スーツに合う腕時計と、私服に合う腕時計の選び方は根本的に違う!?
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日の動画では、スーツに合う時計と、私服に合う時計の選び方は根本的に違う、という内容で解説して参ります。
「この時計、スーツに合いますか?」「普段着にも使えますか?」という質問を、お客さまからよくいただきます。
一見シンプルな質問に見えますが、実はこの問いの中に、時計選びの本質的な難しさが凝縮されています。
スーツのときと私服のとき、時計に求めるものはまったく違います。
そしてその違いを理解せずに時計を選ぼうとすると、「どれが正解か分からない」という状態が生まれるんですね。
逆に言うと、この違いを理解した瞬間に、自分が本当に必要な時計がかなり明確に見えてくるんです。
今日はその違いを、できるだけ具体的にお伝えします。
時計を一本に絞りたい方にも、シーンで使い分けたい方にも、役に立つ内容にしたいと思っています。
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それでは話を進めて参ります。
スーツのときの腕時計の選び方
まずスーツのときの時計選びから整理していきましょう。
スーツというのは、ある意味で「社会的な自分」を表す服装だと思っています。
仕事の場面、改まった席、人と会う場面などなど、そういうシーンで着るものですから、時計もその場の雰囲気に収まっている必要があります。
ここで多くの方が少し勘違いされているなぁ・・・と感じるのは、スーツのときこそ「良い時計を見せる場面」だと思ってしまうことです。
確かに間違いではないんですが、スーツに合う時計の本当の役割は、主張することではなく、全体の完成度を静かに上げることにあるんじゃないかと思っています。
高級時計や良い時計を着用していると、なんとなく「この人はすごい」という雰囲気が出てくるものですし、それを自分の口で説明することなく表現できるメリットもありますよね。
ただ、私はそうではないと思っているんですよ。
具体的に言うと、スーツスタイルに時計が合っていると言うのは、その時計は最初から全部が見えていない方が理想的なんですよね。
なんだけど、ちょっとした動作の時に袖口からちらりと見える。その瞬間に「あ、いい時計だな」と感じさせる。
その控えめな存在感が、スーツとの相性の良さに直結しているように感じています。
だから、あくまで時計は何も語る事なく、ただ単に視聴者様をさりげなくちゃんとした人に見せるアイテムに徹して欲しいわけです。
そう考えると、スーツに合う時計に求められる条件がある程度見えてきますよね。
まずケースの薄さです。
スーツの袖口はそれほど余裕があるわけではないので、厚みのある時計だとどうしても袖に引っかかる感じが出てしまいます。
薄い時計が袖口にすっと収まる感覚は、それだけで着こなしの精度が上がるように思っています。
次にケースのサイズです。
近年でもまだまだ大径ケースが人気が続いていますが、スーツスタイルに関して言うと、前述した通り、大きければ大きいほど良いというわけではないと感じています。
40mmを超えてくると、袖口からケースが主張しすぎてしまって、スーツ全体のバランスが崩れることがあります。
36mm前後、あるいはそれ以下のサイズ感が、スーツには馴染みやすいんじゃないかと思っています。
そしてデザインのシンプルさですよね。
スーツというのはそれ自体がすでに完成されたフォームを持っていますから、時計のデザインが複雑すぎると、そこだけ浮いて見えることがあります。
余計な装飾を削ぎ落とした時計ほど、スーツの中に自然に溶け込んでいくように感じています。
では次に、その反対側にある私服のときの腕時計の選び方!と言う事について解説して参ります。
私服のときの腕時計の選び方
では私服のときはどうかというと、スーツの時とはかなり判断軸が変わってくると思っています。
私服というのは「個人としての自分」を表す服装ですよね。
社会的な役割や肩書きとは切り離された、素の自分を出せる場面です。
だから時計もその中で、より自由に選べるはずなんですが、実際には「私服に合う時計が分からない」とおっしゃる方もまぁまぁいらっしゃいます。
これは不思議なようで、よく考えると理由が分かる気がしています。
スーツの場合は「スーツに合わせる」という明確な基準があります。
でも私服の場合、その基準が人によってまったく違うんですよね。
カジュアルな方もいれば、きれいめな方もいます。
Tシャツとデニムが多い人もいれば、テーラードジャケットを私服に取り入れる人もいます。
