なんで300円の腕時計もあれば億越えの高級腕時計が存在するの?
動画で『なんで300円の腕時計もあれば億越えの高級腕時計が存在するの?』をご覧になる方はこちらから↓
安い腕時計と高い腕時計はどのように分割されるのか?
まず初めに、今回の動画の全体像が分かりやすいように、4つに区切ったマトリクス図を作りました。
こちらは前回の動画で使った図なのですが、腕時計の価格の決まり方は大体この4つの複合要因で決まっています。
高級素材を使ってれば高くなるし、ブランド力があれば高くても売れるし、物作りが良ければ高くなるって感じですね。
詳細をご覧になりたい方は、概要欄に入れておりますのでお時間のある際にご覧ください↓
ではもっとイメージしやすいように、今回はここをもうちょっと深ぼってこちらのマトリクス図を見てみましょう。
これは実際にはそうではないと思いますので、1つの例としてご覧ください。
イメージしやすいように、図に落とし込んでいるだけですので。
中央に寄ればよるほど 、4つのパワーを満たしている時計になります。
そして中央に置いてるのが、1960年代に作られたロレックスのデイトナの18Kイエローゴールドモデルです。
本来であれば、ここはパテックフィリップなのですが、一旦分かりやすさを重視して、このように作りました。
素材の方向に伸びているのは、カルティエのダイヤモンドを使った素材のベゼルや、プラチナの素材を使ったモデルです。
ブランド方向に伸びているのは、中心からパテックフィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマピゲの後ろにロレックスとオメガが来ています。
希少性の部分には、カルティエのサントスガルべのバーガンディ文字盤、パテックのRef.3579、ロレックスの初代デイトナです。
物作りの部分とブランドに重なってるのが、先ほど解説した世界3大時計ブランドであり、その先にあるのがエニカというブランドです。
大きな枠組みとして作っているのですが、これは各ブランドの個体モデルで分割するともっと詳細に分かれていきます。
要するに、この要素が1つ入ってるだけでも結構強いのですが、この要素が全部揃った時に1億超えとかの無敵の腕時計になるということなんですね。
また、別に4つが揃ってなくてもそれぞれの分野で突出させればこれまた無敵の腕時計になります。
例えば、ケース土台がプラチナで見えている部分は全部ダイヤモンドとかの大きな時計になれば、1億は突破できるでしょうし、世界に1本しかないブランパンの当時のフィフティファゾムスの未使用品とかがあれば、それも1億を突破出来るでしょう。
そして、逆にこの要素が1つでもはまっていないのであれば、安価な腕時計ということになります。
まずここまでで、何となく高い時計がなんで高いのか?というのが分かって頂けたかと思います。
ではここからはですね、その割合が大きいものを解説してまいります。
安い時計と高い時計ではムーブメントが違う
まず私の考えとして、安い時計がダメで高い時計が良いという考えはありません。
自分の懐事情や、ライフスタイルに沿った腕時計を着用することが、一番正しい選択だと考えております。
それを踏まえた上で話を進めますが、まず安い時計と高い時計はそもそもの時計の作りが違います。
冒頭でデジタル時計とアナログ時計の話をしましたが、500円で腕時計を作るためにはクオーツムーブメントで作らないといけません。
そして、高い時計は必然的に機械式になっていきます。
ではもっと分かりやすいように、図を見てみましょう。
クオーツが一番左側になるのですが、回路とか水晶管とかの話をすると意味不明になると思いますので、とりあえず電池動いてるんだねぇ。
程度で大丈夫です。
クオーツの方がメカトロ感がありますが、クオーツは一度設計が完成してムーブメントが完成してしまえば、それを機械が大量生産してくれます。
基本的には人の手が入る部分というのはなく、人件費もかからないし材料費もかからないために、腕時計の心臓部であるムーブメントの価格は激安で作られています。
こういうメカトロ的な部分は、ご存知の通り日本は最強なのでクオーツも機械式もどちらも得意とするところです。
クオーツはMIYOTAが得意ですし、もちろんSEIKOはクオーツの始祖的なポジションですが、機械式も作れるのでSEIKOもシチズンも最強です。
