腕時計を手放せない方は、本当は何を残そうとしているのか?
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日の動画では「腕時計を手放せない方は、本当は何を残そうとしているのか?」という内容で解説して参ります。
腕時計を何本か所有していると、「最近ほとんど使っていないし、そろそろ売ろうかな」と考える一本が出てくることがありますよね。
実際に売却価格を調べてみる。
次に欲しい腕時計も見つかっている。
冷静に考えれば、使っていない腕時計を手放して、そのお金を次の一本に使った方が合理的です。
それなのに、最後のところで売ることができない。
箱に戻して、しばらくするとまた出して眺めて、「やっぱりこれは残しておこうかな」となる。
こういう経験をしたことがある方って、結構いるんじゃないでしょうか。
ではなぜ、使っていない腕時計なのに手放せないのでしょうか?
単純に高かったからなのか。
将来値上がりするかもしれないからなのか。
もちろん、そういった理由もあると思います。
ただ私は、それだけでは説明できない腕時計もあると思うんですよね。
もしかするとその方が残そうとしているのは、腕時計そのものではないのかもしれません。
というわけで今回は、腕時計を手放せない方は本当は何を残そうとしているのか、ベルモントルの妹尾さんと一緒に見ていきましょう。
使っていない腕時計なのに、なぜ手放せないのか?
まず最初に考えたいのが、使っているかどうかと、手放せるかどうかは必ずしも同じではないということです。
普通に考えれば、物は使っている方が残して、使っていない物から減らしていきますよね。
洋服でも靴でも、何年も使っていなければ、「もういらないかな」と考えやすいと思います。
ところが腕時計の場合、ほとんど着けていないのに残している一本があったりします。
これって面白いですよね。
例えば現在5本持っていて、そのうち実際によく使うのは2本だけだったとします。
残りの3本は、月に一度着けるかどうか。
合理性だけで考えるなら、その3本を売ってしまっても大きく困ることはありません。
でも、「じゃあ今日売りましょう」となると、なかなか決断できない。
私はこれは、その腕時計の価値が「使用頻度」だけでは決まっていないからだと思っています。
例えば、初めて自分で大きなお金を出して購入した腕時計。
仕事がうまくいった時に購入した腕時計。
ずっと探していて、ようやく見つけた腕時計。
あるいは、当時の自分では少し背伸びをして購入した一本。
そういった腕時計って、時間が経つにつれて単なる商品ではなくなっていくんですよね。
腕時計を見ると、
「あの時こういう仕事をしていたな」
「この頃はこんなことで悩んでいたな」
「これを買うために結構頑張ったな」
みたいなことまで一緒に思い出します。
もちろん、腕時計の中にその記憶が保存されているわけではありません。
でも腕時計が、その頃の自分を思い出すきっかけになっている。
だから使っていないからといって、簡単には手放せないんだと思います。
つまりこの段階では、
腕時計を残しているというより、その腕時計と結びついた自分の時間を残している。
ということなんですね。
では次に、なぜ同じモデルをもう一度買えるとしても、手放しにくい腕時計があるのか?という内容で解説して参ります。
本文:約1,150文字
同じモデルを買い直せても「同じ一本」にはならない
次に面白いのが、
「売って後悔したら、また同じモデルを買えばいいじゃないか」
という考え方です。
これは理屈としては間違っていません。
特に市場にある程度流通しているモデルなら、一度売っても同じリファレンスを買い直せる可能性があります。
それでも売れない。
なぜなのか。
これは、モデルとして同じであることと、自分が所有してきた一本であることは別だからだと思います。
例えば同じロレックスのデイトジャストでも、世の中には同じリファレンスが何本も存在します。
同じカルティエのサントスもそうですよね。
でも、自分が5年間使ってきた一本と、今日初めて買った同じモデルでは、自分から見た意味は同じではありません。
いつ購入したのか。
どこで購入したのか。
どんな状態だったのか。
どんな時に着けていたのか。
自分で付けた小さな傷があるかもしれません。
ベルトを交換したことがあるかもしれません。
修理に出したこともあるかもしれません。
そうやって所有していた時間が積み重なると、同じ商品を買い直しても、その時間まで買い戻すことはできないんですよね。
特にヴィンテージ腕時計になると、これはさらに強くなると思います。
同じリファレンスでも、文字盤の状態が違う。
ケースの状態も違う。
針の焼け方も違う。
過去にどこまで修理されているかも違う。
全く同じ個体をもう一度見つけることは、ほぼできません。
だから手放す時には、
「また欲しくなったら買えばいい」
では済まないことがあります。
言い換えると、手放すというのは、
腕時計という商品を売るだけではなく、自分が所有してきたその一本との関係を終わらせること
でもあるんですね。
これが、価格だけでは決められない理由の一つだと思います。
では次に、なぜ購入した時よりも時間が経ってからの方が、手放しにくくなることがあるのか?という内容で解説して参ります。
