機械式腕時計壊れやすいパーツはどこ!?【ゼンマイ】【テンプ】【インカブロック】について
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腕時計はたくさんのパーツから構成されていますが、その中でも最も壊れやすい部分の2箇所について解説しますので、腕時計の初心者の方であってもある程度理解して頂けると思います。
大体ここが壊れやすくなってるから、丁寧に扱わないといけないんだねぇ。
って感じでざっくりとした知識を身につけて頂けると幸いです。
腕時計のパーツで最も壊れやすい所1 ゼンマイ
腕時計の動力源となる部分なのですが、腕時計の中にはいろんなパーツがありますが、このゼンマイを巻き上げて解ける力を利用して、すべてのパーツにエネルギーが伝わってきます。
車で例えるとエンジンと言えるでしょう。
ですので、時計が動く時に始まりとなるパーツなんですね。
そんなゼンマイですが、腕時計の中に入ってるパーツの中でも大きい方に分類されますし、鉄の細いプレートですがしっかりと作られています。
ですが、それも毎日毎日巻かれて、それを何年も使用していると伸縮を繰り返すことで金属疲労を起こし、ある日プチっと切れてしまいます。
切れてしまえば、もちろん時計は動かなくなります。
症状はリューズを巻いても空転というかカチカチカチ、とか、チチチチチという巻き上げている感触はなく、巻き上げが重たくなったり、リューズがこれ以上巻けないなぁ。という感触がなくなります。
まぁ、切れてるわけですから回そうと思えばずっと回すことが出来ます。
内部では、ゼンマイが巻き上げられておらず、風車のようにただゼンマイが回転しているだけになってるんですね。
そんな感じで、不具合が発生しやすいゼンマイなのですがメーカーもゼンマイを出していますし、消耗品のパーツであることから市販でも入手することは可能です。
メーカーがパーツを持つ期間は大体が10年程度なので、ヴィンテージウォッチの場合は生産が終了しているのですが、サイズと長さがあっていればいいので、そのモデル専用である必要もなく、互換性がいいのも特徴です。
昔の私のように、時計って壊れてしまったら信じられないくらいの修理代がかかるのではないか。
と、ドキドキしてしまいそうな部分ではありますが、このゼンマイに関して言えば大体1万円前後で交換してくれるはずなので、大きく心配する必要はないでしょう。
時計を修理に出した時に、ゼンマイが切れてなくても交換しましょうか?
と提案がある場合があります。
これは金属製ではあるものの、ゼンマイも伸縮を繰り返すことで伸びが発生するからなんですね。
赤白帽子のゴムを握って帽子を振り回していたら、なんかゴムがすっごく伸びていた・・・・
という経験は誰にもあると思われますが、これはゼンマイでも同じように起きるんですね。
外装からは見えませんし、切れてないのであれば巻き上げることが出来るので故障のように感じられませんが、巻き上げた時に本来であれば100の力を伝達することが出来るのが、伸びてへたったゼンマイであればそれが80とか70とかになってしまいます。
そうなってしまうと、精度にも影響を与えていることが考えられますし、故障の一歩手前なので事前に交換しておくことで、また長く使用することが出来るようになります。
といった感じで、まず1つ目の壊れやすいパーツにゼンマイがあって、ここは消耗品だから、基本的には交換は可能であるということを覚えておきましょう。
ではここからは壊れやすい2つ目のパーツを解説して参ります。
腕時計のパーツで最も壊れやすい所2 テンプ
次に紹介するパーツはテンプです。
普段オーバーホールをお願いしている工房からテンプについての連絡がありました。
こちらが実際のメールの内容になります。
メールの内容でもありますが、このテンプというパーツは腕時計の中でも心臓部分に位置するパーツで、とても重要なパーツになります。
ではその折れたテンプを見てみましょう。
こちらが実際に送られてきた写真なのですが、写真を見たときに右側わのテンプの芯(先端)が折れているのが分かりますよね。
ゼンマイから伝わってくる力をアンクルで受け、その反復運動の調整と制御を行なうパーツです。
ちょっと何言ってるか分からないです。
って状態だと思いますので、動画を見てみましょう。
