オーデマ ピゲにロイヤルオークがあるのに、なぜパテックの方が"上"なのか?
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日は「オーデマ ピゲにロイヤルオークがあるのに、なぜパテックの方が"上"なのか」という内容でお話しして参ります。
雲上ブランドという括りで語られることの多いオーデマ ピゲとパテック フィリップなんですが、実際に皆様もなんとなく気がついてると思うんですが、ロイヤルオークがアホみたいに売れてるから、オーデマってワンチャンあるんじゃない!?
とか、
パテックを越えてるとまでは行かなくても、実際のところもう肩を並べてるんやない・・・・とですね。
この疑問、実はとても本質的なところを突いていまして、本日はその理由を実際の数字とデータから紐解いていきたいと思います。
今日のこの動画なんですけども、これら2社のパワーバランスとともに、追加してもう1つの超巨大ブランドの序列がまた変わっているので、そこもかなり意外に感じると思います。ぜひとも最後まで聞いてください。
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それでは話を進めて参ります。
オークション最高落札額を比較すると圧倒的な差がある

まず数字で見ていきたいのが、オークションでの落札記録なんですよね。
パテック フィリップの腕時計における史上最高額は、2019年のOnly Watchチャリティオークションで落札されたグランドマスターチャイム、ステンレススチール製の一本でして、その価格はスイスフランで3,100万フラン、日本円にして約33億9,800万円という金額なんです。

この金額は今も腕時計オークションの世界記録として残り続けているんですよね。
さらに直近の話をしますと、2025年11月にもう一つ大きな記録が生まれています。
ステンレススチール製としては世界に4本しか存在しないとされる希少なパテック フィリップRef.1518が、1,780万ドル、日本円で約26億6,400万円という価格で落札され、パテック フィリップとして単体では史上最高額の腕時計になったんです。

このRef.1518という個体は、1940年代に製造されたクロノグラフでして、通常はゴールドケースで作られるところを、ごく一部のみステンレススチールで特別に仕立てられた希少な一本なんですよね。
こうした異例の素材選びそのものが、コレクターの間で高い評価を集める理由になっているといえます。
一方でオーデマ ピゲの方はどうかといいますと、腕時計単体でのオークション記録は、ヴィンテージのロイヤルオーク Ref.5402ST、通称「A2」という個体でして、こちらは107万3,319ドル、日本円で約1億3,800万円で落札されたのが最高額なんですよね。

このロイヤルオークのA2という個体は、1972年のバーゼルフェアで発表されたロイヤルオークとしては2本目に作られた個体とされていて、2022年5月にPhillipsで落札され、ヴィンテージのロイヤルオークとしては世界記録を樹立した重要な一本なんです。
腕時計単体という同じ条件で金額を比べてみると、パテック フィリップのRef.1518はオーデマ ピゲのA2のおよそ19倍、そしてグランドマスターチャイムにいたっては、およそ25倍という、かなり大きな開きがあるんですよね。
ちなみにオーデマ ピゲにも、実はもっと大きな金額の落札記録がありまして、2025年12月にサザビーズで取引された懐中時計「グロス・ピエス」という一本が、落札額630万ドル、手数料込みで773万6,000ドル、日本円にして約11億5,800万円という価格で取引されているんです。

これは2022年に成約したロイヤルオーク「The A2」の記録を大幅に更新するものだったんですが、ここで注意していただきたいのは、これは腕時計ではなく懐中時計での記録だという点なんですよね。
腕時計という、私たちが実際に日常で身につけるカテゴリーに絞って比較すると、パテック フィリップとオーデマ ピゲの間には、オークションという舞台において歴然とした差があるといえます。
この差がどこから生まれているのか、そしてこの差が本当にブランドとしての実力差をそのまま反映しているのかどうか、次の見出しで解説して参ります。
2025年の売上高を見ると、実はAPがパテックを上回っている?
ここまで、オークション記録という指標を見てきましたが、パテック フィリップが大きくリードしているという結果でした。
ただ、ここからが今回一番お伝えしたい部分でして、実は売上高という指標だけを見ると、この関係が逆転するんですよね。
ではこちらの画像をご覧ください⬇️

