オーデマピゲの腕時計はロレックスやオメガと何が違うのか?
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【オーデマ・ピゲの魅力:その歴史と革新の軌跡】
1.1874年~1881年 オーデマ・ピゲの創業期
オーデマ・ピゲは、1874年にスイスのジュー渓谷で誕生しました。
創業者はジュール・ルイ・オーデマとエドワード・オーギュスト・ピゲの2人で、幼なじみだった彼らは若くして時計に関する技術を持ち、時計の製造に情熱を注いでいました。
創業当初は2人は、別々に仕事をしており、オーデマは複雑な時計ムーブメントを製作し、どちらかというと技術面を担当し、ピゲはその時計の最終的な調整をしつ、販売と経営を担当しました。
1874年に2人が共同作業を開始したことで、それぞれの名前を取りオーデマピゲという会社名が正式に決まるのですが、その後もこの分業体制は変わることはなく、高品質の腕時計を作ることだけに拘り続けていました。
そんな2人なのですが、創業当初から他社と一線を画す「複雑機構」を持つ時計に注力していました。
これは、時間や日付を示すだけでなく、さらに高度な機能を備えたものであり、数ある時計メーカーの中でも高度な技術を誇るものです。
例えば、1892年には世界初のミニッツリピーター付きの腕時計を発表し、その後も独自の技術を発展させ、時計業界に新たな価値を提供してきました。
この一番左の腕時計ですね。
ミニッツリピーター搭載の腕時計を世界で初めて世の中に生み出したのは、オーデマピゲです。
ちなみに、現在はオメガの博物館に実物が展示されているそうです。
このミニッツリピーターが、オーデマピゲの成り立ちに最も影響していると思われるので、これだけ詳細に解説しますね。
このミニッツリピーターとは、音で時間を知らせる機構で、持ち主が希望する際にボタンを押すと、その時刻を音で知らせる仕組みです。
5分単位とか15分単位で音で教えてくれる機構なのですが、現代の我々からするとクロノグラフ以上に無駄機能だと思うんですよね。
そもそも何のために音を出すんか?
って思っちゃいますが、これはですが当時の時代背景が影響しています。
現代では電気は当たり前ですが、1890年代とかって夜はロウソクの明かりの時代なんですよね。
それで夜になると、ロウソクのとこに行って時計を出して時間を確認する!
っていう超絶面倒な行動をしていたそうです。
それを15分単位でアラームで教えてくれるということなので、ロウソクつけなくていいわ、時計出さなくていいわでやっぱり当時としてはアイフォンくらいの威力があったと思われますね。
そして、当たり前なのですがこんな腕時計を持ってる人は超絶富裕層です。
時計の歴史は富裕層の歴史と繋がる部分が結構深いのですが、これらの人々に腕時計を納品してきたから今のオーデマの時計作りの良さがあるんですね。
ちなみに当時の超絶富裕層の生活は、あんまりイメージできないと思われますので、ダウントンアビーってドラマをご覧ください。
時計が出てくるのは、ほんと一瞬なのですが当時の貴族の暮らしが、ある程度イメージできるようになると思います。
正直なんでこんな無駄な人がいるの!?
って意味不明な部分が結構ありますが、ちゃんとしっかりご覧になり方はこちらの動画で詳しく解説してますので、興味のある方はご覧くださいませ↓
では話をオーデマに戻しまして、このように創業初期のオーデマ・ピゲは、イオンくらいのお城を持つ超絶パワーを持つ貴族に向けてオーダーメイドの時計製造に特化し、限定された高級モデルを手掛けることで高い評価を得ました。
当時のスイス時計業界はまだ手工業(しゅこうぎょう)が主流であり、オーデマ・ピゲも少数精鋭の職人たちが手作業で生産を行っていました。
その後もオーデマ・ピゲは、2代目や3代目の家族経営によって、ブランドの伝統を守り続けたままの経営が継続されます。
2代目にはポール・ルイ・オーデマとポール・エドワード・ピゲが引き継ぎ、さらに3代目ではジャック・ルイ・オーデマとポーレット・ピゲが重要な役割を果たしました。
こうした家族経営の方針により、オーデマ・ピゲは代々、創業者たちの技術と精神を受け継ぎ、伝統と革新の両方を追求し続けています。
この伝統という部分は結構大切で、また後のパートで詳しく解説しますね。
2. 代表的な複雑機構搭載モデルの紹介
オーデマ・ピゲが長い歴史の中で生み出してきたモデルは、いずれもその技術力と美しいデザインにより多くの時計愛好家たちに愛されてきました。
以下に、オーデマ・ピゲの代表的なモデルについて詳しくご紹介します。
では先ほどの画像をご覧ください。
・1892年 ミニッツリピーター
これは先ほど解説したモデルですね。
1892年 スケルトン懐中時計
スケルトンデザインの時計は、時計の内部構造が透けて見えるデザインであり、機械の複雑さを直接感じられるのが特徴です。
どのブランドも採用していいのでしょうが、このように複雑機構を搭載しているブランドとの相性が最も良いです。
1934年に登場したオーデマ・ピゲのスケルトン懐中時計は、内部の機械を魅せる美しいデザインと高度な技術が評価され、スケルトン時計の先駆けとなりました。
