ここでやっとですね、ヴィンテージという言葉について、深掘って解説していきます。
先ほどお伝えしたように、「中古」という言葉は、あくまで一度誰かの手に渡ったもの、新品ではないもの、という状態を表す言葉です。
そこには、その時計が美しいかどうか、価値があるかどうか、今見ても魅力があるかどうか、といった話までは含まれていません。
一方で、『ヴィンテージ』という言葉は少し違います。
これは単に古いものを指しているのではなく、その時計が生まれた時代の空気や、その時代だからこそ成立していたデザイン、サイズ感、作りの考え方まで含めて、今見ても意味や魅力を感じられるものに対して使われる言葉だと私は考えています。
例えば、先日ご紹介したパテックフィリップのカラトラバ Ref.3579Aは1発でそれが1970年代のデザインであることが分かります。
あれはトノー型って言うんですが、スイスの時計産業がクオーツショックと職人の人件費の高騰によって、コストを低減させるために出来るだけ製造するパーツを減らして作られたケースだからです。
ここにはその年代の時代背景と、そのブランドがどのようにしてSEIKOのクオーツショックに対抗しようとしたのかが分かる考え方があります。
他にも共通するもので言えば、ケースの薄さや小ぶりなサイズ感、文字盤の手間の入れ方、ブレスレットの作り(これはロレックスの実用で使うことを主目的にしている時代であれば中空で軽いブレスになっているのが分かりやすいですよね)など、今の腕時計とは別の角度の美しさがあります。
それは単に古いから価値があるという話ではなく、今の時代の感覚で見ても、やはり格好いい、おしゃれだと感じられる完成度があるということです。
つまり、『ヴィンテージ』は年数そのものを褒めている言葉ではなく、その腕時計が長い時間を経てもなお、魅力を失っていないことを示す言葉に近いと考えています。
大事なことなので、もう一回繰り返しますが『その腕時計が長い時間を経てもなお、魅力を失っていないことを示す言葉』
だから私は、中古とヴィンテージは似ているようで少し違うと考えています。
中古は状態の分類。
ヴィンテージは価値の見方。
この違いを知ると、古い時計に対する印象は少し変わってくるのではないかと思います。
先ほど出てきたパテックフィリップ カラトラバの時計についてはこちらの動画で詳しく解説しておりますので、気になる方はご覧ください⬇️
話を戻しまして、では次に古いだけでは、ヴィンテージにはならない!と言うことについて解説して参ります。
古いだけでは、ヴィンテージにはならない
ここまでで、「中古」と「ヴィンテージ」は少し違うというお話をしてきましたが、ここでとても大事なことをお伝えしておきます。
それは、古い時計がすべてヴィンテージになるわけではない、ということです。
年数が経っているというだけで、その腕時計に特別な価値が生まれるわけではありません。
実際には、ただ時間が経過しただけで、デザインとしても特別な魅力を感じにくいものや、バランスが崩れているもの、状態が良くないものも多く存在しています。
ヴィンテージウォッチというのは、その人の主観がかなりの割合を占めるので、99人が良くないと思ってても、自分だけは良いと思えるものがあります。
よって、これをヴィンテージと呼ぶに相応しいかは、そのお店の店長さんがどういった基準でそれを仕入れているのか?
というところがかなり重要になるのですが、それを明確に答えることが出来ない場合はおそらく、数増やしのために仕入れられたものだと考えるのが自然です。
私が見ても、なんでこれをヴィンテージウォッチに分類してるんだろう・・・・っていうボロボロの時計を扱ってるお店もあります。
ですがそれは前述した通り、その店主の価値観や私とは違う角度の判断基準をお持ちのためにそうなっているんだと思います。
私の基準が100%正解ではないし、むしろ間違ってる確率の方が高いですが、私の基準は
・比較的コンディションが良い個体
・美しいパティナが形成されてる個体
(パティナってのは元々の文字盤が褪色して綺麗なエイジングが生まれてる個体です、弊社で扱ってるものであればロレックスのゴーストやギャラクシー、オイパペの1500がそれに当たります)
・数が少ない個体
をヴィンテージウォッチと呼ぶに相応しい商品だと考えております。
そして、そういったボロボロの個体のものは、無理に『ヴィンテージ』と呼ぶ必要はなく、あくまで中古として捉えた方がいいですよね。
だからこそ、この2つの言葉をきちんと分けて考えることが大切です。
ヴィンテージと呼ばれるものには、ある程度の共通点があります。
それは、時間が経ってもなお、見たときに違和感がないこと。
むしろ今の服装や空気感の中でも自然に馴染むこと。
そして、細かい部分まで含めて完成度が高く、全体として整って見えることです。
逆に言えば、そういった要素が整っていないものは、年数が経っていても「ただ古いもの」として見えてしまうことがあります。
ここを曖昧にしてしまうと、「ヴィンテージ」という言葉自体が軽くなってしまいますし、結果的に信頼も下がってしまいます。
だから私は、すべてをヴィンテージとして扱うのではなく、本当に今見ても魅力があるものだけを、そう呼ぶようにしています。
この線引きをしっかり持っておくことで、古い時計の見方はよりクリアになり、自分にとって納得できる一本を選びやすくなると思っています。
では次に、おしゃれな人は大体ヴィンテージやアンティークのアイテムをどこかに取り入れてるんですが、なぜヴィンテージは『おしゃれで格好いい!』と感じるのか?という事について解説して参ります。
なぜヴィンテージは『おしゃれで格好いい!』と感じるのか?
ではここからは、もう少し踏み込んで、「なぜヴィンテージウォッチはおしゃれで格好いいと感じるのか」という部分についてお話ししたいと思います。
これは単に古いからではなく、いくつかの要素が重なってそう見えていると感じています。
まず一つは、サイズ感です。
ヴィンテージの時計は、現行モデルと比べて少し小ぶりなものが多く、手首に乗せたときに主張しすぎず、全体としてとてもバランスよく見えます。
服装と合わせたときにも、時計だけが浮くことなく、自然に馴染むこの収まりの良さは、ヴィンテージならではの魅力のひとつです。
次に、デザインの整い方です。
インデックスや針の形、文字盤の余白、ケースのラインなど、細かい部分に無理がなく、全体として非常に落ち着いた印象にまとまっています。
情報量が多すぎない分、見たときにすっと理解できる美しさがあり、それが『品がある』と感じられる理由にもつながっています。
さらに、その時代ごとの空気感も大きいです。
当時の価値観や美意識の中で作られているため、現代の時計とは少し違ったニュアンスを持っています。
それが結果として、今の時代の中では逆に新鮮に見えたり、個性として感じられることがあります。
そしてもう一つは、『使われてきた時間』が自然に刻まれていることです。
大きなダメージではなく、ほんのわずかな変化や風合いとして現れている場合、それが新品にはない柔らかさや深みとして感じられることがあります。
こうした要素が重なることで、ヴィンテージの時計は、派手ではないのにどこか目を引く、静かに格好いい存在として映るのだと思います。
これはスペックや価格だけでは説明しきれない部分ですが、実際に手に取ってみると、多くの方が自然と感じるポイントでもあります。
では次に私大まかな見ているポイントについてお話しして参ります。
ベルモントル店長の妹尾さんは『中古かどうか』ではなくここを見ています