3針&クロノグラフの全方位戦略が強すぎるスウォッチの『ETA』とマニュファクチュールブレゲいうムーブメント
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日の動画では『3針&クロノグラフの全方位戦略が強すぎるETAというムーブメント』という内容で解説して参ります。
時計を少し勉強していくと、ETAという時計ブランドに出会うのですがそのETAという会社は、一昔前はETAポンとか言われてディスられていましたが、ETAは私が見る限り最強です。
ムーブメントの構造とかは解説せずに、買収しまくって年を追うごとに、最強になっていくETAの歴史を解説する動画になっているので、どれだけ凄いのかを解説する動画になっております。
ですので、ムーブメントの話意味分かんねぇんだよなぁ。って方もですが、話を聞いていればなんとなく、それめっちゃ凄いね!
ってのが分かって頂けると思いますので、是非とも最後までお付き合いくださいませ。
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それでは早速やって参りましょう!
ETAという会社
ざっくり解説すると、ETAという会社はスウォッチグループっていってオメガをリーダーに、ロンジン、ブランパン、ブレゲなどを保有するコングロマリットです。
そして、ETAもスウォッチグループに種族しており、ETAの会社のポジションはそれらの会社にムーブメントを提供するという感じです。
よって、全てではありませんがスウォッチグループの腕時計には、ETA社のムーブメントが載っていますし、何かしらの形でETA社と関係しています。
ただし、これは2020年以降の話であり、1990年代は機械式腕時計の90%程度のシェアを握っていました。
なぜ腕時計ブランドでもないのに、ETAにある程度知名度があるかっていうと冒頭で触れた通り、ETAポンとかディスられたりしたことも影響していますが、やはりその普及率がかなり大きいところでしょう。
なんだかんだ言って、1990年代には90%くらいのシェアを持っていたわけですから、大体どのブランドにも搭載されていたわけです。
現在の感覚で言うと、アップルじゃないスマホって感じですね。
スマホっていろんなブランドが出していますが、アップル以外のスマホは中に乗ってるOSはアンドロイドじゃないですか。
それの腕時計バージョンって考えると分かりやすいでしょうね。
現在は原則スウォッチグループだけの提供になっていますが、その辺については次のパートで解説しますね。
こんな感じで、ETAは一時期は腕時計のOS的なポジションを握っていたんです。
そもそもの創業の1932年と約100年前であり、スイスの時計が分業体制で時計作りをしていた頃から存在している、歴史のある会社です。
この話をするとちょっと意味不明になると思うのですが、出来るだけ分かりやすく解説するので、なんとなく聞いてください。
このETAという会社は、元々はETERNAというブランドのムーブメント製作部門の会社でした。
超マニアックブランドなので、ほとんどの人は知らないと思うのですが、昔はめっちゃ強かったブランドなんですね。
ちなみにヴィンテージ市場では、ダイバーのコンチキやクロノグラフは高額で取引されます。
エテルナマチックとかは聞いたことあるかもしれませんが、ムーブメント本体とローターの間にボールベアリングを入れて、摩耗を減らすようにしたりとか画期的な技術を生み出した会社です。
フォンテンメロンとかアドルフシールドの話をすると、意味不明になってしまうので、ここでは割愛しますが、そんな感じで1930年代の時点で、3針時計のムーブメントでは結構技術力を持ってる会社でした。
もっと詳しく知りたい方は、こちらのエテルナの動画で解説してますのが、概要欄からご覧ください↓
まずはここまでが、ETA社がスウォッチに買収される前の状態ですね。
では次に、クロノグラフの最強ブランド2社のお話をします。
クロノグラフムーブ最強ブランド『ヴィーナス&バルジュー』
普通の3針時計の3倍で構成されているクロノグラフなのですが、ロレックス、オメガ、ジャガールクルト、などのブランドは全部自社開発出来ていません。
ちなみに、今となっては無くなってしまったブランドにアンジェラスやモバード、ユニバーサルジュネーブなどは、自社でそれを開発していたので凄い技術を持っていたと言えるでしょう。
ちなみに、現存する会社ではロンジンが自社でクロノムーブを作れていました。
ロレックスが2000年に自社開発したものを誕生させましたが、まだ25年前でありそれがいかに難しいのか?