2025年の推定データによりますと、パテック フィリップの年間売上高は約25億スイスフラン、日本円で約4,885億円とされています。
一方のオーデマ ピゲはといいますと、年間売上高は約26億スイスフラン、日本円で約5,080億4,000万円という推定になっているんです。
つまり、金額だけで比べると、2025年はオーデマ ピゲの方がパテック フィリップよりもわずかに売上高が上だったということになるんですよね。
これは多くの方の直感とは、かなりズレる事実なんじゃないかと思います。
なお、この数字はMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)とLuxeConsult(リュクスコンサルト)による業界レポートに基づくもので、複数の独立したメディアが同じ調査を引用しているため、比較的信頼性の高いデータだといえます。
なぜこの逆転が起きているのか、生産本数を見ると理由が見えてきます。
パテック フィリップは2025年に約7万2,000本を生産したと推定されていまして、この本数に対して約25億スイスフランの売上を上げているんですよね。
一方のオーデマ ピゲは、生産本数を約5万3,000本に絞り込んでいまして、パテックよりも2万本近く少ない本数でありながら、平均単価が5万1,000スイスフラン超、日本円にして約997万円という高い水準を保っているんです。
この結果、本数では劣るものの、売上高ではパテックをわずかに上回るという状況が生まれているんですよね。
さらにこの数字が意味するところとして、モルガン・スタンレーとリュクスコンサルトが2026年2月に発表した「第9回Annual Swiss Watcher」レポートによりますと、オーデマ ピゲは2025年、この売上高をもってパテック フィリップと共にオメガを抜き、スイス腕時計業界における売上高で第3位のブランドに浮上したという事実もあるんです。