本文:約1,100文字
腕時計は、所有している時間そのものが価値になることがある
腕時計を購入した直後って、基本的には商品の価値を見ていますよね。
デザインが好き。
ブランドが好き。
ムーブメントが好き。
価格に納得した。
そういった理由で購入します。
でも5年、10年と所有していくと、最初に買った時には存在しなかった価値が後から加わることがあります。
それが、所有した時間です。
例えば100万円で買った腕時計が、現在も中古市場で100万円だったとします。
金額だけ見れば価値は変わっていません。
でも持ち主からすると、購入した時と10年後では、その100万円の腕時計に対する感覚が全く違う可能性があります。
10年間使ってきた。
旅行にも着けていった。
仕事でも使った。
大事な場面でも着けていた。
そうすると、その腕時計に対する価値って、中古相場だけでは測れなくなってきます。
ここで少し面白いのが、腕時計ってずっと見ている物ではないんですよね。
美術品なら部屋に飾って眺めることがあります。
車なら乗っている時に意識します。
でも腕時計は、毎日腕に着けているうちに、段々存在を意識しなくなっていきます。
ところが手放そうとした瞬間に、
「これがなくなるのか」
と初めて気づく。
普段は当たり前にあったものが、なくなると考えた途端に、その存在の大きさが見えてくるんですよ。
だから売却査定に出した時に急に惜しくなる方もいると思います。
金額を見て惜しくなったのではなく、
本当に手元からなくなることを想像して、初めてその一本の意味に気づいた。
ということもあるんじゃないでしょうか。
つまり腕時計には、購入した瞬間に完成する価値と、所有し続けることで後から生まれる価値がある。
これは新品でも中古でもヴィンテージでも同じだと思います。
そして後から生まれた価値というのは、メーカーが定価表に載せることもできないですし、中古店が査定することもできません。
その方にしか分からない価値だからです。
では最後に、腕時計を手放せないことは、本当に悪いことなのか?という内容で解説して参ります。
本文:約1,150文字
腕時計を手放せない方は、本当は何を残そうとしているのか?
ここまで話してくると、
「じゃあ思い出がある腕時計は全部残した方がいいのか?」
となりますよね。
私はそれも違うと思います。
腕時計って、残せば残すほど良いというものではありません。
何十本も所有していて、全部に思い入れがあるから一本も売れないとなると、それはそれで大変です。
新しい腕時計が欲しいのであれば、何かを手放さないといけないこともあります。
だから大事なのは、
手放せない自分を無理に正当化することではなく、「なぜこの一本だけは手放したくないのか?」を考えてみること
だと思うんですよ。
単純に値下がりしているから、損を確定させたくないだけなのか。
将来値上がりすると思っているからなのか。
もう同じ個体が見つからないからなのか。
それとも、その腕時計を見ると自分の過去を思い出すからなのか。
この理由って、全部違いますよね。
そして最後の理由なのであれば、私は無理に売る必要はないと思います。
腕時計を持つ目的って、すべてを効率よくお金に変えることではありませんからね。
例えば中古相場が150万円だったとしても、自分にとって150万円以上の意味があるのであれば、売らないという選択も十分合理的です。
反対に、
「昔は思い入れがあったけど、今はもう特に何も感じないな」
となったのであれば、それは手放すタイミングなのかもしれません。
私は腕時計を何本も見ていると、残る腕時計と残らない腕時計の違いって、購入価格だけではないと思うんですよ。
高かったから残るとも限らない。
希少だから残るとも限らない。
逆に、そこまで高価ではなかった腕時計が、最後まで手元に残ることもあります。
それは、その一本に対して、
「これをなくしたら、腕時計が一本減る」
と感じるのか、
それとも、
「これをなくしたら、自分の何かまで一緒になくなる気がする」
と感じるのか。
この違いなのかもしれません。
なので今回の、
「腕時計を手放せない方は、本当は何を残そうとしているのか?」
という問いへの答えは、
腕時計そのものを残そうとしている場合もありますが、その腕時計と一緒に過ごした時間や、その頃の自分まで残そうとしていることがある。
ということだと思います。
腕時計って面白いもので、買った時には単なる「物」だったものが、長く所有しているうちに少しずつ自分の側へ入ってくるんですよね。
だから腕時計を整理する時には、
「最近着けているか?」
だけではなく、
「これを手放した後、本当に何も失った感じがしないか?」
というところまで考えてみると、残す一本と手放す一本が少し分かりやすくなるかもしれません。
本文:約1,450文字
腕時計というのは本来、値段やブランド名だけでは、その一本が本当に納得できるかどうかは、決まらないんですよね。
その一本が持つ背景まで見えてきたときに、初めて「これだ」と思える自分の一本に出会えるんですよね。
店舗は表参道駅から徒歩2分の場所にあるので、雨の日でもほとんど濡れずにお越し頂けます。
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