ゼンマイが解けている時に、その力がアンクルっていうクワガタみたいなパーツに伝わって、それがテンプを動かして、次にガンギ車が・・・と話を進めると意味不明になるので、一旦ここではテンプは右にも左にも常に動きまくってるんだねぇ。
って思えておけば大丈夫です。
ご覧頂いた画像は、超拡大している画像なので細さが伝わりませんが、天芯(テンプの先端ですね)の直径は0.1mmです。
成人男性の髪の毛の平均的な直径が0.1mmらしいので、それくらいの細さというイメージが分かりやすいと思いますね。
テンプはそのパーツの性質上、心臓みたいに動きまくるので可能な限り摩擦を0にしないといけません。
直径が太ければ、摩擦も増えるしこんなコミカルな動きも出来ませんので、極限まで細める必要があるんですね。
しかもその上にテン輪、ヒゲゼンマイが乗ってるわけですから、めっちゃ脆弱です。
例え天芯が金属で作ってあったとしても、人間の手で超簡単におることが出来ます。
なんせ0.1mmですからね。
これはどれだけ、腕時計の外装をガチガチに固めてても、外部からの大きな衝撃が加われば天芯は折れてしまいます。
天芯が折れると、天芯を交換するしない限り時計はもう動きません。
こういった理由から、まず1つ目の壊れやすいパーツして天芯が上げられ、腕時計に強い衝撃を与えてはいけないと言われる理由は、そこにあったんですね。
ただしですね、衝撃が加わっただけで天芯が折れていては、腕時計は使い物にならないわけですよ。
ロレックスやオメガやロンジンなどなどの会社は、腕時計の歴史の中で、この天芯が折れないようにするためにはどうすればいいのか?
というのを考えに考えまくった結果、最強の部品である『インカブロック』を生み出します。
セイコーのディアショックとかシチズンのパラショックがありますが、同じものと捉えて大丈夫です。
ではここからは、その天芯を守るために生み出されたアイアンマンの心臓みたいな『インカブロック』を見ていきましょう。
インカブロックはこの部分にあるのですが、腕時計のムーブメントの写真を見る機会がある方は、ここがインカブロックなんだね!
って覚えておいてください。
アイアンマンの心臓みたいになってるので、覚えやすいし分かりやすいと思います。
構造を見てみましょう。
一番左にあるのが、インカブロックの完成形で、インカブロックを構成しているのは2つの赤い石(軸受)、赤い石を保護するシルバーのフレーム、赤い石を上から抑えるためのゴールドのバネによって作られています。
この下にテンプがあるという事ですね。
ではもっと分かりやすいように、実際に衝撃が加わった時の様子を見てみましょう。
1.衝撃が加わった時に天芯が動きます。
2.インカブロックがなければ、天芯の逃げ場はなくそのまま折れてしまいます。
3.インカブロックがあることで、2つの赤い石(軸受)が天芯を守りバネがあることでエネルギーは放出されます。
4.よって天芯に衝撃が伝わらず折れない。
という流れになるんですね。
今作られている時計には、全てにインカブロックが採用されているので、よほど大きな衝撃が加わらない限り、天芯が折れることはありません。
ですが、ヴィンテージウォッチになると(大体1980年代より前のドレスウォッチ)はインカは入っていません。
ドレスウォッチですので、そもそもが衝撃が加わることを想定して設計されてませんからね。
ちなみに、インカが搭載されてない場合のテンプの軸石の部分はこのようになっております。
こちらは1950年代に製造された、ジャガールクルトのドレスウォッチのムーブメントなのですが、テンプの部分にゴールドのパーツであるバネがありませんよね。
ここでそれがインカかそうでないかが、すぐに分かるようになっています。
といった感じで、2つのパーツについて解説して参りましたが、有形物なので一生どこも壊れないということはまずあり得ません。
今日紹介したパーツ以外にも、リューズの部分は壊れやすいですし、不良はつきものです。
ただし、なんとなくでもいいので壊れるものだよねぇって考えを持っていたり、壊れやすいパーツが分かっていれば、修理をする際にもまぁこんだけ使ってたんだから仕方ないよねぇ。
と納得することが出来ます。
時計を使用していれば、どこかが壊れるのは当たり前であって 壊れた時にそれを放置せずに、まずはどこかの時計屋さんに持っていくことで、引き出しの奥に放置されたり、時計への愛着が時間と共になくなってしまうのを防ぐことが出来ます。