に作られた腕時計は、2040年でも動いてるはずです。
技術が進歩したことでその年代以降の腕時計は、頑丈に作ってありますしそれが50年代、60年代、70年代になってくればよりパーツの耐久性は向上しています。
ここまでがオーバーホールの必要性の解説になるのですが、20代の頃の私が思ってたみたいに、
『つってもさぁ、別に今ちゃんと動いてるし、どうせその修理代って高いんだから、動かなくなってからオーバーホールした方が効率よくない!?そっちの方が合理的でしょ!』
こんな思いを持たれてる方も多いことでしょう。
というわけで、ここからは『何で時計が動かなくなる前にオーバーホールをしないといけないのか?』
ということを解説します。
何で動かなくなる前にオーバーホールが必要なのか?
分かりやすいように、車で例えて見ましょう。
ガソリンスタンドに行った時に、1度はこのように言われたことがあるのではないでしょうか?
タイヤの空気圧少し減ってますね。補充しときましょうか?
ウォッシャ液だいぶ減ってますね。補充しときますね。
エンジンオイル、だいぶ減ってますね。もしくは汚れてますね。
補充しときましょうか?
などなど。
空気もウォッシャ液もタダだし、タダのものはそりゃ補充してくださいな。
って思いますよね。
問題がエンジンオイルです。
3000〜5000キロ走ったら交換しないといけないのですが、別にこっち側は汚れてようがそんなの見えないし、汚れてようが車が動いてるんなら別に問題ないでしょ?
って話なんですね。
何でそこでエンジンオイル代を払わないといけないのよ。
って思っちゃうんですよ。
でも、これってその先のことが見えてないから、こういった発想になってしまうんですね。
エンジンオイルを交換しないと、ガソリンの燃焼効率は下がりますし、減ったまま車を動かしていたら、焼きつきが起こってエンジンをダメにしてしまいます。
こうなったら、事前に交換していればエンジンオイルを交換するための4000円で済んだのが、4000円なんかじゃ全然比較にならない金額が必要になってしまうんですね。
これが腕時計にも同じことが言えるですよ。
表面上は、狂いなくちゃんと動いていて、全く問題ありません。
という状態なんだけど、中はもうメンテナンスをしないといけない時期に来てるよ。
って感じなんですね。
そして、時計が動かなくなったというのは、もう末期症状に近いんですよ。
クオーツは電池が切れただけの可能性もあるので、一概にそうとは言えません。
分かりましたよ。と。
オーバーホール必要なんですね。と。
でも、時計のオーバーホールなんてどうせ高いから、積極的にやりたくないんですわ。
という考えを持ってる方もいらっしゃるかもしれませんが、それはそれで間違いではないと思います。
オーバーホールの周期が来たら、もうそれを手放して次の腕時計を買うってやり方でもいいでしょう。
しかし、この動画をご覧になってる方は今持ってるその時計に愛着を持っている方が多いと見受けられますので、やはりお金はかかってもオーバーホールはすべきですよ。と伝えたいんですね。
ではここからは、そんな腕時計のオーバーホールの周期を見てみましょう。
オーバーホールの正しい周期は?
