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Article: スイス腕時計は高くなりすぎた?メーカーと消費者の考えにズレ

スイス腕時計は高くなりすぎた?メーカーと消費者の考えにズレ

こんにちは、ベルモントルの妹尾です。

本日の動画では「スイス腕時計は高くなりすぎた?メーカーと消費者の考えにズレ」という内容で解説して参ります。

ここ数年、腕時計を見ている方であれば、「また値段が上がったな」と感じる機会がかなり増えたと思います。

以前は100万円台だったモデルが、気付けば150万円を超えていたり、数年前の価格を知っている方ほど現在の定価に驚くことも珍しくありません。

ただ、本当に見るべきは「腕時計が高くなった」ということだけではありません。

メーカー側が腕時計を売るために重要だと考えていることと、実際に消費者が腕時計を選ぶ時に重要だと考えていることの間に、ズレが出ている可能性があるんですよね。

今回このテーマを取り上げるきっかけになったのが、2026年9月10日に海外の腕時計業界メディア「WATCHPRO」が公開した記事です。

この記事では、世界中の企業や業界について調査を行っている『デロイト』というによる腕時計業界の調査をもとに、メーカー側と消費者側の考え方の違いが取り上げられています。

今回はこのデータを軸に、「スイス腕時計は本当に高くなりすぎたのか」、そしてこれからブランド側に何が求められるのかを一緒に見ていきましょう。

元記事は概要欄に入れておりますので、気になる方はそちらからご覧くださいませ。

それでは話を進めて参ります。



消費者が一番見ているのは「安さ」ではなく、価格に見合う価値

まず今回の調査で、非常に本質的な結果があります。

デロイトが世界の13都市6,500名に「腕時計を選ぶ時に何を重視するか?」を聞いたところ、最も重要とされたのが「プライス・トゥ・バリュー・レシオ/price-to-value ratio」、つまり価格に対してどれだけ価値を感じられるかでした。

ブランドは2番目、デザインは3番目だったとWATCHPROは報じています。

ここは非常に重要だと思います。

消費者が「安い腕時計を求めている」という話ではないんですよね。

高級腕時計ですから、そもそも100万円、200万円、場合によってはそれ以上することを分かったうえで購入を検討している方も大勢います。

それでも一番重要なのは、「その金額を払う理由に納得できるか」ということです。

例えば150万円の腕時計があったとします。

ケースの仕上げが非常にきれいで、ムーブメントにも特徴があり、ブレスレットの完成度も高く、ブランドとしての歴史にも魅力がある。

そうであれば、150万円という金額に納得する方もいると思います。

一方で、数年前まで100万円だった腕時計が、外観や仕様に大きな変化を感じられないまま150万円になったとします。

そうすると消費者側からすれば、「増えた50万円は何に対する金額なんだろう」と考えますよね。

つまり問題は、価格が高いことそのものではありません。

価格の上昇に対して、消費者が感じる価値も一緒に上がっているか。

ここが今まで以上に重要になっているということです。

要するに、インフレだから仕方ないよね・・・ってのは分かってるつもりでもでも2020年に誕生したサントスと、今日販売されているサントスは何も変わってないのに50万円も値上がりしてることに、どこか引っかかってしまう。って感じです。

繰り返しになりますが、とは言っても金額だけで判断しているわけではありませんよね。

そのブランド、そのモデル、その作りに、その金額を払う理由があるか?を見ているわけです。

高級腕時計の市場では、安さを競う必要はありません。

ただし、高くするのであれば、その価格を納得させる理由まで一緒に作らなければならない!

というのが、今回の調査から見えてくる一つ目のポイントなんだと思います。

では次に、メーカーは新作や技術革新を重視する。でも消費者は別のところを見ている!という内容で解説して参ります。



メーカーは新作や技術革新を重視する。でも消費者は別のところを見ている

ではメーカー側は、今の市場で何を重視しているのでしょうか。

WATCHPROが紹介した調査では、新商品を投入することは依然として腕時計メーカーにとって重要な戦略の一つになっています。

需要が弱くなっている中でも、新作を発表すればブランドへの注目が集まり、ニュースになり、店頭へ人を呼ぶきっかけにもなるからですね。

メーカーからすれば、新しい腕時計を継続的に発表することには明確な理由があります。

さらに研究開発や技術革新も、メーカー側では長年重要な戦略として位置付けられてきました。

新しいムーブメントを作る。

パワーリザーブを伸ばす。

新素材を使う。

新しい複雑機構を開発する。

腕時計メーカーとして技術を進歩させることは、もちろん非常に重要です。

ただ、消費者側の調査を見ると、少し温度感が違うみたいです。

ではこちらの画像をご覧ください⬇️

WATCHPROの記事では、消費者は腕時計を単なる時間を知る道具としてだけではなく、自分へのご褒美、アクセサリー、特別な出来事の記念など、かなり感情的な理由から購入していることが紹介されています。

