なぜパテック フィリップのステンレスモデルは、これほどまでに希少とされるのか?
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パテック フィリップは、もともと金無垢・プラチナを主軸とするブランドである
パテック フィリップが貴金属ケースを主軸としてきたことには、ブランドの成り立ちそのものに理由があります。
創業から一貫して、顧客が王侯貴族だったために、複雑機構やドレスウォッチを作り続けてきたパテック フィリップにとって、金無垢やプラチナは単なる素材選びの結果ではなく、ブランドの美意識そのものを体現する要素だったといえます。
代表作であるカラトラバをはじめ、ゴールデン エリプスといったモデルの多くが、貴金属ケースを前提に設計されてきたことからも、その姿勢がうかがえるでしょう。
一方でステンレススチールという素材は、パテック フィリップの歴史全体から見ると、ごく一部のモデルにしか採用されてこなかった、いわば例外的な存在だったんです。
ご存知の通り錆びにくく、熱や酸化への耐性が強いステンレスは、優れた実用性から多くのブランドでケースやブレスレットの素材として広く使われてきました。
ですがパテック フィリップにとっては、こうした実用性の高さよりも、貴金属が持つ格式や重厚感の方が、長らくブランドの軸として優先されてきたといえるでしょう。
だからこそ、パテック フィリップの歴史の中でステンレスケースが選ばれたモデルは数が限られており、その希少性は最初から素材選定の段階で決まっていた、という見方もできるんですよね。
金無垢のパテック フィリップが「王道」であるとすれば、ステンレスのパテック フィリップは、その王道からあえて外れた"異端の存在"だったといえます。
この立ち位置こそが、後にステンレスモデルが特別な評価を受けるようになる、ひとつの土台になっているんです。
もちろん、ステンレスが選ばれた背景には、当時のスポーツウォッチというジャンルへの挑戦という側面もありました。
貴金属では実現しにくい、実用性と堅牢性を兼ね備えた一本を作ろうとしたとき、パテック フィリップはあえて自らの王道から離れる決断をしていた、ということなんですよね。
こうして振り返ると、パテック フィリップにとってのステンレスは、最初から「例外」として位置づけられた素材だったことが分かります。
王道である貴金属ケースの歴史が長く積み重ねられているからこそ、そこから外れたステンレスケースの一本一本が、際立った存在感を放つことになるんです。
では次に、ステンレス製ノーチラスの人気が、ブランド全体のSS観を変えた!という内容で解説して参ります。
ステンレス製ノーチラスの人気が、ブランド全体のSS観を変えた
パテック フィリップにおけるステンレスの位置づけを、決定的に変えたモデルがあります。
それが、皆様ご存知の通り1976年に発表されたラグジュアリースポーツウォッチ「ノーチラス」ですよね。
デザイナーは、オメガのコンステやオーデマピゲのロイヤルオークを手がけたジェラルドジェンタであり、現行モデルであっても初期型からほとんど形を変えずに不動の人気モデルですよね。
この挑戦的な一本が時を経て、世界的な人気モデルへと成長し、その熱狂ぶりはパテック フィリップ社自身にとっても、悩ましい問題になるほどだったといわれています。
ステンレス製ノーチラスへの需要が過熱した結果、正規販売店ではウェイトリストや長い待ち期間が生まれ、店頭の陳列ケースが空になっていることも珍しくない状況が続いてきました。
顧客からは、パテック フィリップや正規ディーラーが一部の得意客のみを優遇し、ステンレスモデルの販売を特別扱いしているのではないか、という声が上がることもあったといわれています。
こうした過熱そのものが、パテックフィリップにおけるステンレスモデルの希少性と価値を、市場に強く印象づける結果にもなったんですよね。
かつては金無垢の「脇役」のような立ち位置だったステンレスケースが、ノーチラスの成功によって、むしろ入手困難な「主役級」の存在へと変わっていったといえるでしょう。
この変化は、パテック フィリップというブランド全体における「ステンレス」という素材の意味そのものを塗り替えることになりました。
もはやステンレスは、実用性を優先した廉価な選択肢ではなく、貴金属モデル以上に手に入りにくい、特別な存在として認識されるようになったんです。
そしてこの認識の変化は、ノーチラス以外のステンレスモデル、たとえば過去に製造されたヴィンテージのステンレスケースにも波及していきました。
もともと数が少なかったヴィンテージのステンレスモデルが、この文脈の中で再評価され、あらためて注目を集めるようになったという流れも、見逃せないポイントなんですよね。
つまり現代のノーチラス人気は、単に一つのモデルの成功にとどまらず、パテック フィリップというブランドが持つ「ステンレス」という素材の価値そのものを、後から再定義する出来事だったといえます。
過去に製造されたヴィンテージのステンレスモデルからすれば、当時は決して主流ではなかった素材が、現代になって思いがけない形で評価され直したことになるんですよね。
この巡り合わせもまた、腕時計というものが時代とともに新しい意味を帯びていく、ひとつの興味深い側面だといえるでしょう。
では次に、ステンレスケースだからこそ求められる、約55工程に及ぶ手仕上げという技術的価値!という内容で解説して参ります。
SSケースだからこそ求められる、約55工程に及ぶ手仕上げという技術的価値
ステンレスモデルが希少とされる理由は、単に「製造本数が少ないから」という数の話だけにとどまりません。
そこには、パテック フィリップならではの技術的なこだわりも深く関わっているんですよね。
