パテックフィリップ『エリプス』のブルー文字盤の真価
Ref.3577のようなパテック・フィリップ エリプスのブルー文字盤は、当時のパテック独自の特殊製法によって仕上げられています。
これは非常に手間のかかる工程で、1970年代のエリプスに見られる「独特の深みのあるブルー」は、以下のステップで生み出されています。
1. ゴールドプレートベースの採用
エリプスの文字盤は真鍮ではなく、18Kゴールドプレートをベースに作られています。
まず、このゴールドプレートに対して下地処理を行い、発色をより均一にするための非常に細かいサンディングと研磨が施されます。
2. コバルトを使った真空蒸着(PVDに近い工程)
ブルーの美しい発色は、コバルト系金属を高温で蒸発させて文字盤表面に真空蒸着することで実現しています。
パテックでは1970年代当時、この手法を独自に採用しており、当時としては極めて先進的でした。
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プロセスの特徴
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蒸発したコバルトを極薄で均一に堆積
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角度によって色合いが変化する奥行きのあるブルーを実現
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光の反射率を計算し、独特のグラデーションを意図的に演出
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この技術によって、Ref.3577やRef.3580など同時期のエリプスは「光の当たり方で深みが増すブルー文字盤」として非常に高い評価を得ています。
3. 保護層としてのクリアラッカー仕上げ
蒸着したブルー層の上には、さらに透明ラッカーを重ねることで、酸化や変色を防止しています。
これにより、50年以上経った現在でも発色を保っている個体が多いのが特徴です。
4. ブルーの個体差とヴィンテージの価値
この真空蒸着は非常に繊細な工程であったため、当時の環境条件や蒸着時間、温度差などでわずかな個体差が生じます。
そのため、同じRef.3577であっても、深いロイヤルブルーから、明るいスカイブルー寄りまで幅があります。
この個体差こそがヴィンテージ市場での価値をさらに高めています。
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コバルト蒸着の技術的な背景
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同時代のRef.3580やRef.3738との発色比較
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現代のパテック製法との違い