調査では、時間を知るという本来の目的で腕時計を購入する方は約3分の1で、多くの方がそれ以外の理由も持って購入しているとされています。

ここに、メーカーと消費者の求めるものの違いがあります。

メーカー側は、

「新しい物を作りました」

「この機構が進化しました」

「この素材を初めて採用しました」

と伝えます。

もちろん、それを楽しみにしている腕時計好きの方もいます。

ただ、一般の消費者が最後に購入を決める時は、

「これを着けたい」

「自分に似合う」

「この一本を持っていたい」

という感情の方が強いこともあるわけです。

腕時計という商品は、ここが特殊なんですよね。

スマートフォンであれば、処理能力が上がった、カメラ性能が上がった、電池が長く持つようになったという進化が、そのまま買い替える理由になることがあります。

今はだいぶそれが弱くなって、中古でもいっか・・・って人が増えてますが、アップルが大好きな方々もいらっしゃるのでまだそういった理由で機種変される方は多いですよね。

しかし機械式腕時計の場合、精度だけを求めるのであれば別の選択肢はいくらでもあります。

だから高級腕時計では、技術的に優れていることと、「欲しい」と思うことが必ずしも同じではありません。

というか、腕時計に精度なんて求めても、こっちとしては1日30秒くらいずれたってなんとも思わないから、そこを追求してもねぇ・・・ってなるんですけどね。

メーカーが技術や新作に投資すること自体が間違っているわけではありません。

ただ、その新しい技術や新作が、消費者にとってどんな魅力になるのか?まで伝わらなければ、価格を上げる理由としては弱くなってしまいます。

メーカーが『すごい技術を作った』と伝えるだけではなく、その技術が消費者にとって『だから欲しい』と思える魅力までつながっているかが重要なんですよね。

この二つの間をどうつなぐかが、今のスイス腕時計業界では、重要になってきていると推測されています。

では次に、「高くすれば高級になる」が通用しにくくなっている!について解説して参ります。



「高くすれば高級になる」が通用しにくくなっている

ではこちらの画像をご覧ください⬇️

ここで現在のスイス腕時計市場そのものを見てみます。

2026年上半期のスイス腕時計輸出額は122億スイスフラン、日本円にすると約2.3兆円で、前年同期比0.6%減少しています。

ところが、輸出された腕時計の本数自体は前年同期比2.3%増えています。

では、腕時計がまた全体的に売れるようになったのかというと、そう単純ではありません。

この本数の増加を主に牽引したのは、スウォッチといった、超高価格帯よりも比較的手の届きやすい価格帯のブランドだったと分析されています。

ロイヤルポップがこの中に含まれているか分かりませんが、スウォッチは今年ロイヤルポップを販売してかなりの数を売りましたからね。

そして、少し苦戦しているのがロンジン、ティソ、ハミルトン、などのミドルレンジブランドです。

つまり、単純に「高級腕時計が全部売れなくなっている」という状態ではありません。

むしろ現在のスイス腕時計市場では、価格帯によってかなり違った動きが起きています。


特に強かったのが、薄い黄色の帯のところの5万〜12万5,000スイスフラン、日本円にするとおよそ950万円〜2,400万円という超高価格帯です。

この価格帯の輸出額は、前年同期比で7.7%増加しました。

つまり、ごく一部の富裕層が購入する1,000万円を超えるような腕時計が、市場の金額的な成長を大きく引っ張っているわけです。

ところが、その少し下の価格帯を見ると状況は変わります。

下から2番目の薄紫の帯を見ていただきたいんですが、2万5,000〜5万スイスフラン、日本円にすると470万円〜950万円の価格帯では、輸出額が前年同期比8.3%減少しました。

さらにその上のピンクの枠を見て欲しいのですが、7,500〜1万2,500スイスフラン、日本円にすると140万円〜240万円の、いわゆる手の届きやすい高級腕時計の価格帯でも、輸出額は前年同期比0.5%増にとどまっています。

