ヴァシュロンコンスタンタンが採用したジャガールクルトの手巻きムーブメント
ヴァシュロン・コンスタンタンの時計に欠かせない魅力のひとつとして、ジャガー・ルクルトのムーブメントを採用した傑作ムーブメントの数々が挙げられます。1938年以降、ジャガー・ルクルトとの提携により、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計には優れたムーブメントが搭載されるようになりました。優秀なムーブメントメーカーと提携することで、同社の時計製造数は提携以前のほぼ倍増し、製造面での大きなメリットがもたらされました。また、ジャガー・ルクルトが腕時計用ムーブメントの開発に注力していたことにより、ヴァシュロン・コンスタンタンの紳士用腕時計のラインナップも豊富になったのです。
供給されたムーブメントには、ルクルトでも使用されたものもあれば、調整機構をスワンネック緩急針に変更し、耐震装置を追加した高級仕様に改められているものも多く存在しました。また、ジャガー・ルクルトではほとんど使用された記録がない専用のムーブメントも供給されており、これは両社がそれぞれのブランド価値を理解し、そのメリットを最大限に活用しようとしていたことの証といえるでしょう。このため、ヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計の魅力を語る際、ムーブメントは欠かせない要素となっています。
例えば、手巻きムーブメントにおいては、1940年頃から1960年代にかけて、少なくとも20種類近くのムーブメントが供給されました。ジャガー・ルクルトでは、機能の追加やマイナーチェンジの際にも新たなキャリバーナンバーを付与していたため、結果として多くの種類が生まれたのです。ただし、それらの多くはジャガー・ルクルトの「Cal.449」にルーツがあり、さらにその発展形として「818」が派生しています。ヴァシュロン・コンスタンタンでは、「449」が「453」というインハウスナンバーとして与えられました。二つの基本構造は同じですが、スワンネック緩急針や耐震装置を装備した高級仕様となっているため、見た目は異なる印象を与えます。
また、ジャガー・ルクルト製の優れたムーブメントが他の高級時計ブランドにも採用されていたことは、同社の信頼性の証です。例えば、オーデマ ピゲもジャガー・ルクルト製の「818」「819」「803」などを採用しており、それぞれ「2001」「2002」「2003」といったナンバーが付与されていました。
Cal.454
ジャガー・ルクルトの「Cal.449」のセンターセコンド版「450」をベースにしており、毎時18,000振動で動作します。モノメタルテンプに加え、微調整が可能なスワンネック緩急針を備えています。ヨーロッパ市場で展開されたヴァシュロン・コンスタンタンでは、5姿勢での調整が施され、高級機としての美観と性能を兼ね備えています。
Cal.1001
ジャガー・ルクルトの「Cal.818」をベースとした薄型ムーブメントで、毎時18,000振動、17または18石の仕様です。1959年(異説あり)に製造が開始され、その後主力キャリバーとして位置づけられました。サイズが小型化され、立体的なケースデザインが可能となり、ジュネーブ・シールも取得しています。