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Article: パテックフィリップ Ref.3989Jは他のエリプスと何が違う?

パテックフィリップ Ref.3989Jは他のエリプスと何が違う?

こんにちは。

ベルモントルの妹尾です😊

今日は、パテックフィリップの中でも非常に珍しいエリプス、Ref.3989Jをご紹介します。

ベルモントルは基本的には予約制でご対応させて頂いておりますが、金曜日と日曜日だけはフリーでオープンしておりますので、ちょっと気になる商品があるんだよねぇ・・・って方がいらっしゃいましたら、お気軽にお越しくださいませ。

 

 

パテック・フィリップ「エリプス」3989Jの概要

パテックフィリップ Ref.3989J は、1985年頃から1990年頃までのごく短期間に製造された、極めて希少なゴールデン・エリプスのバリエーションの1つです。

型番末尾の「J」はイエローゴールド(Yellow Gold)を意味し、18Kイエローゴールド製のケースが採用されています。

ケース形状はエリプスの名前から来ている通り黄金比1 : 1.618の楕円形で、柔らかいラインと上品な存在感が特徴です。

このモデル最大の特徴は、ベゼルに施された「クル・ド・パリ(Clous de Paris)」装飾です。

クル・ド・パリとは、フランス語で「パリの石畳」を意味し、小さなピラミッド型の連続彫刻によって光を細やかに反射させるギョーシェ装飾の一種です。

エリプスコレクションの中でクル・ド・パリ装飾を持つモデルは、3989Jと3986などのようにほとんど存在せず、3989Jはその中の1つの存在といえます。

そして、これまた案外少ないのが、スモールセコンドが配置されている部分です。

基本的には、エリプスは秒針が付かないのですが時々、このように秒針が備えられたモデルが存在し、こういったスモセコが入っているモデルはより希少価値が高くなります。

よって、クルドパリベゼルとスモセコが配置されているRef.3989Jは、非常に人気があるモデルということなんですね。

この装飾によって、通常の滑らかなスムースベゼルとは一線を画す、ジュエリー的で華やかな印象が加わっています。

また、かなりの存在感が感じられます。

文字盤はホワイトカラーにローマ数字のインデックスを配し、6時位置にスモールセコンドを備えたクラシカルなデザインです。

多くのエリプスがバーインデックスを採用する中、ローマ数字とスモールセコンドの組み合わせは稀少で、クラシックドレスウォッチの趣を一層高めています。

製造本数が非常に少ないために、市場から姿を消していってるのが現状となります。

そのため、中古市場でも滅多に姿を見せず、エリプスコレクションを網羅しようとする愛好家にとっては“幻”の存在なんですね。

私もこれを見つけたのは、2年ぶりくらいな気がします。

ケースサイズは現代的に見れば小ぶりながら、装飾やデザインの完成度が高く、バランスの取れた一本だと言えるでしょう。

 

 

 

搭載ムーブメントについて

パテックフィリップ Ref.3989Jに搭載されるムーブメントは、手巻き式のCal.215 PSです。

Cal.215は1970年代からパテックの小型・薄型モデルに採用されてきた名機で、その「PS」は"Petite Seconde/プティットセゴンド"、つまりスモールセコンド付き仕様を意味します。

Cal.215は、直径21.9mm、厚さわずか2.55mmという極薄設計で、ジュネーブ・シールを取得しているのも大きな特徴です。

21,600振動/時のロービート仕様は、耐久性と精度を両立させつつ、機械式時計らしいゆったりとした針の動きを生み出します。

パワーリザーブは約44時間と、日常使いに十分な実用性を備えています。

現行ラインからはすでにこのムーブメントは採用されてないのですが、2022年ごろまで製造されていたRef.5196のカラトラバにも同じムーブメントが採用されていました。

