夏の汗と湿気、ムーブメントの精度にどう影響するか!?
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日は「夏の汗と湿気、ムーブメントの精度にどう影響するか!?」という内容でお話ししていきたいと思います。
夏は、通勤や通学だけでも腕時計の裏側が汗で濡れやすい季節です。
特にヴィンテージ腕時計の場合、「汗が内部に入らないのか」「湿気によって精度が悪くならないのか」と不安になる方もいらっしゃいますよね。
ただ、夏だからといって腕時計を使えないわけではありません。
汗や湿気がどのように腕時計へ影響するのかを知り、一番汗をかきやすい時間帯だけ外すなど、現実的な使い方をすれば十分に楽しめます。
今回は、夏の高温や湿気がムーブメントの精度にどう関係するのか、ヴィンテージ腕時計では何に注意した方がよいのかを掘り下げて参ります。
ベルモントルは表参道・青山に移転し、営業時間も新しくなりました。
月〜金は12時〜17時までは予約制。17時から19時はフリーオープン、日曜は12時から19時がフリーオープン、土曜は定休日です。
気になる商品がございましたら、ぜひご来店またはご予約をお願い致します。
弊社では、価格だけではなく背景や佇まいも含めて腕時計を選びたい方に向けて、公式LINEで一般公開前の新着商品や入荷予定品をご案内しています。
こうした商品選びに共感してくださる方は、概要欄から公式LINEのお友達登録をよろしくお願い致します。
それでは話を進めて参ります。
湿気が多いだけで腕時計の精度は悪くなるのか?
夏の湿気について考える際は、「外の湿度が高いこと」と「腕時計の内部へ水分が入ること」を分けて考える必要があります。
ケースやリューズ、裏蓋が正常な状態であれば、湿度の高い場所にいるだけで、すぐにムーブメントの精度が悪くなるわけではないんですよね。
本当に気をつけたいのは、汗や雨、水しぶきなどが隙間から内部へ入り込むことです。
雨が降ってきた時には、腕から外してカバンに入れたり、激しく動いて汗だくになった時にも外してあげたりなどなどですね。
腕時計には水分の侵入を防ぐパッキンが使われていますが、パッキンは時間とともに劣化します。
特にヴィンテージ腕時計では、製造当時の防水性能が、現在もそのまま残っていません。
要するに、ヴィンテージの場合であれば、そういったパッキン交換も含めて、時計全体ができる限り綺麗な状態に復活させられてる状態が望ましいわけですよ。
また、1日のうちで温度変化が激しくなる時期でもあるので、結露を考える方も少なくはないでしょう。
例えば、しっかりと水気が入らないように修理してあれば、冷房の効いた室内から暑い屋外へ移動しただけで、時計内部に結露が発生することはありません。
ただし、すでにケース内部へ水分が入っている場合には、温度変化によって風防の内側に曇りが現れることがあります。
外側の曇りであれば布で拭き取れますが、内側に白い曇りが見える場合は注意が必要です。
しばらくして曇りが消えても、内部の水分が完全になくなったとは限りません。
その場合は使用を止めて、販売店や修理店へ相談する方が安心です。
このように夏場は外の湿度を必要以上に怖がるより、水気を内部へ入れないことと、風防の内側に曇りがないかを意識する方が現実的なんですよね。
まずここでは、むやみやたらに水気を嫌うと言うよりも、守るべき場所を正しく理解することで、日常でも使うことができると言うのを理解されてください。
では次に、夏の高温はムーブメントの精度にどう影響するのか?と言う内容で解説して参ります。
夏の高温はムーブメントの精度にどう影響するのか?