つまり現在の高級腕時計市場では、「高級腕時計が一律に売れなくなっている」のではありません。

この数字を見ると、現在の高級腕時計市場では、価格帯によってかなり違った動きが起きていることが分かります。

特に興味深いのが、数百万円クラスの腕時計が苦戦している一方で、1,000万円を超えるような超高価格帯は伸びているという点です。

つまり、「高い腕時計だから売れなくなった」というわけではありません。

むしろ、1,000万円、2,000万円という非常に高額な腕時計には、昔より強い需要があります。

では、何が難しくなっているのでしょうか。

私は、「価格を上げれば、その分だけ高級ブランドとして評価される」という考え方が、以前より通用しにくくなっているのではないかと思います。

例えば、これまで100万円だった腕時計が130万円、150万円へ値上がりする。

300万円だった腕時計が400万円、500万円へ上がっていく。

もちろんメーカー側にも、原材料費や人件費の上昇、スイスフラン高、流通コストの増加など、価格を上げなければならない事情があります。

ですので、値上げそのものが悪いという話ではありません。

ただ、消費者からすると、価格が上がればその腕時計に求めるものも変わってきます。

100万円なら納得できた腕時計でも、150万円になれば「ほかに何が買えるだろう」と考えるようになる。

300万円、400万円となれば、同じ価格帯の別ブランドだけではありません。

さらに上位ブランドの中古やヴィンテージ腕時計まで比較対象に入ってきます。

こういった背景があって、ここ何年かでヴィンテージウォッチを見てみよう、とか、所有しよう。と言った感じで、考えが変わっている人が増えているんですよね。

では、なぜ1,000万円を超えるような超高価格帯は伸びているのか?って話ですが、そこには、単純に「高いから」という理由とは別に、その価格でも選ばれるだけの理由を持つ商品が存在します。

生産本数が極端に少ない。

高度な複雑機構が使われている。

仕上げに非常に多くの手間がかかっている。

長い歴史やブランドとしての物語がある。

他にも、そのブランドでしか手に入らないデザインや世界観がある。

そうした明確な理由があれば、価格が1,000万円、2,000万円になったとしても、「それでもこの腕時計が欲しい」という方が存在します。

一方で難しくなるのが、価格は上がったけれど、消費者から見た商品の魅力がそれほど変わっていない場合です。

100万円だった腕時計が150万円になった。しかし、見た目も機能もブランドとしての立ち位置も大きく変わっていない。

そうなれば消費者としては、

「150万円出すのであれば、ほかのブランドも見てみよう」

という判断をしやすくなります。

分りやすいのは、現行のオメガでしょうね。

では次に、ここをもうちょっと深ぼって見るために問題は値段ではなく「その価格でも欲しい理由」を作れるか?という内容で解説して参ります。



問題は値段ではなく「その価格でも欲しい理由」を作れるか?

では、「スイス腕時計は高くなりすぎたのか?」という最初の問いに戻ってみましょう。

私は、単純に「高すぎるから値段を下げればいい」という話ではないと思います。

実際、現在の市場でも超高額帯は強く、一部の最高級ブランドや独立系メーカーでは需要が供給能力を上回るモデルもありますからね。

つまり、500万円だから売れない。

1,000万円だから売れない。

というわけではありません。

その金額でも欲しいと思える腕時計であれば、購入する方はいます。

逆に150万円でも、「なぜこの価格なのか?」が分かりにくければ、高く感じることがあります。

ここで最初に紹介したデロイトの調査へ戻ります。

消費者が腕時計を選ぶ時に最も重視していたのは、単純な価格ではなく「価格に対して得られる価値」でした。

この結果は、今の腕時計市場をかなり分かりやすく表していると思います。

そしてメーカー側にとって難しいのは、これをスペックだけで解決することができないところです。

新しいムーブメントを入れれば売れるわけでもありません。

限定モデルを増やせば売れるわけでもありません。

ケースを新しくすれば売れるわけでもありません。

消費者が最終的に「欲しい」と感じるところまで、その技術やデザインの価値をつなげる必要があります。

ここ数年の腕時計業界を見ていると、販売本数が減っても単価を上げることで売上高を維持する、あるいは高価格帯へ商品構成を移していくブランドが増えています。

ただし、その戦略が成立するのは、「高くしたから高級」ではなく、「高くても選ばれる理由」がある場合です。

今後はここで、ブランドごとの差がさらに大きくなってくる可能性があります。

価格を上げても、そのブランドでなければならない理由を作れるところ。

価格を上げたことで、逆に他のブランドと比較されてしまうところ。

同じスイス高級腕時計でも、ここからかなり違う方向へ進んでいくのではないかと思います。


腕時計というのは本来、値段やブランド名だけでは、その一本が本当に納得できるかどうかは、決まらないんですよね。

その一本が持つ背景まで見えてきたときに、初めて「これだ」と思える自分の一本に出会えるんですよね。

店舗は表参道駅から徒歩2分の場所にあるので、雨の日でもほとんど濡れずにお越し頂けます。

ベルモントルでは、そうした背景や佇まいも含めて腕時計を選びたい方に向けて、公式LINEで一般公開前の新着商品や入荷予定品をご案内しています。

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