というのが分かります。
といった感じで、設計、開発に物凄い時間とお金がかかるので、ほとんどの会社は自社ではクロノグラフムーブを作らず、エボーシュって言ってムーブメントだけを専門に作るブランドから買って、それを自社の時計に搭載させて販売していました。
じゃあ、その代表的なエボーシュはどこかというと『ヴィーナス』と『バルジュー』という会社です。
ヴィーナスという会社は、ほぼブライトリング専用会社みたいな感じになってるのですが、無名ブランドに搭載されるなど、確実に実力のあったブランドです。
バルジュー社のムーブメントは、オメガ、ロレックス、ジャガールクルト、パテックフィリップなどでも採用されており、多くのブランドで搭載されていました。
まぁ、パテックがバルジュー社のムーブメントを採用しているだけで、いかに凄いムーブなのかが分かりますよね。
そんな2社なのですが、1960年代になるとスイスの人件費の高騰でヴィーナス社が倒産することとなり、それをバルジューが買収する形で1つの巨大クロノグラフエボーシュが誕生するのでした。
そして、大体今のクロノグラフのムーブメントの基礎設計というのは、このバルジュー社が設計したものがベースになっているものがほとんどです。
では実際のムーブメントを見てみましょう。
3針時計と比較すれば、かなり複雑になっていますし、多くのパーツで作り上げられているのが分かりますよね。
元々のムーブメントには、これらの装飾は施されておらず各々のブランドで一度パーツをバラして、装飾を加えてまた組み立てるというのをやっていました。
そして、こちらが実際に搭載させていたクロノグラフなのですが、いろんなブランドが採用していたのが分かりますよね。
バルジューCal.72を搭載しているクロノグラフ
そして、こちらがバルジュー社製Cal.23をベースにパテックフィリップがチューニングを行っているムーブメントです。
この見えない部分に、どれだけの手間と装飾を加えるかで価格が大きく変わりますし、この手間をかけることができるブランドが高級ブランドたる所以なんですね。
そんなバルジュー社なのですが、この会社もクオーツショックの大きな煽りを受けて、1983年に倒産するところをETAが買収したという流れになります。
ではここからは、現在ではマニュファクチュールブレゲという会社について解説して参ります。
別ルートで存在するレマニアという会社
先ほど解説した2社は、どんなブランドにも乗せれるように汎用性が意識されているのに対して、レマニアのムーブメントは堅牢に作られているので、どちらかというと民間人が使うためのものではありませんでした。
メインはミリタリーウォッチに搭載させるクロノグラフムーブって感じですね。
自社ブランドとして、イギリス国防省に納品していた他にも、有名どころで言えばSINNがレマニアのキャリバーを搭載させています。
またバルジューと同様に、パテックフィリップもクロノグラフはレマニアを採用しており、こちらも品質が認められているブランドなのです。
では実際のムーブメントを見てみましょう。
こちらはパテックフィリップのクロノグラフRef.5070なのですが、ベースムーブメントはレマニア社製手巻きCal.2310をベースにチューニングを行ってから自社のクロノグラフに搭載させています。
ちなみに、こちらのムーブメントはヴァシュロンでも採用されています。
元々SIHHにいたので、オメガとの関わりも強いですし、1940〜50年代に作られているオメガのスピードマスターやクロノグラフにはレマニアのムーブが入っています。
写真は一般に販売されていたクロノグラフですが、スピードマスターにもこのクロノグラフが載っていましたし、現行クロノグラフも基本設計はこのレマニア社のものになります。
そんなレマニア社なのですが、元々は1932年にスウォッチの進化前のSIHHに種族していたのですが、1981年にブレゲに買収されてその時に、レマニアからヌーベルレマニアに名前が変更となります。
そしてさらに、ブレゲはリシュモンの進化前のヴァンドームグループに買収されることになります。
その後また、スウォッチに買収されて2007年にブレゲの専属ムーブメント会社『ヌーベルレマニア』として存続しているのです。
こんな感じで、またスウォッチグループに戻ってきた訳ですがここまでの技術力があるのに、それを手放したリシュモンはもったいないことをしてるなぁ・・・って思いますよね。
このように、スウォッチには3針ムーブにETAがあり、クロノグラフムーブにはヴィーナスを買収したバルジュー、ブレゲの下にレマニアがありそれをETAが全部買収するという最強のムーブメント会社が誕生するでした。
こうやって見てみると、スウォッチのムーブメントは方向性は違うものの、ロレックスやパテックと比較して、歴史、技術力は圧倒してると言えるでしょうね。
だから本来であれば、ブレゲとかはもっと評価されるべきでしょうが、ここはマーケティングの問題なんでしょうね。
このクロノグラフの動き方については、こちらの動画で詳しく解説しておりますので興味のある方はこちらの動画もご覧ください↓
2010年ETAムーブメント供給停止宣言
最初の項目で話した通り、ETAは現在ではスウォッチグループにしはムーブメントを供給していません。
2010年にムーブメントの供給を停止すると言って、実際に実行されたのが2020年なので10年のラグがあるのですが、これは市場がETAを求めなくなったのではなく、スウォッチを含むETAが自分から言い出したことなのです。
1990年代には90%のシェアを握っていたETAですが、なぜ自分からシェアを狭めるようなことをしたのでしょうか?
