ヴァシュロン・コンスタンタンのムーヴメントに記載されている刻印は何を意味しているのか?
ヴァシュロン・コンスタンタンのムーヴメントに記載されている刻印は何を意味しているのか?
こちらの腕時計は、1990年代のヴァシュロンコンスタンタンから発売されたリールというモデルの3針の腕時計です。
そのリールに搭載されているムーブメントはCal.1014/2であり、これはジャガールクルトのCal.818がベースにあります。
そんなヴァシュロン社製ムーブメントを見てみると、いろいろな刻印が入っていますのでそれを一緒に見ていきましょう。
ではこちらの画像をご覧ください⬇️

では12時位置から3時位置に向かって、それぞれ記載されている刻印の意味を解説していきます。
まず12時位置には、1014/2がありますがこれがキャリバーNoを表しています。

その下の「TWENTY-ONE (21) JEWELS」という刻印は、
このムーブメントに21石のルビー(軸受け)が使われていることを示しています。
この軸受はどの部分かと言いますと、ムーブメント全体に見えているワインレッドの石のことです。
これらは基本的には人工で作られたものが備えられていますが、それが21個あるという意味です。
では、このルビーはどこで使用されるかと言いますと、
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歯車の軸受け
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ガンギ車、アンクル
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テンプの両端(耐震装置含む)など
に使用されており、巻き上げ機構(これは歯車ですね)の要所に軸受を配置することで、摩耗防止や精度安定を実現しています。
では次に3時位置を見てみましょう。
いろんな英語が羅列されていますが、これは3つの文章に分割できます。
上から順番に解説していきます。
• ADJUSTED TO HEAT COLD(アドジャステッドトゥヒートコールド)
日本語に直すと調整状態(高精度調整がなされた証です)
→ 「温度変化(高温・低温)に対して調整済み」
温度により金属が膨張・収縮し精度に影響を及ぼすことを補正しています。
では次ですね。
• ISOCHRONISM(アイソクロノス)
日本語に直すと等時性ですね。
→ 「(いかなる残りのゼンマイ巻き量でも同じ振り幅で動作するように調整済み)」という意味になります。
これを簡単に解説します。
ゼンマイは巻き始めが最もトルク(力)が強く、ほどけていくに従ってトルクが弱くなっていきます。
これにより、放っておくと振り角が減り、進みすぎたり遅れたりといった精度のブレが生じます。
なので、ゼンマイのトルク変化をどれだけ「平準化」できるかが、正確な時刻を作り出すポイントになります。
分かりやすく言うと、自転車はスピードが出ていれば安定しますよね。
でも、人が歩くくらいの速さであれば、その体制を維持することが難しくなるのはイメージ出来ることでしょう。
これと同じで、ゼンマイのトルクが解け切る直前というのは、自転車をかなりゆっくり走らせている状態なので、精度が落ちます。
だから、そこに安定的にパワーを伝えることができるように、ジャイロマックステンプが採用されているんですね。
では次ですね。
• AND FIVE POSITIONS(アンド ファイブ ポジションズ)
→日本語に直すと5姿勢で調整済みという意味ですね。
腕時計は日常で様々な姿勢(縦置き、横置き、文字盤上、リューズ上など)になります。
各姿勢で精度を保つために5つのポジションで歩度調整が施されているから、どの姿勢になっても精度が狂わないということです。
これを実現するのは、技術力が必要ですし、試験も通過させないといけないので、これが入っていると言うことは、高級ムーブメントであると言う意味にも繋がっているんですね。
これらをまとめると、この刻印は、「このムーブメントが温度変化、等時性、5姿勢において高精度に調整されており、ジュネーブ製の高級機械式ムーブメントである」ことを意味しています。
ヴァシュロン社の時計なので、ムーブメントも素晴らしいことは理解してても、このように記載されていると、素晴らしいムーブメントなんだなぁ・・・と言うのが改めて分かりますよね。