パテックフィリップ エリプス18Kホワイトゴールド Ref.3577 ブレス一体型の魅力解説
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1970年代を象徴する薄型の楕円ケースと一体ブレスレットが特徴で、いわゆる“静かに格好いい”一本です。
現行の自動巻エリプスとは出自が異なり、手巻きの超薄ムーブを載せたドレス寄りの設計が魅力です。
まずは何者か、どんな装着感か、どこを見て個体差を判断すべきか。
これらを順番にお話しします。
エリプス Ref.3577はどんなモデル?

Ref.3577は、エリプスの中でも手巻き・超薄・一体ブレスという文法でまとめられたバリエーションです。
サイズは26mm × 34mmの楕円ケースに、細やかなコマ構成の18金ホワイトゴールドブレスが一体化します。
もちろん、ケースも18Kです。
文字盤は、サンバーストのブルーにアプライドのバーインデックスが王道で、控えめな光の反射が手首の曲面で上品に逃げるのが持ち味です。
真骨頂は“横顔”だといえるでしょう。
ベゼルとケースの段差が小さく、裏蓋までのテーパーが滑らかなため、袖口への干渉が少なく面の立ち方も柔らかい印象になります。
数値上は小ぶりでも、34mm側の長辺が視覚的な“縦”として効き、存在感は想像より一段上に出ます。
純正ブレスはコマひとつひとつが薄く、楕円ケースから自然に流れる設計です。
ブレスも相まって、存在感は結構ありますよね✨
では次に、ムーブメントについての解説です。
Cal.175ムーブメントについて

Ref.3577に搭載されているムーブメントはCal.175であり、これは1970年代のパテックを象徴する超薄型の手巻き2針ムーブメントです。
厚さは1.8mm、直径は約9リーニュ(約20.8mm)、18石で18,000振動/時の穏やかなロービートという設計が、エリプス特有の薄いケースと一体ブレスの“横顔の美しさ”を成立させています。
ですが、このムーブメントはパテックフィリップが作ったものではなく、ベースムーブメントはフレデリックピゲ社製のものです。
ベースムーブメントはCal.21であり、それをパテックがブリッジの面取りやコート・ド・ジュネーブ、鏡面の仕上げを施してCal.175ムーブメントになっています。
性能面では、パテックが特許を取得したGyromaxテンプの採用などで自社らしい精度・美観を備えています。
現在の自動巻エリプスとは思想が異なり、巻き味や秒針の静けさを含めた“静的な上質感”が魅力ですね。
実用面では、極薄ゆえに香箱や受けの扱いに繊細さが必要で、整備は経験豊富な工房に任せるのが安全です。
Cal.175は同時代の角型・楕円型ドレスにも搭載された実績のあるムーブで、Ref.3577では“薄さ最優先”の魅力を最大化します。
ブルー文字盤の作られ方

Ref.3577の“青”は、絵の具の色ではなく薄膜の光学効果で出す青です。
工程はおおむね次の流れになります。
まず文字盤の地板(多くは真鍮で作られています)を打ち抜き、センターを基点にサンレイ研磨で放射状の筋目を切ります。
土台の時点でサンレイの模様が入ってることが重要なので、覚えておいてください。
つづいて真空蒸着でコバルト系の極薄膜を蒸着します。
このコバルトの色は透明です。
PVDとかってワードは腕時計を見ていけば、どこかで目にしたことがあると思いますが、これは蒸着のことですね。
この膜厚が数十〜数百ナノメートル単位で制御され、光が表面と膜内部で反射・干渉することで深いブルーが見えます。
つまり“青い塗料”ではなく、反射によって青く見えるのです。
なんで透明のはずのコバルトが青く見えるのかと言いますと、光が屈折する時には他にも黄色や赤系の色が出ています。
虹も光の屈折の原理で7色が見えますよね。
コバルトは、そのブルーの色だけを拾って反射するから、パテックのブルーの文字盤は青に見えるし、光の吸収量と反射量の違いから濃紺から青というグラデーションが発生するんですね。
蒸着後は薄い透明ラッカーで保護し、低温で焼き付けて艶と耐候性を与えます。
そのうえにロゴや目盛りを極薄のパッド印刷で載せ、インデックス(アプライドのバー)を土台に植字します。
ブルーは厚塗り塗装でなく繊細な薄膜だからこそ、正しい作りの個体は光の質が一段違い、袖口の動きで表情が豊かに変わります。
ちなみに、このパテックのブルー系の文字盤は土台の真鍮やゴールドが剥き出しになり、かっこいい感じの模様が出現する個体が多いんですが、これは極薄膜で作ってることが理由なんですね。
極薄膜のコバルトの上から、透明ラッカーで保護したとしても、やはり経年の変化に耐えれるくらいの厚さではないということですよ。
でもあのゴールドの模様が出てくる個体も、めっちゃかっこいいからあれはあれでヴィンテージの楽しみ方の1つですよね。
では次にブレスレットについて見ていきましょう。
ジャン・ピエール・エコフィが製作するブレスレット
ブレスレットの部分ですが、これはパテックフィリップが製作したものではありません。
それはどこから分かるかと言いますと、ブレスに入ってる刻印です。
ではこちらの画像をご覧ください⬇️