一般的にステンレススチールは、貴金属に比べて安価で、加工もしやすい素材として扱われることが多く、いわば実用性重視の選択肢と捉えられがちです。
ですがパテック フィリップは、ステンレスという素材に対しても、貴金属と変わらない、あるいはそれ以上の手間をかけてきたブランドなんです。
代表的な例が、ノーチラスのケースおよびブレスレットの製作で、約55にも及ぶ工程による手仕上げが施されているという点なんですよね。
この手仕上げによって、ステンレススチールという硬い素材に、新たな職人技が吹き込まれ、貴金属にも引けを取らない輝きが生まれているといえます。
このことについては、パテックフィリップ社から出されているプレスリリースの中に記載されておりますので、気になる方は概要欄からご覧くださいませ。
つまりパテック フィリップにとってのステンレスは、コストを抑えるための代替素材ではなく、金属の可能性を何倍にも広げるための、いわば挑戦の対象だったということなんです。
ここで培われた技術は、ノーチラス以降に開発されたメンズ・レディースウォッチにも受け継がれており、パテック フィリップのステンレス加工そのものが、ひとつの技術的な財産になっているといえるでしょう。
こうした背景を踏まえると、ステンレスモデルの価値は、単なる「希少だから高い」という需給の話だけでは語りきれない部分がある、ということが見えてきます。
素材そのものへの向き合い方、そこに投じられた職人の手間、その積み重ねがあってこそ、ステンレスケースのパテック フィリップは、貴金属モデルとはまた違った軸で評価されているんですよね。
希少性と技術力、この両方が重なり合っているからこそ、SSケースのパテック フィリップは、単なる"安価な選択肢"では決してない、独自の価値を持つ存在になっているといえるのではないでしょうか。
特に1970年代以前に製造されたヴィンテージのステンレスモデルについては、現代のような大規模な需要を見越して作られたものではなく、当時の限られた生産体制の中で、一つひとつ丁寧に仕上げられてきた個体なんですよね。
現代の量産技術とは異なる、当時ならではの手作業の積み重ねが、ヴィンテージのステンレスモデルに独特の風合いを与えているともいえるでしょう。
この技術的な背景を知ったうえで一本のステンレスモデルと向き合うと、そのケースが放つ輝きの見え方も、また少し変わってくるのではないでしょうか。
では次に、実例紹介 カラトラバ Ref.3579A-201に見るSSケースの希少性と信頼性!という内容で解説して参ります。
実例紹介!カラトラバ Ref.3579A-201に見る、SSケースの希少性と信頼性
ここまでお話ししてきた「パテック フィリップにおけるステンレスの希少性」を、実際の個体を通してご紹介して参ります。
ベルモントルで現在お取り扱いしている、カラトラバ Ref.3579A-201という一本なんですが、1970年代に製造されたこのモデルは、前述した通りパテック フィリップにおいて極めて珍しいステンレス製のカラトラバで、製造本数は150〜200本とされています。
なお、当初は日本市場に限定して販売されたという噂もあったそうですが、複数の海外サイトを確認したところ、そうした事実は確認できなかったとのことです。
このRef.3579A-201の大きな特徴は、パテック フィリップ社による正規オーバーホール時に発行された「修理明細書」が付属している、という点なんですよね。
腕時計には、真贋や機械の状態に対する不安がつきまとうものですが、この一枚の書類が、その個体がパテック フィリップ社自身によって本物であると認められ、なおかつ同社の厳格な基準において良好な状態に修理されたことを示しています。
ケースデザインに関しても、1970年代のモダニズムを象徴する、トノー型が採用されており、径33mm(横)×38mm(縦)、ラグ幅18mmという、当時ならではのサイズ感を持っています。
ムーブメントは手巻きのCal.23-300PMで、パテック フィリップ正規オーバーホール済みということもあり、精度は日差0〜+20秒という水準を保っています。
この一本は、これまでお話ししてきた「ステンレスケースの希少性」と「パテック フィリップ社正規の技術的裏付け」という、二つの要素が重なり合った、分かりやすい実例だといえるでしょう。
見た目の希少性だけでなく、メーカー自身による品質の証明書が付属しているという点は、ステンレスモデルを検討する際の、ひとつの安心材料にもなるのではないでしょうか。
なお今回の個体につきましては、メーカー自身による記録という、これ以上ない裏付けがすでに揃っている為、弊社では裏蓋を開けての確認や、アーカイブの取得は行っておりません。
ベルモントルの視点
パテック フィリップにおけるステンレスモデルの希少性は、単に「数が少ないから」という理由だけで語れるものではありません。
もともと金無垢やプラチナを主軸としてきたブランドの中で、あえて異色の存在だったステンレスが、ノーチラスの成功によって主役級の存在へと変わっていった、という歴史的な経緯があります。
そこには、約55工程に及ぶ手仕上げという、貴金属にも劣らない職人の技術が込められており、単なる「安価な代替素材」ではないことが分かります。
今回ご紹介したカラトラバ Ref.3579A-201も、製造本数150〜200本というステンレスならではの希少性に加え、パテック フィリップ社正規の修理明細書という裏付けを持つ一本です。
視聴者様がステンレスモデルのパテック フィリップと出会う際には、こうした背景も含めて、その一本の価値を感じていただければと思います。
ベルモントルでは、これからもこうした一本一本の背景を丁寧にお伝えしながら、皆様の腕時計選びに寄り添って参ります。