※出典:watches

※出典:モルガン・スタンレー
これは、ロレックスやカルティエに次ぐ、非常に大きなポジションといえます。
ちなみにこちらはモルガン・スタンレーからの引用となりますので、詳細が気になる方は概要欄のリンクからご覧ください。
そしてここが一番気になる点だと思われますが、今回の動画で、そして私も調べているうちにかなり驚いた部分なんですけれども、序列の入れ替わりが行われております。
これまでは1位がロレックス、2位がカルティエ、3位がオメガというふうに話してきたんですけども、最新の情報だと以下のようになっております⬇️
1. ロレックス
2. カルティエ
3. オーデマ ピゲ
4. パテック フィリップ
5. オメガ
このように、3位がオーデマ ピゲ、4位がパテック フィリップ、5位がオメガという風になっております。
ここで私が驚いたのが、前述した通り、売上で見ればオーデマ ピゲが少しだけパテック フィリップを上回って3位に来ていること。
そして、圧倒的にオメガは強いと思っていたんですが、今はオーデマ ピゲとパテック フィリップにも抜かれているということですね。
つまりオーデマ ピゲは、ロイヤルオークというそのモデルに依存しているように見えて、実際には「本数を追わず、高い単価で確実に売る」という戦略が、しっかりと数字として結果を出しているブランドだったんですよね。
オークション記録という指標では見えてこなかった、オーデマ ピゲの実力がここに表れているといえるのではないでしょうか。
それでは、なぜ売上高では互角、あるいはAPが上回っているにもかかわらず、世間的な"格"のイメージではパテック フィリップの方が一歩上に見られ続けているのか。
次の見出しで、この矛盾の理由を考えていきたいと思います。
なぜ数字と"格"のイメージが一致しないのか?その理由を考える
ここまでの数字を整理すると、少し不思議な状況になっているんですよね。
オークション記録では腕時計単体でおよそ19倍から25倍という差でパテック フィリップが上回っている一方で、肝心の売上高ではオーデマ ピゲの方がわずかに上回っているという状況です。
それなのに、業界内でも一般消費者の間でも「パテックの方が格が上」というイメージは、依然として揺るがないんですよね。
この理由を、いくつかの角度から考えてみたいと思います。
まず一つ目が、オークションという舞台そのものが持つ、情報の拡散力の違いなんです。
数十億円規模の記録が生まれると、そのニュースは世界中の腕時計メディアや一般メディアにまで取り上げられ、パテック フィリップというブランド名が繰り返し露出されることになるんですよね。
一方でオーデマ ピゲのロイヤルオークが取引される様子は、コレクター向けメディアでは話題になっても、パテックの数十億円規模の記録ほどの拡散力は持ちにくいんです。
金額がデカすぎてイメージが湧かないみたいな感じでしょうね。
つまり、実際の取引の厚みとは別に、"象徴的な一件"がブランドイメージを作り上げてしまうという側面があるんですよね。
要するに、落札価格がデカ過ぎると私たちはその金額を見ただけで、『やっぱりパテックはそうだよね』って認識するわけですよ。
そして、その認識がそのままパテックの格の連想につながっているのではないかと考えています。
二つ目が、複雑機構という分野における蓄積の差なんです。
この前も複雑機構について私なりに解説しましたが、パテック フィリップは、ミニッツリピーターやパーペチュアルカレンダーといった伝統的な複雑機構を、何十年にもわたって作り続けてきました。
こうした複雑機構は、時計製造における技術の頂点として位置づけられることが多く、業界内での評価軸そのものが、パテックの得意分野に寄っているという構造があるんですよね。
三つ目が、生産本数を絞るという戦略が生む、稀少性の物語の強さなんです。
パテック フィリップは"必要としている以上には作らない"という考え方を長年貫いてきたブランドでして、この姿勢そのものが「手に入りにくいものほど価値が高い」という、コレクター心理に強く働きかけてきたんですよね。
オーデマ ピゲも生産本数を絞ってはいるものの、ロイヤルオークという一つのモデルにこの稀少性の物語が集中してしまっているため、ブランド全体としての稀少性のイメージにはつながりにくいという面があるといえます。
こうして見てくると、"格"という感覚は、単純な売上高や生産本数だけで決まるものではなく、歴史の積み重ね、複雑機構への投資、そして稀少性をどう物語として伝えてきたか、こうした要素の総合で作られているんですよね。
数字の上では互角に近づいてきているオーデマ ピゲですが、この"物語の厚み"という部分では、まだパテック フィリップに優位性あるというのが、今回調べてみての率直な実感です。
しかし、2030年になったときにオーデマの売り上げがパテックを引き離していたら、また違ったブランドイメージになると思います。
ではいつも通り、最後にベルモントルの視点をお話しして締めくくりと致します。
ベルモントルの視点
ここまで、オークション記録、売上高、ブランドのイメージという3つの指標からパテック フィリップとオーデマ ピゲを比較してきました。
数字を並べてみると、単純に「パテックが上、APが下」という話ではなく、指標によって答えが変わる、非常に立体的な力関係が見えてきたんですよね。
これは、ベルモントルが日々ヴィンテージ腕時計を仕入れる中でも、まさに実感していることなんです。
私たちが商品を選ぶ際、単純な相場や知名度だけで判断することはありません。
その一本が持つ歴史、製造背景、そして市場でどのように評価されてきたかという、複数の軸を重ね合わせて価値を見極めているんですよね。
今回のパテック フィリップとオーデマ ピゲの比較で見えてきたことは、まさにこの姿勢の重要性を裏付けるものだったと思います。
オークション記録という華やかな指標だけを見れば、パテック フィリップの優位性は疑いようがありません。
ですが、売上高という地に足のついた指標では、オーデマ ピゲが着実にその実力を示しているんですよね。
ベルモントルでは、こうした複数の視点を持つことを大切にしていまして、パテック フィリップの伝統や複雑機構への深い敬意を持ちながらも、オーデマ ピゲのロイヤルオークが持つ独自の価値、そして"本数を追わず高い単価で確実に売る"という戦略が生み出してきた品質の高さも、正しく評価したいと考えています。
派手な数字の裏側にある、それぞれのブランドが積み重ねてきた哲学や戦略にこそ、本当の価値が宿っているんですよね。
もし今回の内容を通じて、パテック フィリップやオーデマ ピゲそれぞれの魅力に改めて興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度店頭で実機をご覧頂ければ幸いです。
数字やデータだけでは伝わらない、実際に手に取った時の重み、佇まい、そして仕上げの丁寧さといった部分は、やはり実物でしか確かめられないものだと考えています。