1921年 小型のミニッツリピーター
当時のオーデマピゲは小型化にも力を入れており、直径15.8mmのムーブメントを搭載した世界最小の5分ミニッツリピーターを生み出します。
現代はでかい方が人気がありますが、貴族の考え方は出来るだけスマートに!というのが一番優先される事項だったんですね。
ケース直径でも2.5cm程度ですので、まぁキーホルダー的な感じで扱われてたんかもしれませんね。
1946年 超薄型時計
1946年には、オーデマ・ピゲは世界最薄の腕時計を発表し、その技術力の高さを証明しました。
搭載ムーブメントはCal.9MLであり、その厚さはなんと1.64mmという極薄です。
薄さと精密さを両立させることは非常に難しく、このような技術は時計メーカーにとって一つの挑戦でもありましたが、オーデマ・ピゲはそれを実現しました。
これらの代表モデルは、オーデマ・ピゲが時代のニーズに応じたデザインと技術を提供することで、貴族たちからの高い評価を獲得してきたことを表しているんですね。
3. ロイヤルオークの誕生と時計業界への衝撃
はい、というわけでオーデマピゲに興味がある方は、ここのロイヤルオークからが本番といった所でしょう。
1972年にオーデマ・ピゲが発表した「ロイヤルオーク」は、時計業界に大きなイノベーションをもたらすことになります。
このモデルは、スイスの腕時計デザイナーである、ジェラルド・ジェンタ氏によってデザインされ、世界初の高級スポーツウォッチとして誕生しました。
1972年当時、時計業界は「クォーツショック」に直面していました。
クォーツ時計は、機械式時計に比べて非常に安価であるにも関わらず、精度は圧倒的に正確なために、一般消費者にも手が届きやすく、従来の機械式時計は時代遅れの産物となっていたのです。
そんな中、オーデマ・ピゲは価格競争に陥るのではなく、逆に高価で斬新な時計を提供することで市場に対抗する戦略を打ち出しました。
八角形のベゼルとネジ留め式のケース、そしてステンレススチールを素材としたことで、これまでの高級時計のイメージを覆しました。
この大胆なデザインは、時計業界だけでなくファッション業界にも衝撃を与え、ロイヤルオークは一気に注目を浴びました。
発売当初は、ステンレスであるにも関わらず、高価なことやデザインの独自性、サイズが39mmもあったことから、消費者には受け入れられなかったものの、次第にロイヤルオークの魅力が広まり、熱狂的なファンを獲得していきました。
ではここからは、そんなロイヤルオークの歴代モデルを見ていきましょう。
ロイヤルオークの歴代モデル解説
1972年 Ref.5402 39mm(ジャンボ)
ロイヤルオークジャンボとも言われてます。
ジェラルド・ジェンタがデザインしたロイヤル・オークのファーストモデルは、2年の開発期間を経て、1972年のバーゼルフェアで発表された。
ロイヤル オークの特徴としては、六角形のベゼルと露出したネジが挙げられ、全体のデザインはイギリス軍艦「ロイヤル オーク号」の舷窓をモチーフにデザインされたことは有名な話ですよね。
では次期型です。
1977〜84年 Ref.4100(14100) 35mm
その次に誕生したのが、1977年に次期型であるRef.4100になります。
ケース径は35mmに改められ、当時のスタンダードなサイズになりました。
搭載ムーブメントはCal.2123であり、こちらはジャガールクルト社製のCal.889をベースに作られています。
この時代のラグスポには、結構な割合でジャガールクルトのムーブメントが搭載されていますが、薄型自動巻ムーブメントを作れる会社はジャガールクルトしかなかったからなんですね。
では次期型を見てみましょう。
1990〜1992年 Ref.14700 36mm
Ref.4100の35mmモデルと次期型のRef.14790の過渡期モデルであり、次のモデルのRef.14790のパイロット盤とも捉えていいでしょう。
裏蓋のNo.は328であり、これがRef.14700を表しています。
生産が終了した時期は明確に分からなかったのですが、1992年にRef.14790が誕生したのを見ると1992年に生産が終了したと考えるのが妥当でしょう。
1992〜2005年 Ref.14790ST 36mm
左側:Ref.14700
右側:Ref.14790
このように並べいますが、ほとんど違いがありませんね。
そして、Ref.14790が36mm径の最終モデルとなります。
搭載ムーブメントはCal.2225であり、こちらもジャガールクルト社製cal.889/2をコンバートしたムーブメントでした。
36mm径という枠を埋める為なのか分かりませんが、それに近いサイズの37mm径のRef.15450STに続いていくことになります。
では次に39mm径の、新しいモデルを見てみましょう。
1992〜1996年頃 Ref.14802 39mm (20周年モデルとして1000本限定生産)
初代の39mmの成績があまりよろしくなかったのですが、39mm径のロイヤルオークは新しく誕生します。