よって50年近く現役で活躍していたムーブメントなんですね。

ちなみに今そのポジションを受け継いでいるのが、Cal.30-255PSになります。

話を戻しましてこのCal.215ムーブメントの魅力は、仕上げの美しさにあります。

エッジ部分は面取りされ、角は鏡面仕上げ。

パテックのムーブメントらしくブリッジにはコート・ド・ジュネーブ(ジュネーブ波模様)が丁寧に施され、地板にはペルラージュ(円状の模様)が広がります。

歯車やネジにもポリッシュがかかっており、実用性だけでなく鑑賞価値も高い造形です。

ジュネーブ・シールの刻印は、パテックが当時から最高基準の仕上げと組み立てを行っていた証です。

Cal.215の設計は堅牢で、数十年経っても適切なメンテナンスを施せば高い精度を維持できます。

特に3989Jは防水性よりもドレスウォッチとしての薄さ・美しさを優先したモデルであり、この薄型ムーブメントがエリプスのケースデザインを実現しました。

実際、厚さ約2.55mmのキャリバーを搭載することで、ケース全体の厚みも6〜7mm台に抑えられ、シャツの袖口に自然に収まるフィット感を実現しています。

また、Cal.215 PSはリューズ操作も滑らかで、手巻きの巻き上げる感覚とあの音が心地よいのも魅力のひとつです。

ではここで一旦巻き上げの音を聞いてみましょう。

(巻き上げの音)

巻き上げ時には程よい抵抗感があり、ゼンマイが完全に巻き切られる直前の感触までが繊細に伝わります。

3989Jのような小ぶりなケースに、スモールセコンド付きのCal.215 PSを収めた設計は、エリプスの中でも異色であり、希少性をさらに高めています。

ムーブメントの薄さ、装飾の美しさ、そして機械式らしい操作感――これらが一体となって、3989Jを単なるドレスウォッチ以上の存在にしています。

冒頭で少し触れましたが、1985年頃から1990年頃までのごく短い期間しか製造されなかったモデルです。

 

製造本数は正確には公表されていませんが、コレクターやディーラーの間では現存が確認されているのは少数本とも言われており、エリプスの中でも特に希少性が高い部類に入ります。

市場での出現頻度も極めて低く、出てきたとしても数年に一度あるかどうかで、多くの場合はコレクター間や専門ディーラーのネットワーク内で取引される傾向があります。

そのため、一般の中古時計店で見かけることはほぼありません。

3989Jというモデルは、それくらい希少性が高いということを理解しておくと、手にした時の喜びはもっと高まることでしょうね。

 

6. 実際に手に取ってみて

ほとんどの時計がそうなのですが、動画や写真で見るだけでは、この3989Jの魅力は半分も伝わってないでしょう。

実際に手に取ると、まず感じるのはサイズ以上の存在感です。

ケース径は26.9mm、ラグからラグは32mmと現代基準では小ぶりですが、ベゼル全体に施されたクル・ド・パリ装飾が、光を細やかに反射し、手元を柔らかくも華やかに彩ります。

光が当たる角度によって、ベゼルのピラミッドパターンがキラリと立体的に浮かび上がる瞬間は、このモデルならではの贅沢な体験です。

文字盤はエナメルのような艶感があり、ローマ数字とスモールセコンドの配置が絶妙なバランスで収まっています。

針はリーフ型で、細身ながらしっかりと時刻を指し示し、針のコンディションも良好です。

この手の針は、結構色が落ちちゃって灰色っぽくなりがちなのですが、前のオーナーが大切に扱っていたようで、時計全体のコンディションも針のコンディションも年代を考えれば綺麗に保管されているのが分かります。

手首に載せると、ケースの曲線が自然に馴染み、18Kイエローゴールドらしい重量感は心地よい“ずっしり感”があります。

現代の大型時計とは違い、時計そのものが主張しすぎず、装飾とデザインが一体となって品格だけを静かに語るような雰囲気です。

そして何より、スモールセコンドの滑らかな動きと、リューズを巻き上げるときの感触。

この操作感に、手巻き時計ならではの喜びがあります。

これは単なる時間表示の道具ではなく、私の表現では持ち歩くことが出来るアートですね。

この3989Jは、視覚的な美しさと触感的な満足感の両方を備えた、まさに“手に取ってこそ価値がわかる”1本です。

いろんな時計を見ていますが、やっぱり自分の審美眼に近しい素晴らしいバランスの腕時計なんだと、眺めるたびに感じます。

このような造形の美しさ、時計としての本来の価値が分かる方にこそ、是非とも手にして頂きたいですね。

本日の動画が、面白かった勉強になったよ、という方がいらっしゃいましたら、是非とも共通の趣味や考えをお持ちの親族やお友達にシェアして頂けると私も今後の動画の励みになりますので、よろしくお願い致します。

 

それではまた!

 

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