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Article: モルガン・スタンレーとLuxeConsult『ラックス コンサルト』による「2024年 スイス時計ブランド・トップ50」

モルガン・スタンレーとLuxeConsult『ラックス コンサルト』による「2024年 スイス時計ブランド・トップ50」

動画で『モルガン・スタンレーとLuxeConsult『ラックス コンサルト』による「2024年 スイス時計ブランド・トップ50」』をご覧になる方はこちらから⬇️

ではまずはこちらの画像をご覧ください⬇️

スイス腕時計産業輸出金額推移グラフ

こちらは、スイス腕時計産業輸出金額推移を円換算で表示したグラフです。

本日はモルガン・スタンレー/LuxeConsult(ラックスコンサルタント)の最新レポート(2024年版「トップ50 スイス腕時計ブランド」)を引用する形で、世界では腕時計はどのブランドが強くて、どれくらいのシェアを持っているのか?

そして、最近の傾向はどのようになっているのか?

ということを解説して参ります。

原文の英語の記事はこちらからご覧くださいませ。

スイス時計工業連盟(FHS)が出したデータによれば、グラフを見てみると2020年から右肩上がりだった輸出額は2023年にピークに達し、2024年には、売上の減速傾向が示されています。

成熟、停滞、減速、ビジネス領域で使われるこの3つのワードは、必ずしも業界の危機を意味しないものの、確かに警鐘を鳴らします。

スイスの時計産業はこれまで、地政学的な不確実性、需要の波、消費者嗜好の変化に常に向き合ってきました。

その結果、長期的な収益見通しは健全である一方で、個々のブランドの業績や利益の持続性にはバラつきが見られる状況です。

2022年と2023年は輸出総額がそれぞれ4.61兆円、5兆円と過去最高でしたが、2024年は約3%減の4.8兆円後退しました。


4年連続の力強い成長の後、スイス時計業界は売上面でベストとは言い難い状況にあります。

しかし例外もあり、それは、ご存知の通りロレックスです。

 

 

パフォーマンス・ハイライト:2024年のスイス時計市場

2023年の最終四半期と2024年全体で明らかになったのは、近年で初めて、スイスの時計業界がちょっとした試練に直面しているということです。

ここ数年、コロナ禍とコロナ後の時代について言えば、時計業界は瞬間的な熱狂に見舞われていました。

投機家が参入し、資産としての時計に関わる「投資」という側面が全体的に注目を集めるようになったことで、ブランドは素晴らしい売上を記録し、その結果、一次市場と二次市場で時計の価格が急騰しました。

しかし今、私たちは正気と合理主義の時代に戻り、この段階では、おそらく市場シェアを拡大し続けるであろう強力なブランドと、少し注目されなくなったブランドとの間に明確な分かれ目があります。

2024年はスイスの時計業界にとって厳しい環境となり、上位50ブランドのうち売上が伸びたのはわずか11ブランドでした。

これは市場がますます二極化し、少数のブランドが牽引していることを示しています。

以下は、2023年と比較して2024年に売上が伸びたブランドです。

表の見方ですが、左が売り上げ規模順位であり、これはそのままで例えばロレックスの売り上げは全腕時計ブランドの1位です。

グループはそのブランドが所属しているグループを表しています。

右はその中に入っているブランドですね。

売り上げを伸ばしたブランドは、ここにあるたったの12社なんですね。

 

 

主要ブランドと市場シェアの動向

まずはこちらの画像をご覧ください。

2024年 ブランド別推定小売市場シェア

約400あるスイスの時計ブランドのうち、上位4ブランド(ロレックス、カルティエ、オメガ、パテック フィリップ)が総売上高の50%以上を占めています。

たったの4社で腕時計の総売り上げの50%を占めているということなので、この4社が圧倒的に勝ち組ということですよ。

ではこの表を見ながら、主要プレーヤーのパフォーマンスを見てみましょう。

ロレックスは市場全体の32%という大きなシェアを占め、依然としてトップの座を維持しています。

カルティエは依然として強力な第2位の座を維持し、このグループ内での地位を確固たるものにしています。

ですが、それでもロレックスの1/4程度でありまだまだ大きな開きがあることも事実です。


また、パテックフィリップは市場シェアでオメガにかなり接近しており、もしかすると2025年の現時点で逆転が発生している可能性があります。

 

 

次のグラフをご覧下さい⬇️

2024年パテックフィリップの市場シェア

パテック フィリップの市場シェア(6.5%)は現在、ブルガリやタグホイヤーを抱えるLVMHの時計部門全体のシェア(5.7%)をたった1社で上回っています。

オメガ、ロンジン、ブランパンを所有するスウォッチグループとは3倍の差が開いていますが、前述した通りオメガ単独ならほとんど同等のポジションに来ているために、パテックフィリップが力強い伸びを示していることが分かります。

 