それが20周年を記念して作られた、Ref.14802STでありこちらは1000本限定で作られたジュビリーモデルになります。
しかし、こちらも大ヒットするというわけでもなく、1000本を売り切るまで4年間かかったと言われています。
1996〜1999年 Ref.15002 39mm
1996年、オーデマ・ピゲは15002の発表に踏み切りましたが、この年の生産数をわずか70本に留めました。
Ref.15002モデルの特徴は、14802モデルと同じ8.1mm厚のフラットなケースでありながら、5402と同様のステンレスの裏蓋を採用している点でしょう。
2005〜2012年 Ref.15300ST 39mm
このモデルから、ロイヤルオークが本格的に人気になり認知度が上がってきたモデルだと思われます。
時代が段々と大きな時計が人気になってくることによって、ロイヤルオークの39mm径もその候補に上がってきたことが原因です。
20周年モデルとほとんど変わりはないのですが、こちらのモデルには秒針が入っております。
2012〜2022年 Ref.15202 39mm
Ref.15202は、初代のRef.5402を復刻したモデルになります。
名前を『ロイヤル・オーク・ジャンボ・エクストラ シン』と命名され、当時のジャンボというワードが入っています。
また、ムーブメントもRef.5402と同じものが搭載されており、Cal.2121が搭載されています。
ベースとなっているのは、同様にジャガールクルト社で同社のcal.920をコンバートして作られています。
ちなみに、このジャガールクルトのムーブメントなのですがヴァシュロン・コンスタンタン、パテックフィリップにも提供されています。
それほどに、機能性と審美性が実現されたムーブメントだったのです。
こちらのモデルには、前期と後期モデルがあるのですがそれらを解説するとまた長くなってしまうので、また別の機会に解説させて頂きます。
ではここからは、ロイヤルオークの派生系も少しだけ紹介します。
4. ロイヤルオークの進化とその他の展開
ロイヤルオークは、オリジナルモデルの人気に応じて、さまざまなバリエーションを展開してきました。
特に1993年に登場した「ロイヤルオーク オフショア」は、従来のロイヤルオークをさらに大胆にアレンジしたモデルで、よりスポーティでタフな印象が加わり、高い支持を得ました。
現在はクロノグラフバージョンと、ダイバーズバージョンの2種類で展開されています。
さらに、ロイヤルオークには「ロイヤルオーク コンセプト」など、先進的な技術を搭載したモデルも存在します。
このコンセプトシリーズは、最新の技術と独創的なデザインを取り入れた特別モデルであり、オーデマ・ピゲの技術革新への情熱を象徴しています。
ロイヤルオークのこれらのバリエーションは、オリジナルのデザインを受け継ぎつつ、現代の時計市場やファッションのトレンドに対応する形で進化を続けています。
そのため、ロイヤルオークは時代を超えた普遍的な価値を持つ時計として、今もなお人気を集めています。
次がジュールオーデマです。
冒頭で創業者の一人に、ジュールルイオーデマを紹介しましたが、この人に敬意を込めて誕生したモデルです。
このコレクションには、パーペチュアルカレンダーやスケルトン、ミニッツリピーターなど、オーデマ・ピゲの技術力を駆使した高度な複雑機構が搭載されています。
様々なモデルがありますが、その特徴はオーデマ・ピゲの職人によって手作業で仕上げられており、ケースやムーブメントには緻密(ちみつ)な装飾が施されています。
これにより、時計自体が芸術作品のような存在感を持つのも魅力の一つです。
次がバイオーデマピゲです。
「バイ オーデマ ピゲ」シリーズは、2019年に発表されたモデルで比較的新しいシリーズなんですね。
「CODE 11.59」という名前は、オーデマ・ピゲのブランド哲学と未来へのビジョンを表現するために名付けられたものです。
具体的に説明すると
- C(Challenge) - 挑戦すること
- O(Own) - 自己を確立すること
- D(Dare) - 勇敢に進むこと
- E(Evolve) - 進化し続けること
「11.59」という数字には、真夜中の11時59分、つまり「新しい日が始まる1分前」を意味しており、時計業界やオーデマ・ピゲのさらなる進化を表しています。
この命名には、伝統にとらわれず次世代に向けて、常に革新し続けるというブランドの姿勢が込められているんですね。
といった感じで、オーデマピゲについて出来るだけ詳細に解説してきたのですが、パテックもヴァシュロンもそうなのですがこれらのブランドは、単に時間を示す道具ではなく、芸術品や伝統工芸品としての側面を持っています。
よって、オーデマ・ピゲの時計は、所有者にとってステータスや文化の象徴ともなり、時計業界における特別な地位を確立しているのです。
腕時計なんだけど、腕時計以外の価値をもたらしてくれるのが、オーデマピゲであり、貴族を相手にしてきた本物のブランド腕時計ブランドだと言えるでしょう。