まずデジタルであれ、アナログであれ安い時計にはこのようにクオーツのムーブメントが搭載されており、それが安さを実現している要因なのです。
ここのパートでは、とりあえずクオーツが入っていれば機械式より安くなるんだねぇ程度の理解で問題ありません。
では次に実際にその違いが発生している事例を見てみましょう。
同モデルでも価格差が出てくる裏付け
同じモデルでも、クオーツが乗ってるか機械式が乗ってるかで価格の差が出てきます。
現行のカルティエだとより分かりやすいのですが、現行ではクオーツと機械式が別モデルで存在していますので、今回はサントスの進化前のサントスガルべで解説していきます。
こちらはどちらも、カルティエのサントスガルべってモデルなのですが、左側がクオーツモデルで右側が自動巻きモデルになります。
ぱっと見は同じに見えると思いますが、デイト表記が6時位置か3時位置にあるかの違いになります。
このように、ぱっと見の印象はほぼ同じなのですが、実際の価格というのは大体20万円の開きが出ています。
クオーツが60万円程度で、自動巻は80万円程度ですね。
ムーブメント以外は、全部同じなのに価格に20万円の開きがあるというのは、自動巻ムーブメントには20万円上乗せされるほどの価値があると言えるでしょう。
ただしこれはまだ大きな差が開いている方ではありません。
というのも、サントスガルべは1980年代に作られているのですが、この頃はまだカルティエは自社でムーブメントを作れなかったので、ETAという会社のムーブメントを乗せています。
ETAというのは、ムーブメントだけを専門に作る会社であり、我々が知るほとんどのブランドは、そこでムーブメントを購入して自社の時計に乗せて販売していました。
まぁ、実際に裏蓋がスケルトンでもなければ、なかなか自分で蓋を開けたりしませんからね。
そういった感じで、汎用ムーブメントが乗っている状態でも20万円の開きがあるのですが、これがパテックフィリップとかになってくると、もっと大きな価格の開きになってきます。
なぜパテックになると、もっと大きな価格差が生まれるかというと、パテックフィリップ社のムーブメントは自社で作られておりそれが装飾入りまくりで、豪華な機械だからです。
こちらはパテックフィリップのRef.2952ですが、搭載ムーブメントは手巻きCal.23-300です。
機械パーツの組み合わせで作られているのですが、これらのパーツのことをブリッジっていいます。
その1つ1つのブリッジに、縦方向のコートトジュネーブの装飾やテンプっていって左下の丸いパーツの下には、ペラルージュって装飾が施してあります。
まずこの装飾が入っていることで、時計なんだけど工芸品的なポジションになっているのです。
だから腕時計は腕時計なのですが、ジャンルは違えど、もう有田焼とかそこら辺の要素も含んでいるからめっちゃ高いんですね。
そしてさらにここから、精度調整が入ります。
ムーブメントに小さく入っているマークなのですが、これがジュネーブシールの刻印です。
これが入ってることで、精度調整めっちゃ整わせていますよ!
という意味が含まれてるんですね。
一般的にはクロノメーターってのは聞いたことあると思うんですが、これは日差許容範囲が4秒~+6秒以内であるのに対して、パテックフィリップが独自で作った規格にジュネーブシールって基準があるのですが、これは日差−3~+2秒とクロノメーターより上の基準が採用されています。
ちなみに2009年から、ジュネーブシールからパテックフィリップ・シールに進化して、内容も精度、ムーブメントおよび外装(ケースや針、プッシャーボタン、ブレスにバックル等々)の品質、仕上げ方法、検査方法、アフターサービスなどといった時計にまつわる全ての水準を最高レベルに仕上げたこと証明するものになっています。
はい、こんな感じで機械式ムーブメントには装飾と、品質チェックを施す部分が結構あるので、その分人件費がかかります。
よって、クオーツを乗せているか、機械式を乗せているかで価格が大きく変わりますし、機械式を乗せていてもそれがどんな作りになってるか(これは汎用ムーブメントか、汎用ムーブメントでも装飾が入ってるか、自社ムーブメントか、自社ムーブメントの中でもどれだけ精度の調整が行われているかなど)でこれまた2段階、3段階、4段階と変わってくるんですね。
そして、なんで1000万円以上もする腕時計をしてる人がいるかというと、ステータス性ってのは少なからずあるのでしょうが、私が思うにものづくりの良さに惹かれて手にされているのだと考えています。