その多様性の分だけ、「正解」が分かりにくくなっているんじゃないかと思っています。
ただ私服のときの時計選びには、スーツのときとは違う面白さがあります。
それは腕時計が「主役になれる」場面だということです。
スーツのときは時計が全体に溶け込むことが理想でしたが、私服のときはむしろ腕時計が会話の起点になることがありますし、それを狙うことも全く違和感はありません。
「その時計、どこで買ったんですか?」という話が自然に生まれますよね。
そういう意味では、個性や物語を持った時計が、私服のときにはより活きてくるんじゃないかと考えています。
ただここで一つ気をつけてほしいことがあって、それは「主役」と「悪目立ち」は全然違うということですよね。
ギンギラの腕時計は、確かに存在感は出ますが、それが周囲から見て「センスがいい」と映るかどうかは別の話だと思っています。
私服に時計が合っているとき、その時計はその人の全体の雰囲気と対話しているような状態になっているんですよね。
時計だけが浮いているのではなく、その人の着こなし・佇まい・生き方と、腕時計がなんとなく、つながって見える。
その状態が、私服と腕時計の理想的な関係じゃないかと感じています。
こんな感じでですね、ある程度の正解が決まってない分、スーツスタイルよりも選ぶのが難しくなってしまうんですが、色々喋ってきた私の見解では、好きなものを着用すればいい!ってことです。
タンクはカジュアルに合うかなぁ・・・カジュアルならサントスかなぁ・・・などなど色々迷いが出てしまうことでしょうが、ヴィンテージウォッチを着用してれば、ほとんどの場合で、上手く馴染んで整えてくれるんですよね。
こちらの時計好きとおしゃれな人、選び方はここが違う!
と
その選び方だと失敗します!スポーツとドレスどっちがいい!?
これら2つの動画にまとめておりますので、是非ともこちらも概要欄からご覧くださいませ。
では次に、なぜこれら2つは根本的に違うのか!?と言う事について解説して参ります。
なぜこれら2つは根本的に違うのか!?
ここまでスーツと私服それぞれの時計選びを整理してきましたが、では具体的に何が根本的に違うのか、という話をしたいと思っています。
一言で表すとすると、スーツのときの時計選びは「引き算」で、私服のときの時計選びは「対話」なんじゃないかと感じています。
スーツのときは、時計がスーツという完成されたフォームの中に収まる必要があります。
だから余計なものを削ぎ落として、全体の邪魔をしない形に着地させていく必要があります。
これは引き算の作業です。
ケースが大きすぎないか、デザインが主張しすぎないか、厚みが袖口に引っかからないかなどなど、そういう「引いていく」判断の積み重ねが、スーツと腕時計の相性を決めていくように思っています。
一方で私服のときは、時計と服装が対等に会話している状態が理想だと感じています。
時計が服に従うのでも、服が時計に従うのでもなく、お互いがお互いの個性を引き出し合っているような関係ですね。
これは引き算というより、掛け合わせに近いイメージかもしれませんね。
この違いが分かると、なぜ「スーツにも私服にも合う腕時計」を探すのが難しいのかも見えてきます。
引き算と対話では、時計に求めるものの方向性が根本的に違うので、両方を完璧に満たす一本というのは、そう簡単には見つからないんですよね。
別の言い方をするのであれば、スーツのときに求めるのは「溶け込む力」だと思っています。
その場の空気を壊さず、でも確かな存在感を静かに放っているのがスーツには合うと感じています。
対して私服のときに求めるのは「語りかける力」じゃないかと思っています。
この時計にはこういう背景があって、こういう理由があって選んだぁ。みたいな。
普段から定期的に喋ってる事ですが、自分が自信を持って着用している時計が1番似合う状態なんですよね。
なぜなら、それが自信に繋がるからです。
自信があると、姿勢は正され、それが良い印象につながるからです。
それが視聴者様のベースを押し上げて、私服との相性の良さに直結しているように感じています。
ただ一つ付け加えておくと、高い腕時計がスーツ向きで、カジュアルな腕時計が私服向き、というわけではないと言う事です。
前述した通り、ヴィンテージの薄型時計が私服のデニムスタイルに驚くほど合うことがありますし、逆にスポーティなモデルがスーツに綺麗にはまることもあります。
大切なのはジャンルや価格ではなく、その時計が持っている「溶け込む力」と「語りかける力」のバランスがどこにあるか、だと思っています。
では次に、さっき少し出てきた「これらは1本の時計で両立出来るのか!?」と言う事について解説して参ります。
これらは一本で両立できるのか!?