プレミアム化のトレンドが加速

腕時計が売れている価格帯の比率

圧倒的勝ち組と、大きな変化のないブランドの2極化と並んでもう一つ非常に重要なトレンドがありそれがプレミアム化です。

元記事では小売価格5万スイスフラン(日本円で約925万円)以上のクラスが市場価値の33.5%を占め、**2024年の市場成長の84%をこの超高価格帯が生み出したと示されています。

冒頭で2023年と比較して、2024年は売り上げが下がっているということを説明しました。

しかし、超高級時計が売れているというのは、どいういうことかと言いますと、つまり、“数より価値”に市場がはっきり傾いているということです。

数量と価値の乖離も明確です。

スイス腕時計の販売本数は縮小が続き、2024年は約1,330万本で前年の1,600万本から減少しました。

もっと長い目で見ると、2011年の約3,000万本から半分以下です。

一方で輸出額(通関ベース)は高水準を保ち、2024年は4.79兆円)2023年は約4.94兆円)、**2022年は約4.61兆円というレンジです。

量は減っているのに、お金の流れは細らない・・・・

ここに1本の時計が高単価になっている裏付けが取れるのです。

機械式に絞ると構造はさらに鮮明です。

2017年:720万本で約2.78兆円に対し、2024年:600万本で約3.89兆円

本数は−17%なのに、収益は+40%**近く増えている計算です。

平均販売単価でみると、2017年の機械式1本あたり約38.5万円が、2024年には約約64.8万円へと大幅に上がっています。

先週もカルティエの新品腕時計がどれくらい値上がりしたのか?

という動画を出しましたが、皆様が感じている昔と比較して時計の価格が高くなっているという実体の感覚は正しいということになります。

 

ブランド側は「多く作って安く売る」から「少数を高単価で売る」へと戦略転換し、カタログの上限価格やスペシャル/限定の比率、複雑機構・貴金属比率を引き上げているわけです。

 

どのブランドが伸びたかという観点では、2024年に“前年から売上を伸ばした”ブランドの例として、ロレックス、カルティエ、オーデマ ピゲ、パテック フィリップ、リシャール・ミル、タグ・ホイヤー、ブルガリ、ヴァンクリーフ、フレデリック・コンスタント、F.P.ジュルヌ、H.モーザー、MB&Fなどが挙げられています。

いずれも高付加価値ゾーンの強化、直営やブティック網の最適化、限定や希少金属の比重アップなど、プレミアム化の波にうまく乗っているのが共通項です。

逆にボリューム帯中心で中価格領域は、本数減の逆風を強く受けています。

要するに、顧客は自分が良いと思っている時計より、1つ上のランクの時計を欲しいと考える傾向があるということでしょう。

結果として、手に届きにくいと感じる価格帯のモデルが増える一方、購入後の資産性や希少性、体験価値はかつてないほど前面に出てきています。


 

 

ブランド別パフォーマンス分析

それではこちらの画像をご覧ください⬇️

腕時計グループ別市場シェア

ロレックスグループ

まずロレックス・グループです。

ロレックス本体は市場シェア32%を維持しつつ、販売本数は124万本から117.6万本へ約5%減りました。

ところが売上高は101億スイスフラン(日本円で約1.87兆円)から1.96兆円へ約5%伸びています。

1本あたり平均単価を見ると、前年は約151万円、2024年は約167万円で、平均単価が約11%上昇しています。

価格改定や貴金属・複雑機構の構成比上昇、直営・ブティックでの在庫配分最適化などにより、「本数は絞っても単価で上げる」戦略が機能した形です。

対照的にチューダーは厳しく、販売本数が25.5万本から16万本へと約4割減、売上高も約1,008億円)から約666億円に縮小しました。

ただし平均単価は約39.5万円から約41.6万円へ小幅に上昇しており、値段を上げたけれどもそれを補えるだけの販売本数を獲得できなかった事が伺えます。

このように、同じグループ内でもロレックスは高付加価値帯のミックス強化で増収、チューダーはボリューム依存の反動を強く受けた、という明暗がくっきり表れました。

 

スウォッチグループ

次にスウォッチグループです。

グループの市場シェアは前年から2ポイント低下して18.3%になりました。

中核のオメガは、販売本数が57万本から50.5万本へ約11%減、売上高も約4,810億円から約4,421億円へ減少しています。

ただし平均単価は約84.4万円から約87.6万円へ約4%上昇しており、上位ラインや貴金属モデルでの単価は底堅い動きです。

ボリューム帯のロンジンは中国の減速直撃で本数が95万本まで落ち、約4割減の打撃となりました。

上位高級ライン内でも差が顕著でした。

ブレゲは販売本数が2万本から7,400本へ約63%減、売上高も約388.5億円から約305.3億円)へ縮小しました。

興味深いのは平均単価で、前年2023年の約194万円から2024年は約412万円へと倍増しており、販売規模を大きく絞りつつ超高価格帯へ寄せたことが読み取れます。

ブランパン、ハミルトン、ティソなども総じて本数は減り、ボリューム依存ブランドほど数量減の逆風を受けやすい一年でした。

スウォッチグループはグループとして数量調整の影響が出る一方、各ブランドの価格帯ポジショニング次第で**「本数減でも単価アップで金額を維持もしくは補う」動きがはっきりしました。

