文字盤に何もない腕時計ほどモノ作りの差が出るのか?
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日は『文字盤に何もない腕時計ほど、モノ作りの差が出るのか?』という内容でお話しして参ります。
複雑なクロノグラフや、ダイバーなど多くの機能が実装された文字盤は、それだけで見応えがあり、視線を惹きつけてくれます。
一方でドレスウォッチのように、時針・分針とシンプルなインデックスだけで構成された文字盤は、一見すると物足りなく感じられるかもしれません。
ただ、この「何もない」という状態こそが、実は作り手の技術力を、そのままに映し出す舞台になっているんですよね。
今回は、情報量の少ない文字盤ほど、なぜモノ作りの差が目立ってしまうのかを、一緒に確認していきましょう。
腕時計というのは本来、値段やブランド名だけでは、その一本が本当に納得できるかどうかは、決まらないんですよね。
その一本が持つ背景まで見えてきたときに、初めて『これだ』と思える自分の一本に出会えるんですよね。
そういった自分だけの1本をお探しの方は、是非とも青山にある店舗までお越し下さい。
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それでは話を進めて参ります。
なぜ情報が少ないほど、作りの差が目立つのか?
まず、なぜ情報量の少ない文字盤ほど、作りの差が目立ってしまうのか、その理由から見ていきます。
複雑な文字盤には、複数のサブダイヤルや、複数の針、細かい目盛り、色分けされた表示など、視線を分散させる要素がたくさんあります。
仮にどこか一箇所の仕上げが甘くても、他の要素に目移りしているうちに、その粗さは見過ごされやすいんですよね。
一方でドレスウォッチのような、時針・分針とインデックスだけのシンプルな文字盤には、視線を逃がす場所がありません。
要するに、ごまかしを効かせる部分がないと言うことです。
針の形、インデックスの並び、文字盤の質感、これら数少ない要素の一つ一つに、見る側の視線が集中してしまうんです。
だからこそ、少しでも歪みや粗さがあると、それがすぐに目についてしまうんですよね。
これは、情報量を削ぎ落としたデザインが、作り手にとって、むしろ厳しい試練になっているということでもあります。
飾りで誤魔化せる余地が一切ない分、素材選びから仕上げの精度まで、すべての工程において妥協が許されないんですよね。
逆に言えば、シンプルな文字盤で高い完成度を実現できているブランドは、それだけ確かな技術力とデザイン力を持っているという、何よりの証明になります。
既に経験済みだと思われますが、よくお客様からパテックはシンプルだけどやっぱり作りが違いますねぇ・・・って言葉が出てくるのですが、これはそのままの意味で、おそらく直感的に感じられる部分ですよね。
情報量の少なさは、決して手を抜いた結果ではなく、むしろごまかしの効かない、真剣勝負の舞台だといえます。
実際、当店でヴィンテージのドレスウォッチを一本一本見比べていく中でも、この違いははっきりと表れます。
では次に、この差がもっとも表れやすい部分である、針とインデックスの仕上げについて、より詳しく見ていきましょう。
針とインデックスの仕上げに、真価が表れる
情報量の少ない文字盤の中で、もっとも作りの差が表れやすいのが、針とインデックスの仕上げなんですよね。
まず針についてです。
シンプルな文字盤における針は、時間を示すという役割だけでなく、文字盤全体の印象を決定づける、いわば主役級の存在です。
視聴者様も針の形状が少し違うだけで、時計の印象が大きく変わるのはすでに経験されて来てることだと思います。
針の先端がどれだけ鋭く整っているか、面取りされた側面がどれだけ均一に光を反射するか、針の山がしっかりと立ち均一であるかどうか、などなどこうした細部の一つ一つに、仕上げの手間がそのまま表れます。
インデックスについても同じことがいえます。
立体的に取り付けられたインデックスは、その一つ一つの角度・高さが揃っているかどうかで、文字盤全体の印象が大きく変わります。
わずかでも傾いていたり、高さが不揃いだったりすると、シンプルな文字盤ほど、その乱れがすぐに目についてしまうんですよね。
逆に、寸分の狂いもなく整然と並んだインデックスは、それだけで見る人に安心感と信頼感を与えてくれます。
派手な装飾がない分、こうした基本的な要素の完成度こそが、そのブランドの実力を、そのままに映し出しているということなんですよね。
特に自然光の下で腕時計を眺めたときの印象は、店内の照明の下とはまったく違ってくることがあります。
針やインデックスの仕上げが本当に丁寧なものであれば、光の角度が変わるたびに、生き生きとした表情の変化を見せてくれるんですよね。
では次に、正面だけでなく、横から見ることでしか分からない部分!についてお話しします。
ドレスウォッチは正面より横顔を見るべき?