クオーツについて
最初にクオーツウォッチの解説です。
クオーツは電池が切れるのが、大体3年なのでそのタイミングで電池交換と一緒にオーバーホールされるのをお勧めします。
ここからの内容は、特に女性の方に聞いて頂きたいのですが、クオーツウォッチには電池が入っています。
この電池が切れたタイミングで、使わなくなってそのまま長い期間放置してしまうと、電池の中に入ってる液が漏れて時計を動作させる基盤を腐食させることがあります。
全部の電池がそうなるというわけでなく、大体安い電池を入れてる時に液漏れが発生しやすいです。
安い電池が入ってるかどうかってのは、自分で判断は出来ないと思いますのでそこはどうしようもないのですが、電池が切れた時にもうこれは使わないかなぁと思った時には最悪、電池だけでも抜くことをお勧めします。
その時計が不必要になった場合に、電池を入れた時に動くことが分かればリセールもアップしますし、何より時計を子供に受け継がせることが出来ます。
マストタンクのクオーツなどを持ってる方は、値段は上がり続けてるので使わない時であっても、大切に保管されてください。
近くにそう言った時計店はあっても調べるのも面倒だと思いますので、大体大きな駅の中か近くにあるミスターミニットをご利用されてください。
所要時間は大体10分でモデルによって異なりますが、1650円から3300円の間で対応してくれます。
機械式について
ではメインの機械式(手巻き、自動巻)について話を移します。
機械式の腕時計はいろんなパターンがあると思います。
まず例外として、オメガのコーアクシャルムーブメント、マスタークロノメーターが搭載されているものや、ロレックスのパラクロムパーツを搭載したモデルなどのムーブメントは、メーカー推奨が10年以内としているので、モデルや使用状況によって変わってくるのですが早くて8年、遅くても10年の周期でオーバーホールに出せば問題ないかと考えております。
やはり最新のオメガとかロレックスは、耐久性が半端ないくらい向上してるので、そう簡単には壊れないという自信を持ってる証拠でしょうね。
というわけで、そう言った例外を外した、腕時計のオーバーホールの周期の話に戻すのですが、3つに分類します。
①月に1回程度しか使わない方
②週に1回使う方(月に4回程度)
③毎日使う方
まず初めに月に1回程度しか使わない方です。
コレクターの方、その腕時計を飾っておくことがメインで、時々楽しむ程度に腕時計を着用される方のパターンですね。
そんな方は、1番良い条件で7年に1回、悪い条件で6年に1回のオーバーホールが必要です。
月に1度というのは、1年間で12回なので毎日時計を着用している人の1ヶ月にも満たない数になります。
よって部品の摩耗などは、ほとんどないですし着用してない分、全ての部品の劣化はほとんど進んでないと言えるでしょう。
私の考えられる1番心配な点は、温度管理です。
ラーメンを食べた後、そのまま放置してたら油が固まるように、温度の上昇と下降を繰り返す環境においていれば、その分時計の中の油も劣化して行きます。
現代の時計の油もかなり品質が向上しているので、そう簡単に切れたり固着したりすることはないと考えられますが、やはり冬から春に変わる時など温度が大きく変わるタイミングは、油が固着してる可能性もあるので初動を丁寧に扱うのが望ましいでしょう。
よって、温度がそこまで変わることがない暗所に保管していれば、7年、そう言った場所においてないのであれば6年で修理に出すのが望ましいと言えるでしょう。
ただしですね、身につけるのは月に1回なんだけど保管はワインディングマシーンでちゃんと回してます。って方もいらっしゃると思います。
ワインダーがどうこうという話は一旦おいておいて、ワインダーで回してる状態ってのは、結局腕につけてないだけで毎日使ってるのと変わりはありません。
よって、こちらはこの後に解説する毎日使う場合の条件のところで、再度解説致します。
次に2つ目の週に1回使う方のパターンを解説します。
これは5年に1度のオーバーホールが必要です。
週1であれば月に1回使う方よりも、4倍の使用頻度になるのですが、その分パーツの摩耗のことを考えないといけません。
そして、その分腕に乗る時間も増えますので、私たちは目には見えていませんが汗が気化したものや外気中のミクロの埃が、ケースと裏蓋の隙間に入っている可能性が上がります。
これを放置してれば、パッキンの劣化が進みますし、パッキンに隙間ができれば次は時計内部にそれらが侵入してきます。
時計を使った後に、時計全体をクロスなどで拭くのが1番理想的ですが、なかなかそこまでするのは面倒だと思いますので、使用頻度、中のパーツの摩耗と劣化を全部ひっくるめて、5年に1度が理想的だと思います。