これが、いまの市場を押し動かしているプレミアム化の実像です。

 

 

 

リシュモン・グループ

次にリシュモングループです。

まずランキング2位のカルティエは好調で、販売本数を伸ばしておよそ68万本に達しました。

ジュエリー由来の強いブランド力が時計にも波及していると見られます。

一方、いわゆる名門時計ブランドでは明暗が分かれました。

ヴァシュロン・コンスタンタン(8位)は販売本数が約3.5万本から約3.1万本へとやや減少。

注目すべきは売上高で、長らく目安とされてきた「10億スイスフラン/約1850億円」のラインを下回り、約9.42億フラン/1743億円となりました。

いわゆる“ビリオネアズ・クラブ”(年商10億フラン超の層)から一旦外れた形で、ブランドの価格帯や供給の設計をどう立て直すかが焦点になります。

IWC(14位)も13.7万本から12万本へ、ジャガー・ルクルト(15位)も約9.7万本から約7.9万本へと、それぞれ販売本数が縮小しました。

総じて、リシュモン傘下の“専業系”は2024年やや厳しい一年だったと言えます。

しかし、グループ全体で見れば、圧倒的な差が開いていたスウォッチグループにかなり迫っており、こちらももしかすると、今の時点で逆転が起こっているかもしれません。

 

最後に独立系について触れます。

F.P.ジュルヌ、H.モーザー、MB&Fといった独立系の一部は伸びた側に入っています。

生産本数は極めて小さいものの、希少性の高い複雑機構や限定ピースで高い平均単価を確保し、超高価格帯セグメントの成長を取り込んだ格好です。

つまり、全体像は「数量は縮むが価値は濃くなる」。

グループ間・ブランド間の差は、この“どの価格帯を取りにいくか”という設計の精度で決まっている、というのが2024年の実相だと言えるでしょう。

 

 

独立系ブランド

オーデマ ピゲ

オーデマ ピゲは市場全体の下降傾向に逆らい、力強い成長軌道を継続し、2024 年には 製造本数が51,000 個に到達します。

 

パテック フィリップ

 2021年から2023年にかけて堅調な業績を示した パテック フィリップは、売上高と収益が増加し、2024年には7万2000個に達しました。

 

ブライトリンググループ

販売個数は減少したものの、ブライトリングは2021年から2023年にかけて収益が増加しました。

2024年の販売個数は16万個で成長を維持しています。

 

 

つまり、全体像は「数量は縮むが価値は濃くなる」。

グループ間・ブランド間の差は、この“どの価格帯を取りにいくか”という設計の精度で決まっている、というのが2024年の実相だと言えるでしょう。

 


 

これらの傾向から考える今後の重要な観察

高級品への重点がより高まるにつれ、量より売り上げを優先する傾向が明らかに見られ、多くのブランドが停滞または減少する販売個数を相殺するために値上げを実施しています。

時計市場全体が量の面で減少しているため、ブランドは望ましい収益を引き付けるために価格を引き上げてきました。

より広い視点で見ると、スイスの時計ブランドは2011年に合計2,980万個の時計を輸出しました。

2020年にはその数は半分以下に落ち込み、わずか1,380万個の時計が輸出されました。

2024年には、販売個数は1,336万個とさらに減少します。

これは、顧客の嗜好がより高価なモデルに移行したか、モデル自体が高価になったか、あるいはその両方を示している可能性があります。

いずれにせよ、利益率は大幅に向上しており、時計の販売数は減少しているにもかかわらず、業界全体としては概ね好調です。

また、オーデマ ピゲ、パテック フィリップ、リシャール・ミルの好調な業績は、現在の市場環境において、高級独立時計メーカーの揺るぎない魅力を浮き彫りにしています。

スイス時計業界全体が減速局面を迎えている一方で、時計市場は依然として堅調であり、慎重な戦略策定によって、確実に成長が見込まれるという楽観的な兆候を示しています。

 

ここまで動画をご覧になりいかがでしたでしょうか。

腕時計が高くなったなぁ・・・と実感するのはブランド側の意図的な戦略の中に、この傾向は今後しばらく続いていくでしょう。

ただし、私たちが考えないといけないのは、この上昇にどれだけの人がついていけるのか?

というところです。

安いものが高くなったのとは話が違います。

高いものがさらに高くなっていってる昨今では、私たちの腕時計の買い方が変わっていくきっかけになるのかもしれません。

 

 

 

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