ドレスウォッチの良し悪しを見極めるとき、多くの方は正面から文字盤ばかりを見てしまいがちです。
ただ実は、腕時計の作りの質を本当に見極めたいなら、ケースの側面や、ラグと呼ばれるベルトの付け根部分にこそ注目していただきたいんですよね。
ラグは、単にベルトを固定するためのパーツではありません。
ケース本体からラグへと続く曲線が、どれだけ滑らかに、そしてどれだけ自然に手首の丸みに沿っていくかによって、腕時計の着け心地も、見た目の印象も、大きく変わってくるんです。
もちろん、手首に沿うようにラグが丸められてるのだけが正解ではありません。
ケース型が小さい場合は、ラグを使って視覚的に大きく見せるために、長く伸ばす意匠もありますし、ティアドロップのような、ラグだけで装飾とみなされる部分も大きく影響しますからね。
そして、ドレスウォッチを多く扱っていると気がつくことは、ケースの裏蓋側の側面はほとんどの場合で、鏡面仕上げにしてあることです。
分かりやすいように、サントスデュモンを使って解説しますが、このように裏蓋側の手の甲に乗っかる部分は、サテン仕上げですがその両側面はテーパーがかかった鏡面仕上げです。
今回はサントスデュモンを出しましたが、ほとんどの場合でドレスウォッチは裏蓋がこのようなテーパーの鏡面仕上げになっています。
ブランドによってその年代は変わって来ますが、90年代くらいまでに作られている腕時計というのは、基本的にケースは公房で作ってもらってたので、工房側で共通したデザイン設計があったのかもしれません。
ちなみに、皆様大好きロレックスの無垢モデルも例外ではなく、ジェネックスという工房に作ってもらってました。
その事が分かるのは、裏蓋の内側から分かる刻印なのですが、詳細にそう言ったところも知りたい方はこちらの『ロレックスの14Kゴールド【オイスターパーペチュアルデイト】このケースは誰が作ったのか?』で解説しておりますので気になる方はご覧下さいませ⬇️
話を戻しまして、側面から見た時にテーパーをかけた鏡面仕上げは、これは明確に側面から見た時の美しさを意識してデザインしてあるのだと私は考えております。
ケースを横から光を当ててみて初めて、その面がどれだけ滑らかに磨き上げられているか、どこにも歪みがないかが、はっきりと分かるんですよね。
ドレスウォッチのように丁寧に作られた一本は、正面から見た端正さだけでなく、横から見たときの流れるような曲線の美しさまで、一貫して作り込まれています。
ただ実際問題として、いちいちサイドを見てこの腕時計の作りはいいなぁ・・・・って感じる方はいないはずなんですよね。
なので、これらってのは腕に乗せた時に感じる全体の調和感というか、まさしく直感から感じ取るべき部分だと考えております。
そう言った細かいところにまで、繊細な仕上げを施していると、時計全体にオーラが放たれますからね。
当店でヴィンテージのドレスウォッチをご案内する際も、正面の文字盤だけでなく、鏡で見たときの横からもご覧いただくようお伝えしています。
では次に、ケースの厚みと曲線にも、職人の判断が宿っている!と言う内容で解説して参ります。
ムーブメントの薄さを実現させるためにも職人の判断が宿っている
最後に、ケースの厚みそのものに宿る、見えにくい作り込みの差についてお話しします。
薄いケースを作るということは、単に「削って薄くする」という単純な作業ではありません。
そもそも、ドレスウォッチの多くは、防水機能はありませんし、それを組み込むための余白すら確保されていないほど、薄さを優先して設計されています。
限られた厚みの中に、ムーブメントとケースの構造だけを、精密に収めていく必要があるんですよね。
だからこそ、薄いケースを美しく仕上げられるかどうかは、そのブランドが持つ設計力・加工精度を、そのままに映し出す指標になるんですよね。
また、ムーブメントもハイスペムーブが搭載される傾向にあります。
やはりブランドとしても、スポーツウォッチよりはドレスウォッチの方に格上の称号を与えますので、それを証明するムーブメントも良いものが入ります。
ですが、ドレスだからハイスペが搭載されるというわけでもありません。
これも卵が先か鶏が先かみたいな話になりますが、そもそも薄型ムーブメントを作ること自体にこちらも設計力・加工精度を必要とするからです。
なんで薄型を作ることが出来るブランドが評価されてるかというと、ただ単に他のブランドがそれを実現できないからです。
なんで、雲上ブランドがジャガールクルトのムーブメントを載せてたかというと、当時薄型の技術を習得してたのはジャガーとピアジェしかいなかったからです。
雲上であっても、それを作るのは圧倒的に難しかったんですね。
カルティエはジャガーを採用しつつも、ピアジェのムーブメントも搭載させていましたし、ピアジェ自身も貴石の文字盤(これはオニキスやマラカイトとかラピスラズリですね)を使うためには薄型ムーブメントでないと実現できないと理解していました。
少しイメージして頂きたいのですが、大きくて広い空間にはその分余白があるので、それぞれのパーツも大きく作ることが出来るし、その分設計に遊びを作ることができます。
ですが、薄型で直径が小さいムーブメントはその真逆になってしまいます。
よって、大きさで主張するのはデカアツですが、その見えない技術の難易度という軸で見れば、薄型ムーブメントを搭載した、ドレスウォッチの方がものづくりとして優れていると言えるでしょう。
ベルモントルの視点
ここまで、文字盤に何もない腕時計ほど、なぜ作りの差が目立ってしまうのか?を解説して来ました。
情報量の少なさは、決して手を抜いた証ではなく、むしろ誤魔化しの効かない、真剣勝負の舞台でしたよね。
針とインデックスの仕上げ、正面からは見えないラグの曲線、そしてケースの厚さを実現させるためのムーブメントの薄さという、細部の一つ一つに、作り手の技術力がそのままに表れています。
当店では、こうした見えにくい部分の作り込みまで含めて、一本一本の腕時計をご紹介することを大切にしています。
文字盤だけでなく、横から、光の角度を変えながら、ぜひじっくりとご覧いただきたいですね。
シンプルであることは、簡単に作れるということでは決してありません。
その静かな佇まいの奥にある技術力にこそ、本当の価値が宿っているんですよね。
気になる一本があれば、ぜひ一度、当店までお越しください。
一本一本の背景まで丁寧にお伝えしながら、後悔のない選択のお手伝いができればと存じます。