それは時代の流れとETAの気持ちが影響しています。
1990年代に入ると、クオーツショックが落ち着き、だんだんと機械式時計が見直されることになります。
そして、再度機械式時計が復興するタイミングで、さまざまな会社が自社製ムーブメントを載せれいる腕時計こそが正義である!
的なマーケティングを行った結果、市場もそれに乗っかることとなり、自社製ムーブメントを搭載しているモデル=良い時計という構図が生まれるようになります。
とは言っても、パテックやロレックスであればその辺はカバー出来ても、ほとんどのブランドはそんなことは出来ないので、やはりETAのムーブメントに頼ることになります。
これが問題なんですね。
ではじっくりとその内情を見てみましょう。
ETAはムーブメントのデパートなので、各ブランドはETAでムーブメントを購入して自社でチューニングを行い、自社製ムーブメント搭載モデルとして市場に送り出す。
これが自社でムーブを開発出来ないブランドの成功戦略でした。
ETAのを乗せてます。とか言ったら、またETAポンとか言われてしまいますからね。
ただし、ETAはこれを良い気持ちでは見ていなかったのです。
ETAの気持ちとしては、そもそも私たちが作ってるこの安いムーブメントは、研究と開発に時間と莫大なお金をかけて作っているんだけど、なんでETAのムーブメントを乗せてる!って言わずに、自社製とか謳ってるの?
自分たちは、ムーブメントの開発する時間もお金もかけずに、広告宣伝費に莫大なお金をかけてズルくない?
ちゃんとETAのムーブを乗せてるって言ってないから、もうムーブメントの提供をしないから。
ざっくりいうとこんな感じですね。
ETAの気持ち的には、自分たちは広告をバンバン売ってそこにお金使って、しかもムーブメントは自社製です!
って謳ってるのが、快く思わなかったわけですよ。
そこで2010年にムーブメント供給停止宣言をして、10年の猶予を与えてから2020年に実際に実行されたってわけですね。
元々分業体制で腕時計が作られていたスイスの時計産業なのですが、このように現在ではグループ内で囲い込んで作るようになり、グループの中にムーブメント専門の会社がある。という構図になっています。
スウォッチとは別のリシュモンバージョンはこちらの動画で詳しく解説しておりますので、気になる方はこちらの動画もご覧くださいませ↓
良い時計の基準というのは、人それぞれ異なるのですが分かりやすい1つの基準は=ブランド力が最も影響するでしょう。
マックとモスバーガーなら、イメージとしてはモスの方が健康に良さそうだけど、マックの方が圧倒的にシェアはでかいです。
それはなぜかというと、どこにってもマックがあるしマックがマーケティングにお金を使っているからです。
腕時計も同じです。
どれだけ技術力があろうが、そのブランドが知られてなかったり、その中のムーブメントの良さを知られてないことには、人々は欲しいと思わないですよね。
ですので、どちらかと言うとブランド力の向上につながるマーケティングを行った方が、投資する理由があります。
だからこそ、各社はほとんどの人が興味がないムーブメントに力を入れてこなかったんですね。
そして、こう考えていくと昔話になりますが、ロンジンは自社製クロノを作ってるので、凄いと言えますし、多分誰も知らないと思いますが、アンジェラス、モバード、ユニバーサルも同じ位凄いのです。
ブランドのネームバリューで時計を選ぶのが、最も分かりやすいのですがそういった技術力を追求してきたブランド!という方向性で見てみるのもまた面白いのかもしれませんね✨