やはり人の手が多く入っているものには、職人技を感じますし、それは何よりも大きな付加価値になります。
丁寧に作られている!というだけで、それは所有する価値があるんですね。
腕時計を知らない人からすれば、1000万円の腕時計という数字だけに目が入ってしまうので、その価値観に理解不能だと思われるでしょうが、その真意は工芸品の要素も含んでいると考えると少しだけ納得できるのはないでしょうか。
とまぁこんな感じで、簡単にムーブメントだけのことを話してきましたが、 腕時計は腕時計だし、別に時間が分かれば良いんです。
って方はクオーツでいいと思いますし、やっぱり機械式のパーツの組み合わさりで動いているのが良いんだよなぁ、って方は機械式を選べば良いのです。
これは人それぞれの価値観ですよね。
ではここからは、ブランドと素材の影響力を見ていきましょう。
腕時計ブランドが自社製ムーブメント搭載と謳いたい理由
先ほどはムーブメントが時計本体の価格に大きな影響を与えることを解説しましたが、その上のステージに行くと次はブランド力が大きな力を持つようになります。
例えばロレックスの人気モデルであれば、ステンレスモデルであっても100万円を超えてきます。
その下の人気モデルであるエアキングでさえも、フルモデルチェンジした際に100万円を超えるようになりました。
しかし、100万円オーバーのステンレスでも誰もが欲しがるのは、それはロレックスというブランドだからです。
我々はロレックスだから転売される。と考えていますが、ロレックスにはそれ相応の品質がありますし、それ相応の技術力があるから誰もが欲しい腕時計になっているのです。
まぁ、実際のところは本当にその時計の実力を理解してる方は少数で、ブランドのネームバリューで買ってる人がほとんどでしょうが。
その反面、カルティエの腕時計のステンレスモデルは、サントスやバロンブルーには100万オーバーがありますが、フランセーズやタンクアメリカンなどのモデルではまだ100万円に乗っていません。
ブレスもステンレスで作られたタンクマストのXLサイズは、まだ85万円で購入できるので、ロレックスと比較すれば安いですよね。
カルティエもここ2〜3年値上げをしてきましたし、これからも値上げをしてい行くのでしょうが、もう来年にはこれらも100万オーバーになることが予想されます。
こんな感じでブランドのパワーがあれば値上げをすることができます。
ちなみにカルティエは、日本ではほとんど知られていませんが、腕時計の販売数はオメガを抜いて世界2位になっていますし、自社でムーブメントを作れるようになっています。
既に、一昔前の宝飾ジュエリーブランドのカルティエではなくなってるんですね。
ですので、ムーブメントも自社製だしその物作りの要素が加わったことで、かなり大きくブランド力を上げていると言えます。
この話の詳細についてはこちらの2つの動画で詳しく解説しておりますので、気になる方はご覧ください↓
このように『ロレックス』『カルティエ』というブランドになってしまうと、もうステンレスの素材で100万円かぁ。
という感じも残るものは残るものの、それを凌駕出来るものづくりを含めたブランド力があるので、ステンレスであっても売れるんですね。
だから、時計ブランドの根本的な課題はいかに物作りを追求して、そこから派生して生まれるブランド力の向上ということになります。
逆説的ではありますが、ブランド力を向上させるためにマニュファクチュールになる必要があると言い換えることも出来ます。
よって一昔前は、自社製ムーブメントを搭載していることが特別で、限られたブランドだけでしか見られなかったのが、今ではまぁまぁ自社製ムーブメント搭載モデルを見かけるようになりました。
腕時計のイメージはほとんどないルイヴィトンでさえも、今となってはマニュファクチュールになっていますしね。
こんな感じで、腕時計各社はブランド力の向上に努めており、もちろん材料費の高騰も影響しているでしょうが、どっちかっていうとエルメスみたいな無敵ブランドになりたいという気持ちがあるんですね。
ではここからは、そんなステンレスモデルにどのように価値を見出すべきかを考えていきましょう。
希少なステンレスは18Kくらいの威力がある?
冒頭から話してきた通り、腕時計の価値というのは1つの要素からではなく1つが突出したり、4つが混ざり合ってその価格になっています。
新品の腕時計であれば、ブランド側がこの値段!