では最後の、毎日使う方についてのオーバーホールの周期なのですが、これは3年に1回になります。
毎日使っているということは、その分、部品の摩耗は激しいし油ももう切れる寸前だし、汗もミクロの埃にもさらされている状態です。
車もそうなのですが、やはり機械ものは毎日使っていれば2〜3年で、油は切れてしまいますが、毎日動かしているということは、常に一定の条件のもとで動作しているので、油も全体的に満遍なく行きわたってる状態です。
今の潤滑油はそこまで切れることはないと思われますが、それでも3年前の新品の油に比べれば油自体が劣化し酸化し汚れているので、そのまま放置すれば固着の原因になってしまいますし、その固着が別のパーツとの隙間に噛んだら動作しなくなります。
防水時計であれば、パッキンも劣化して目には見えなくても劣化によって、細かな亀裂が入ってることが想定されます。
よって、最低でも3年に1度はオーバーホールが必要です。
逆に言えば毎日使っていたとしても、ちゃんとそれを行っていれば100年は使うことができるのです。
先ほどのワインダーの話に戻るのですが、腕に着用しているかしてないかの違いがあるのですが、気化した汗や埃が入るタイミングはかなり少ないと思われます。
よって、時計は常に動いてる状態ではありますが、月に1回しか着用しないのであれば、5年に1度のオーバーホールで問題ないと考えます。
ではここからはオーバーホールの料金について解説します。
オーバーホールの料金について
ヴィンテージウォッチから比較的新しい腕時計、そのブランドのモデル、民間の修理業者に出すか、正規サポートに出すか、などなどいろんな時計と依頼先があるので、一概にこの金額になります。
という話は出来ないのですが、ロレックスの場合だと大体、6〜12万円前後でヴィンテージになると割高になる印象です。
やはりヴィンテージになると、壊れる恐れのあるパーツは中ば強制的に交換されてしまうので、そのことによって値段が上がってしまいます。
民間に出せば、大体それの2〜3割引のイメージで、大まかはな金額は合うかなぁと思いますね。
オーバーホールについて、大切な話があるのですが、先ほどパーツが壊れてたら交換しないといけない という話をしましたが、使用頻度に応じてちゃんとオーバーホールを行っていないと、オーバーホール代が高額になります。
これは正規サポートだけの話ではなくて、民間の業者に出しても交換しないといけないパーツがある場合は、『ここを交換しないと動かない。』と言われます。
こういったことも結構あるので、定期的にオーバーホールを行っておかないといけません。
では、正規サポートに出すのか、民間に出すのどっちが良いのかを考えてみましょう。
これは個人個人の考え方が大きく影響するので、自分が良いと思ったところに出すのが1番です。
それを踏まえてなのですが、やはり民間の会社に出すメリットは安いことにあります。
安いし、技術力もあれば言うことはありませんし、平均してメーカーに出すよりも半分の納期で帰ってきます。
ですので、メーカーに出せば3ヶ月かかるところが、6週間で帰ってくるようなイメージですね。
ただし、最近ではメーカーが部品を出してないために、交換しないといけない部品が出てきた時は、民間でも修理が出来ないので正規にお願いする必要が出てきます。
正規にお願いする場合は、やはり信頼感と保証書が同封されていることです。
納期は遅くなる場合がほとんどですが、しっかりとメンテナンスしてくれます。
どのブランドも、時計と一緒にここを修理しました。
と言う修理明細書を同封してくれますし、保証期間もあるので安心感があります。
また、ここが大きいところですがその明細書があることで、リセールが強くなります。
モデルによって値段が変わるので、一概にオーバーホール分を相殺するほどの威力があるとは言えませんが、自分の持ってる時計がリセールに強いモデルであれば正規サポートに出す価値はあると思いますね。
あとオメガのマスタークロノメーターや、ロレックスのハイテクムーブなどの新しいものは、精度調整がかなり難しいのでメーカーの工場に出すという選択肢しかありません。
まとめ
最後にまとめなのですが、このようにオーバーホールのことも含めて考えていくと、2年に1回くる車検でさえこれがなかったら!と思うのに、時計の本数が増えれば増えるほど、この周期が来る確率が増えてしまいます。
腕時計は自分が好きなように持っていいのでしょうが、収入に見合った本数を持つことで、ストレスなくより楽しい腕時計との生活を長期に渡って過ごすことが出来ると思いますね。