モルガン・スタンレーとLuxeConsult『ラックス コンサルト』による「2024年 スイス時計ブランド・トップ50」のショート版
腕時計の市場シェア!世界ではどのブランドがどれくらい強いのか?
モルガン・スタンレーとLuxeConsultが発表した「2024年 スイス時計ブランド・トップ50」の最新レポートをもとに、スイス時計市場の動向を解説します。
まずスイス時計産業全体の輸出額を見てみましょう。
2020年のコロナ危機で一時は落ち込みましたが、その後は急回復を遂げ、2023年には約4.94兆円と過去最高水準に到達しました。
ただ2024年にはわずかに減少し、約4.79兆円へと約3%の縮小します。
しかし、これは全体の流れであって、成長したブランドも多数存在します。
ブランド別に見ていくと、圧倒的な存在感を誇るのがロレックスです。
市場シェアはなんと32%を突破し、業界全体の約3分の1を独占しています。
販売本数自体は前年よりわずかに減りましたが、売上はむしろ増加しています。
つまり「少なく売って、より高く稼ぐ」という戦略が完全に機能しているのです。
次にランキング2位はカルティエでシェアは8%。
特にレディース市場の強さを背景に堅調に成長しました。
3位はオメガで約7%。
ただし中国市場の減速の影響を大きく受け、販売本数・売上ともにやや減速しています。
4位のパテック フィリップは6.5%、5位のオーデマ ピゲは5.2%と、いずれも高級戦略を強化してシェアを維持し、雲上ブランドの安定感を示しました。
今回売り上げを伸ばすことが出来たブランドはたったの12社でありそれが
ロレックス、カルティエ、オーデマ ピゲ、パテック フィリップ、リシャール・ミル、タグ・ホイヤー、ブルガリ、ヴァンクリーフ、フレデリック・コンスタント、F.P.ジュルヌ、H.モーザー、MB&Fだけでした。
苦戦が目立ったブランドもあります。
ロンジンは中国依存度が高く、販売本数が40%も減少。
また高級ブランドのブレゲは、販売本数が前年の2万本から7,400本へ激減し、売上高も約389億円から約305億円)へ縮小しました。
興味深いのは平均単価で、2023年の約194万円から2024年は約412万円へと倍増しており、販売規模を大きく絞りつつ超高価格帯へ寄せたことが読み取れます。
おそらく、社外ブランドとも戦えるようにスウォッチグループがブレゲに与えた役割は、超ハイブランド化戦略ということでしょう。
これは、より高価格帯モデルへのシフトを意味し、「プレミアム化」の流れを象徴しています。
ここで重要なのは市場全体の販売本数です。
2024年は約1,330万本で、前年の1,600万本から大幅に減少しています。
2011年には約3,000万本だったので、この十数年で半分以下になりました。
それでも輸出額は高水準を維持しているのはなぜでしょうか?
答えは「1本あたりの単価が激的に上がっている」からです。
機械式時計に限定するとその構造はさらに鮮明です。
2017年は720万本で約2.78兆円の収益でしたが、2024年には本数が600万本に減少した一方で収益は約3.89兆円と100万本も減ってるのに1兆円も売り上げを伸ばしているのです。
販売数は−17%にも関わらず、収益は+40%近く増えています。
つまりブランドは「数を追う」のではなく、「より少なく、より高く売る」方向に完全にシフトしているのです。
この流れの中で勝ち組となったのは、複雑機構や貴金属モデル、限定品で平均単価を押し上げることに成功した雲上ブランドやロレックスです。
一方で、従来はボリュームゾーンを担ってきたロンジンやティソなどは販売数減の直撃を受けて苦戦しています。
同じグループ内でも、戦略やポジショニングによって結果が大きく分かれる状況が浮き彫りとなりました。
ロレックスを筆頭に強いブランドはますます強くなる一方で、そうでないブランドには厳しさが増しています。
これから時計を選ぶときには、この「プレミアム化」という時代の流れをしっかり意識することが、賢い選択につながるでしょう。
そして、新品腕時計が高すぎる!と感じる方は、価値のあるヴィンテージウォッチを候補に入れても良いかもしれません。
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