と決めていれば、それはこちら側が変更することができないので、その値段で買わざるを得ませんが、これでこの価格はちょっとなぁ・・・・
と感じる方もいらっしゃると思います。
かといって18Kゴールドの素材も、自分にはちょっと早いような気がするし、やっぱりステンレスのあの硬さがいいんだよなぁ。
と考える方も多いことでしょう。
ここでマトリクス図を展開した時に、ステンレスと相性が良いであろう項目を私になりに解説します。
これは
・物作りの良さ
・希少性
をミックスさせた個体ですね。
ではこちらの画像をご覧ください↓
左側が物作りの良さ、中央が希少性、右側に行けば行くほどブランド力が高いというマトリクス図です。
左下にあるのが、ハミルトンの6Bというモデルで実際にイギリス空軍のパイロットに支給されたモデルです。
軍事というのは、一番分かりやすい物作りの品質だと思うんですよね。
例えば、自衛官が中国製を使ってるって想像ができないじゃないですか。
品質は当たり前ですが、そもそも機械を使って情報を抜きますしね。
イギリス国防省の話に戻すのですが、その時代のイケイケのブランドに腕時計の製作を依頼しており、実は1980年代はSEIKOのGEN1というクロノグラフも採用されています。
GEN1はクオーツなので、ここには載せていませんがこういったミリタリーウォッチという分野が現代でも人気があるのは、その物作りのレベルがハイスペだからなんですね。
ハミルトンは今はそこまで有名ブランドではありませんが、このミリタリーとなればこれまた結構な有名ブランドに入ってくるんですよね。
ハミルトンのミリタリーウォッチの詳細をご覧になりたい方はこちらから↓
そこから右の4つは、アンジェラス、レマニア、モバード、エニカというブランドなのですが、物作りを別方向に見たいに時にはクロノグラフが最も適しています。
エニカはバルジューって言って、クロノグラフの汎用ムーブを作ってる会社のムーブが入っていますが、そもそもバルジューの汎用ムーブの品質はめちゃくちゃ高いんですよね。
そして残りの3つのブランドですが、これらのクロノグラフムーブは自社製が搭載されています。
3針ならまだしも、クロノを自社で設計して製造してるわけなので、どれだけ凄い技術を持っていたかがこれだけで分かるんですよね。
まぁ、9割の方は知らないブランドでしょうし知らないブランドは興味ないと思いますので、ここは端折りますが気になる方は概要欄にそれぞれのブランドの歴史を入れてますので、ご覧くださいませ↓
ここまでが物作りを優先させてステンレスのコスパ最強腕時計の紹介なのですが、ブランド力が足りないので結構安いです。
安いって言ってもアンジェラス以外は100万オーバーですので、新品のステンレス100万モデルと比べたらってことですね。
そして、右側なのですがこっちは現代でもある程度知名度のあるブランドですので、皆様もご存知だと思います。
サントスガルべはさっき紹介したのなのですが、一般的にはコンビが一番多く作られているんですよね。
ですので、オールステンレスの方が珍しくてコンビよりも値段が高いです。
白文字盤のモデルで大体130万円くらいですね。
そして隣がIWCのマーク11なのですが、こちらは先ほど紹介したハミルトンの進化前になりますね。
このIWCのマーク11も結構分かりやすい要素が詰まってるのですが、1つに希少性です。
1950年代から70年代まで作られていたんですが、求める人が多いので結構球数は少ないです。
そこに付随してブランド力ですね。
堅牢な腕時計を作るIECのブランドイメージとミリタリーウォッチの相性は抜群です。
そして、物作りですね。
電子機器に囲まれたコックピットでも磁気帯しないように、軟鉄インナーケースが採用されていますし、IWC社製Cal.89も高品質ムーブメントとして有名です。
しかもなぜかミリタリーウォッチなのに、コートトジュネーブの装飾が入ってたりと、そこまでする必要あったのか?と思わせるほどの物作りの徹底ぶりが感じられます。
3つの要素を全部含んだ代表モデルといえますが、これで大体150万円程度ですね。
IWCの歴史とイギリス国防省で採用されたマーク11については、こちらの2つの動画で詳しく解説しておりますので気になる方はご覧ください↓
そしてその右側2つですが、オーデマピゲのRef.5369とパテックの3579ですがこれらも3つの要素を含んでいるモデルです。
ここはもう多くを語る必要はないので、軽く触れる程度にしますが、元々の物作りが良いですし、ブランド力もあります。
そこに1970年代に作られた廃盤モデル、という付加価値が乗っかってステンレスを採用していたとしても、高額で取引されるようになっています。
オーデマの方は大体100万くらいですが、パテックのほうは190万円程度になりますね。
このように、ステンレスモデルであっても物作りの良さや希少性という別の付加価値を乗っけることで、ありきたりなステンレスの腕時計がグッと特別な腕時計に進化します。
はい、と言った感じで安い時計と引くくらい高い時計の違い、さらに高い時計を細分化して解説して参りましたが、なんとなくそうなってんだねぇ。
ってのが分かっていただけたのではないでしょうか。
ここまで聞いて、それだったら自分は100円ショップの腕時計でいっか。
って考えられるのも、それは正解ですし腕時計の正解というのは自分と自分の価値観によってもたらされるものです。
しっかりした腕時計を手にしたいんだよなぁって考えてある方も、ロレックスがや、オメガが好きならそれで全く問題ないのですが、腕時計って実は奥が深くて今回のようにいろんなモデルが存在します。
そしてそれらを見ていくと、ロレックス、オメガだけの世界だったのがもっと広い世界の中から腕時計を選ぶことができるようになります。
自分はどんな時計を求めてるんだろう・・・・
それを考え直してみるきっかけとなれば私も嬉しく思います。