カルティエの廃盤モデル『プレマスト タンク』ってどんなモデルなの?
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マストタンクってどんなモデル?
マストタンクがどんなモデルなのかが分かっていないと、プレマストタンクに話がつながらないので、先にマストタンクについて簡単に解説します。
まず、マストタンクとはカルティエが1978〜2005年くらいまで展開していた1つのモデルになります。
30年近く生産され続けていたロングヒットモデルであり、廃盤になってすでに20年が経過していますが、今も人気ですし値段が上がり続けているモデルになります。
ここまで人気な理由が、たくさんあるのですが代表的なものをいくつかお話しします。
1.サイズ
現在の腕時計は、どのブランドも全体的にデカイですがマストタンクは1970年代後半に原型が作られているので、その頃はまだケースは巨大化しておらず、ちょうど良いサイズということで、男性女性ともに人気があります。
2.多様な文字盤
30年間生産されてきた歴史の中で、たくさんの文字盤が作られています。
その文字盤のどれもが美しいのですが、それらの文字盤から自分のお気に入りを探し出す楽しみがあります。
3.値段
現在結構値上がりしてしまって、下値が30万くらいからのスタートになってしまったのですが、トータルで考えるとそれでもまだコスパは良いです。
今後も値上がりしていくことが考えられますが、現時点では手が届かない価格ではなく、現実的な値段と言えるでしょう。
4.手軽さと高級感の間
時計のケースは、純銀にヴェルメイユと言って18Kのメッキがコーティングされています。
ステンレスで作られていないので、純銀特有の輝きがありますし、全部が18Kではないのですが、高級感がありつつも手軽に取り扱いができることも人気の理由です。
他にも人気な理由は色々とありますが、カルティエの歴代コレクションの中でも圧倒的に素晴らしいモデルと言えるでしょう。
マストタンクについて、もっと詳細に知りたい方はこちらで解説しておりますので、気になる方はこちらの動画もご覧ください↓
プレマストタンクってどんな時計なの?
そんなマストタンクについてある程度理解できたところで、ここからはプレマストタンクについて解説します。
まず、プレマストタンクとはカルティエ社から発表されたモデル名ではありません。
世間が名付けた名前になります。
英語では「pre」であり、これは「前」や「前に」という意味で使われます。
プレがつく理由なのですが私たちが知っているマストタンクが、一般的に認知されているマストタンクになりますが、その前に原型というか試作品みたいなのが短期間販売されていたんですね。
よって、その試作品モデルのことを『プレマストタンク』っていうんですね。
実際に販売されていた期間の詳細は分からないのですが、現在の数から見て1年程度ではないかと想定されます。
ではこちらの画像をご覧ください。
左側が『プレマストタンク』で右側が『マスト ドゥ タンク』です。
プレマストタンクは、must de の文字がありません。
画像からでは分からないと思われますが、実際に触った感じはプレマストタンクの方が少しだけ厚さがあり、 ケースの形状もマストタンクのように滑らかなエッジではなく、傾斜がありスタイリッシュな印象です。
と言いますのも、ケースの形状が少し違います。
こちらの画像をご覧下さい。
通常のマストタンクの丸みを帯びたケースのプレマストタンクも存在するのですが、私たちが一般的に見るのはこちらのコンコルドタイプのケースだからです。
コンコルドという飛行機があるのですが、この飛行機の特徴は鼻が垂れて胴体がフラットに作られていることです。
プレマストタンクも、ケースの先端が垂れて裏蓋がフラットに作られていることから、プレマストタンクはコンコルドとも言われています。
素材はどちらも素地にスターリングシルバー925を使い、その上から20Mのイエローゴールドのヴェルメイユになります。
では、リューズの方も見てみましょう。
プレマストタンクは、リューズが砲弾の形をしておりどちらかというと、タンク ルイ カルティエのデザインに近いです。
(通常の丸っこいリューズがついてる個体も存在します)
しかしなぜ、こんなに早く生産を終了してしまったのでしょう。
これは私の推測になるのですが、おそらくタンクルイカルティエと似ているので、棲み分けが難しいと判断して、すぐにデザインを修正したのだと考えられます。
では一応、タンクルイとの比較も見てみましょう。
左側がプレマストタンクで、右側が多ンクルイカルティエです。
似てると言われれば似てますが、やはりプレマストタンクのケース形状はコンコルドなので、その後に誕生した通常のマストタンクの方が、タンクルイに似てると思いますね。
(先ほども解説しましたが、プレマストタンクには通常の丸みを帯びたケースのものも存在しますので、コンコルドだけがプレマストの形状だと考えないでください)
アメリカ版とヨーロッパ版のプレマストタンクの違い
カルティエ社は1900年代前半に、ロンドン支店とニューヨーク支店を開設し、それらの支店はそれぞれ、独立した経営が70年代まで続けられていました。
その中でも、アメリカで作られていたとされるカルティエの時計は、少し違っていたようで、カルティエらしさもあればそうでない部分も混在した時計が存在します。
プレマストタンクも、アメリカ版とヨーロッパ版が存在しどちらにも、それぞれの魅力があります。
では、その違いを見ていきましょう。
ヨーロッパ市場向けプレマストタンク
・針が焼きを入れられたブルースチール
・風防はミネラルガラス
・ケース裏面にシリアル番号記載あり
アメリカ市場向けプレマストタンク
・ケースははめ込み式で側面にはネジなし
・針はブラック
・風防がプラスチック
・ケース裏面のブランドロゴが手彫り
・シリアルナンバーはなし
などなどの違いがあります。
では裏蓋を見てみましょう。
裏面に01735のシリアルナンバーの刻印がありますが、その前に『4』と言う数字があります。
この4というのは、リファレンスのことを表しヨーロッパのカルティエのLMサイズであることを証明しています。
プレマストタンクのLMサイズは縦が31mmでケース直径が24mm(リューズを含まない)になります。
ムーブメントは、他のカルティエのモデルにも搭載されていた、Cal.78-1が搭載されています。
まとめ
プレマストタンクは生産が短かったし、残ってる個体も多くないのでまだまだ謎に満ちている部分が多くあります。
しかし、このように過渡期に作られた何とも言えないモデルが存在するからこそ、私たちはもっとカルティエのことを好きになっていくのでしょうね。