JPEという刻印が入ってるのが分かると思いますが、これはジャンピエール・エコフィの頭文字から来ているJPEであり、ここから判別することが出来ます。
ジャンピエール・エコフィは、1970〜90年代にかけてパテック フィリップへ金無垢ブレスレットを供給したスイス・ジュネーブの名工房です。
エリプスをはじめとするドレス系に多く見られる“薄く、しなやかで、面の整った”一体型ブレスは、この工房の仕事を象徴しています。
コマは中空ではなく実材をベースに極薄で仕上げられ、サテン下げの部分と鏡面仕上げの部分で陰影を作り出す設計が特徴です。

そのため、仕上げは全面の細かいサテンとコマ側面の光沢をきれいに切り分け、光が流れるように見えるのが美点です。
エコフィのブレスレットは、手首周りあり気で製作されているので、コマによって長さを調整することは出来ません。
今回のは18cmの手首周りで作られているため、それくらいの方であればピッタリと収まってくれるはずですね。
もちろん、ブレスカッターってのがありますので、それを使ってブレスを短くすることも可能です。
現代にもパテックはブレス一体型を復活させましたが、一時期は消えてしまった職人技です。
ヴィンテージのパテックを見た時に、このブレスの部分だけを見てをヘッドと同等の価値があると私は考えております。
実機着用レビュー
エコフィが作ったブレスってのを知ってるので、最初からこの時計を狙って仕入れています。
前回の横広のエリプスのも同じブレスだったのですが、このブレスが良いところは貴金属ブレスなのに、上品に収まるところなんですね。
今回のはホワイトゴールドですので、当然落ち着いているのですが、真骨頂はこのブレスを手にした時のしなやかさでしょう。
貴金属ブレスでありながら、ここまでしなやかに動いてくれることで、元々もステンレスより柔らかな素材の18Kゴールドさらに手首にフィットします。
このフィット感は、ステンや革ベルトとはまた違った別の感触であれば、どれだけ着用してても、不快感が出ません。
ホワイトゴールドにブルーの文字盤というこっちはこっちで、黄金比の配色です。
ホワイトゴールドの落ち着きに対して、陰影が美しいブルーの文字盤は上品でありながらも、ブルーが際立ち物足りなさを感じさせません。
芸術性が高く、まさに持ち歩く工芸品という表現が正しいでしょうね。
これを身につけているだけで、自分の自信にも繋がりますし、嫌味がなく相手にも造りの良さを伝えることが出来ます。
いま選ぶ理由
現行のエリプス(自動巻・現行ブレス)とくらべると、Ref.3577は薄さ・一体ブレス・手巻きという“70年代の美意識”が凝縮されています。
新品では得難い雰囲気を“作りで選ぶ”楽しさがあり、“横顔の美学”がここ最近見直されているミニマルな装いに合うことが、改めて評価される理由です。
Ref.3577は、数字以上の存在感と、薄さが生む品の良さを併せ持つ“静かな主役”です。
1970年代の超薄手巻きと一体ブレスがつくる横顔は、現行にはない味わいです。
最後まで動画を見てくださる方は、きっと**“丁寧に腕時計を選びたい”**方だと思っています。
もし今、どの時計がいいか迷っていて、せっかくならベルモントルで!と思っていただけたら、まずはご相談ください。
あなた様の手首と使い方に合う一本を、一緒に見つけていけたら嬉しいです。
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