ここまでの話を聞いて、「じゃあスーツにも私服にも合う時計は存在しないのか!?」と思った方もいるかもしれません。
そこについて、私なりの考えをお伝えして参ります。
結論から言うと、一本で両立できる時計は存在すると思っています。
ただし、条件があります。
では具体的にどういう時計がその条件を満たしやすいのかというと、私の経験上、いくつかの共通点があります。
まず1つ目は、ケースがコンパクトで薄いことです。
これはスーツの袖口に収まりやすいという実用的な理由もありますが、それ以上に、サイズと薄さが抑えられた腕時計というのは、どんなシーンにも溶け込みやすい普遍性を持っているように感じています。
存在感を主張しすぎないから、スーツにも私服にも自然に馴染んでいくんですよね。
2つ目は、デザインに時代を超えた普遍性があることです。
流行に乗ったデザインの腕時計は、その流行が生きているうちはとても魅力的に見えます。
流行というブーストがかかってる状態ですからね。
ただスーツと私服の両方の場面で長く使い続けることを考えると、時代を問わず成立しているデザインのほうが、圧倒的に使い勝手が良いんじゃないかと思っています。
3つ目は、どこかに手仕事の痕跡があることです。
現代の時計は製造技術が非常に高度になっていて、均一で完璧な仕上がりのものが多くなっています。
それはそれで素晴らしいことなんですが、人の手が関わった質感を持っている時計のほうが、もっと奥行きがあるので飽きがこないというか、どんなシーンで着用してても高揚感を感じられるはずです。
この3つの条件を満たしている腕時計として、私がよく思い浮かべるのがヴィンテージのレクタンギュラーケースや薄型のラウンドケースです。
たとえばカルティエのタンクやサントスデュモンのようなモデルは、スーツの袖口に収まったときの佇まいも、私服のジャケットから覗くときの表情も、どちらも整っているんですよね。
これはデザインの普遍性と、ケースの薄さと、80年代に作られた小径時計の品格が、ちょうど良いバランスで揃っているからじゃないかと感じています。
一本で両立することにこだわりすぎる必要はないと思っていますが、もし「一本で長く使いたい」という方がいるとすれば、この三つの条件を軸に探してみると、答えが見えやすくなるんじゃないかと思っています。
では最後に、私自身の考え方と言う事について、解説して参ります。
私自身の考え方
少し個人的な話をさせてください。
私がヴィンテージ時計を扱う仕事をしていて、スーツと私服の両立という観点から改めて在庫を眺めてみると、ヴィンテージの薄型時計というのはこのテーマに対して納得出来る答えを持っているんじゃないかと感じるます。
現代の時計は全体的にケースが大きく、厚みのあるモデルが多い傾向にありますよね。
それはそれで一つの魅力だと思っていますが、スーツと私服の両方で違和感なく使いたいという方にとっては、むしろヴィンテージの薄型のほうが選択肢として優れている場合が多いんじゃないかと感じています。
たとえばカルティエのサントスデュモンというモデルがあります。
これはフレデリック・ピゲのCal.21という非常に薄いムーブメントを搭載していて、ケース全体の厚みが抑えられています。
映像で見るよりも激薄なので、スーツの袖口にすっと収まりながら、私服のジャケットスタイルにも自然に溶け込んでくれます。
これはデザインの話だけではなくて、物理的な薄さが生み出す普遍性だと思っています。
ピアジェの薄型モデルも同じようなニュアンスで語れるんですが、ピアジェが薄さにこだわり続けてきた背景には、単なる技術的な挑戦以上のものがあります。
「薄い時計というのは身につけていることを主張しない時計である」、というのがピアジェの持っている美学であり哲学だからです。
要するに、日本的な感性で言うと「奥ゆかしい」とか「控え目」なって事ですよね。
その美学が、スーツにも私服にも合う!というのを、現しているように思っています。
ヴィンテージウォッチがスーツと私服の両立に向いている理由をもう一つ挙げると、それはデザインがすでに時代の審判を受けているということです。
数十年前に作られて、今もなお美しいと感じられるデザインというのは、流行に左右されない普遍性を証明しているわけですよね。
その普遍性が、どんな場面に置いても違和感を生まない強さにつながっているんじゃないかと思っています。
私がお客さまから「一本でスーツにも普段使いにも合う時計を探している」というご相談をいただいたとき、真っ先に思い浮かぶのは現行の新品モデルよりも、こうしたヴィンテージの薄型モデルです。
価格帯は様々ですが、この条件に正直に答えてくれる時計が、ヴィンテージの世界には思っているよりずっと多くあると感じています。