夏場の精度を考える際、湿気とあわせて知っておきたいのが、気温の高さによる影響です。
機械式腕時計のムーブメントは、非常に細かな金属部品を組み合わせて動いています。
その中でも精度を大きく左右しているのが、「テンプ」と「ひげゼンマイ」と呼ばれる部分なんですよね。
テンプが一定のリズムで往復運動を繰り返し、その動きをひげゼンマイが調整することで、針が一定の速さで進んでいきます。
この往復する速さがわずかに変わるだけでも、腕時計の進みや遅れとして表れてきます。
そして特にイタズラを起こすのがひげゼンマイの方です。
弊社のオーバーホールの動画をご覧になってる方であればすでにご存知だと思われますが、弊社で修理を担当してくださってる森さんは少しでもひげゼンマイに水気があれば、ゼンマイ同士がくっついて、それが精度に影響を与えるとおっしゃっています。
詳細についてはこちらの動画をご覧ください⬇️
1時間近くあるのですが、腕時計がどのように動いてるのか?そういった構造が分かるのでお勉強になると思いますので。
よって、オーバーホールの映像をご覧頂ければ分かるのですが、全てのパーツはしっかりと乾燥させて、そこからさらにエアーを送って水気を飛ばして組み立てとなります。
また、ムーブメント内部に使われている潤滑油も、温度によって状態が多少変化します。
高温になると油の粘りが弱くなり、低温になると反対に粘りが強くなる傾向があります。
これによって歯車や部品が動く際の抵抗がわずかに変わり、夏と冬で日差に違いが出ることもあるんですよね。
ただし、弊社ではこの油の性質の変化を季節の変わりによって変化が起きないように、AOオイルを使用しています。
AOオイルとは、シチズンの研究者の赤尾さんという方が開発した潤滑油であり、季節が変わっても大きく油の性質が変わらないように作られています。
ちなみにこのオイルはSEIKOでも採用されています。
とはいえ、油が注油されているという前提であれば、夏場というのが精度に与える影響はほとんどありません。
夏の暑さは、機械式腕時計の精度にまったく無関係ではありません。
ただ、高温だけで急にムーブメントが壊れるというより、季節によって日差が少し変化する要素の一つとして捉える方が、実態には近いんですよね。
では次に、もう少し水気に注意すべき理由をふかぼって解説していきます。
腕時計の内部に水分が入るとなぜ精度が変わるのか!?
腕時計の内部へ水分が入った場合、すぐに止まるとは限りません。
最初は普通に動いていても、時間が経つにつれて精度が不安定になることがあるんですよね。
ムーブメントには、歯車や軸の摩擦を抑えるために、ごく少量の潤滑油が使われています。
内部へ水分が入ると、潤滑油が本来の状態を保ちにくくなり、部品の動きに余計な抵抗が生じる場合があります。
その結果、歯車の動きが安定しにくくなり、進みや遅れとして表れることがあるんです。
ただし、ここの部分もそこにどんな油が使われているのか?ってところが重要なんですよね。
品質の高い油であれば、多少の水気が入ってきても大きく変化することはありませんし、機能を維持することが出来ます。
ですが、そうじゃない油を使った場合には、その影響をそのままダイレクトに受けてしまうということですよね。
ですので、油の品質に全くの問題がないというのを全体に考えれば、ひげゼンマイの部分に水気が入らないようにすることが1番重要!ということになります。
また、水分の影響はムーブメントだけではありません。
文字盤の変色や、針の腐食につながる場合もあるんですよね。
風防の内側に曇りが出た場合、しばらくすると消えることがあります。
ただ、曇りが消えたからといって、内部の水分が完全になくなったとは限りません。
なぜなら、そもそも腕時計というのは水気が入らないようにしないといけないというのはみんな知ってるし、そういう構造になっているのですが、そのような構造になっているのにも関わらず曇るというのは、逆に水気が簡単には抜けない状態になっているからです。
1番大事なことは、そうならないようにすることなんですね。
そのため、風防の内側に曇りが見えた時は、使用を止めて販売店や修理店へ相談する方が安心です。
早い段階で点検すれば、影響が広がる前に対応できることもあります。
水分が入ったから壊れたと決めつける必要はありませんが、曇りがあるのが分かった時点で対策を打てば、その後も充分に長く愛用していくことが出来るはずです。
といった感じで、先に皆様が気になるであろうムーブメントへの影響について解説してきましたが、とはいってもムーブメントはケースに守られているので、ダイレクトアタックをされるわけではありません。
ではここからはですね、それらケースやブレスについての影響も解説します。
汗はムーブメントより先に腕時計の外装へ影響する!?
夏場に腕時計を着けていると、最初に影響を受けやすいのはムーブメントではなく、ケースやブレスレット、革ベルトといった外側の部分です。
汗をかいたからといって、すぐにケース内部へ水分が入るわけではありません。
ただ、汗には水分だけではなく塩分や皮脂も含まれているため、ケース本体やリューズ周辺、ブレスレットにほんの少しだけダメージを与えます。
ステンレスなので、基本的には堅牢なのですが、裏蓋のパッキン周りが錆びているのは、そういった水気と一緒に入ってきた汗の影響も大きいです。
とはいえ、現実問題として仕事から疲れて帰ってきてるのに、汗をかくたびに細かく手入れをしましょう。とか言われても現実的ではありませんし、所詮は理想論でしかありません。
そこで取り入れやすいのが、最も汗をかきやすい朝の通勤や通学時だけ、腕時計を外しておく方法です。
オフィスワーカーの方に限られてしまうのですが、腕時計をケースへ入れてカバンの中にしまい、会社や学校へ到着してから身に着ければ、汗に触れ続ける時間を大きく減らせます。
会社内では、そんなに汗をかくことはないと思いますし、帰宅時はある程度涼しくなってるはずなので、そのまま着けて帰っても問題ありません。
夏の間ずっと腕時計を外すのではなく、一日の中で最も汗をかきやすい時間だけ避けるという考え方ですよね。
これだけで、その腕時計に対する見えないダメージや罪悪感はかなり軽減できると思いますね。
ベルモントルの視点
ここまで、夏の汗や湿気、高温がムーブメントの精度にどのような影響を与えるのかをお話ししてきました。
今回、最もお伝えしたかったのは、夏だからといってヴィンテージ腕時計を使えないわけではないということです。
外の湿度が高いだけで、すぐにムーブメントの精度が悪くなるわけではありません。
一方で、汗や水分がケースの内部へ入り込んだ場合には、潤滑油や金属部品、文字盤や針へ影響が広がる可能性があります。
また、高い気温によって日差が多少変化することはありますが、一日に数秒程度の変化であれば、使用時間や巻き上げ量、腕時計を置いていた向きなど、ほかの要因も含めて見た方が自然です。
そのため、夏場に精度が少し変わったからといって、すぐに故障と判断する必要はありません。
ただし、風防の内側に曇りが出た場合や、それまで安定していた腕時計が急に数分単位でずれるようになった場合には、そのまま使い続けず、一度ご相談いただく方が安心です。
そして、夏の使い方についても、必要以上に難しく捉える必要はありません。
毎日腕時計を細かく拭いたり、特別な保管設備を用意したりする方法は、正しいとしても、なかなか続けられませんよね。
それよりも、最も汗をかきやすい朝の通勤や通学時だけ、小さなケースへ入れてカバンの中へしまい、会社や学校へ到着してから身に着ける。
このような使い方の方が、現実の生活には取り入れやすいはずです。
帰宅時は、そのまま着けて帰ってもよいですし、会食や買い物などがあれば、いつも通り腕時計を楽しんでいただいて問題ありません。
夏の間ずっと腕時計を外しておくのではなく、一日の中で最も負担がかかりやすい時間帯だけ避けるという考え方です。
ベルモントルでは、ヴィンテージ腕時計をご紹介する際、見た目の美しさや希少性だけではなく、実際にどのような場面で使いやすいのか、夏場はどのように扱えばよいのかまで含めてお伝えすることを大切にしています。
古い腕時計だから怖いということではなく、そのモデルの構造や特徴を知り、現行モデルとは少し違う使い方をすることが大切なんですよね。
弊社で販売する腕時計には一年間の保証をお付けしています。
購入後に精度の変化や風防の曇り、リューズ操作の違和感などがございましたら、無理に使い続けず、お早めにご相談ください。
夏という季節に合わせて少しだけ使い方を変えることで、ヴィンテージ腕時計は一年を通して十分に楽しむことができます。
今回の内容が、夏場も安心してお気に入りの一本を身に着けるための参考になれば幸いです。