腕時計の価格は、どの地点から『性能』では比較できなくなるのか?
こんにちは、ベルモントルの妹尾です。
本日の動画では「腕時計の価格は、どの地点から『性能』では比較できなくなるのか?」という内容で解説して参ります。
腕時計を選ぶ時、価格が高ければ高いほど性能も上がっていくように考えてしまうことがありますよね。
例えば50万円より100万円、100万円より300万円の腕時計の方が、何となくすべての面で優れているように見えます。
もちろん価格が上がることで、ケースの作りやムーブメント、ブレスレット、機密性などが良くなることはあります。
ただ、高級腕時計を見ていくと、途中から少し話が変わってきます。
100万円の腕時計と500万円の腕時計を比べても、500万円の方が5倍正確に動くわけではありません。
むしろ時間の正確さだけを求めるのであれば、数万円のクオーツ腕時計の方が優秀なことさえあります。
では腕時計は、どの地点から「性能が高いから価格も高い」という比較ができなくなるのでしょうか。
そして、その先で私たちは何にお金を払っているのでしょうか。
今回は腕時計における性能とは何なのかというところから、高級腕時計の価格差がどこで生まれているのかまでベルモントルの妹尾さんと一緒に見ていきましょう。
そもそも「腕時計の性能」とは何なのか?
まず最初に、腕時計の性能とは何なのかを考えてみます。
一番分かりやすいのは精度ですよね。
一日にどのくらい進むのか。どのくらい遅れるのか。
このように腕時計は時間を知るための道具ですから、これは非常に分かりやすい性能ですよね。
ほかにも防水性能があります。
日常生活防水なのか、100mなのか、300mなのか。
パワーリザーブもゼンマイを十分に巻いた状態から何時間動き続けるのか。
他にも耐磁性能や耐衝撃性、ムーブメントの姿勢が変わった時にもズレることなく動いてくれるのか?こういったのも腕時計としての性能に含まれます。
これらは比較的数字で理解できます。
ですから価格が上がっていく最初の段階では、実際に性能差を実感できることがあります。
ケースの作りがしっかりしてる。とか
防水性能が高くなる。とか
ムーブメントの精度や安定性が良くなる。などなどこういう部分です。
ただ、ここで少し考えてみたいことがあります。
「時間を正確に知る」という目的だけを考えた場合、高級な機械式腕時計である必要はありません。
数万円のクオーツ腕時計でも非常に高い精度がありますし、スマートフォンを見れば正確な時刻を簡単に確認できます。
つまり高級腕時計という商品は、そもそも価格が上がり続けるほど「時間を知る道具として優秀になっていく商品」ではないんですよね。
ある程度のところまで行けば、腕時計として必要な性能は十分になります。
そこから先は、性能をさらに高くすることだけにお金が使われるわけではありません。
ここが、高級腕時計を見る時の最初のポイントです。
では次に、価格が上がるほど、「性能」に払っている割合は小さくなっていく!という内容で解説して参ります。
価格が上がるほど、「性能」に払っている割合は小さくなっていく
例えば腕時計を10万円、50万円、100万円、300万円、500万円と見ていったとします。
もちろんブランドやモデルによって違いますので、「100万円を超えたらここから高級腕時計」というように単純な線を引くことはできません。
ただ、価格が上がるほど、価格差を性能差だけでは説明しにくくなっていきます。
例えば50万円から100万円になった時には、ケースやブレスレット、文字盤、ムーブメントの作りに分かりやすい違いがあることもあります。
では100万円から500万円になったら、腕時計として5倍便利になるのかというと、これは違いますよね。
500万円の腕時計の方が防水性能が低いこともあります。
手巻きであれば、自分でゼンマイを巻かなければならないし、デイトが付いていなければ、日付すら表示されません。
一方で100万円前後のスポーツウォッチには、自動巻きで、防水性能も高く、日付も付いていて、日常的には非常に使いやすいものがあります。
性能だけを見るのであれば、こちらの方が優れていますし、いつもお話ししていますが、そんなのよりもスマホの方が圧倒的に多機能だし優秀です。
では500万円の腕時計は、100万円の腕時計より劣っているのかというと、もちろんそうではありません。
途中から、比較する対象そのものが変わっているんです。
それは
ムーブメントを薄くする。とか
ケースを薄くする。とか
仕上げや面取りを素人が見ても圧倒的に素晴らしいと分かるところまで持っていく。とか
ムーブメントのゴマより小さい部品を一つずつ美しく仕上げる。とか
文字盤を機械ではなく職人の手によりあえて手間のかかる技法で作る。とか
こういったことは、腕時計を便利にするためのものではありません。
むしろ合理的な考え方とは反対にいるポジションです。
でも、高級腕時計ではここにも非常に大きな手間をかけることに意味があります。
例えば薄型の手巻き腕時計です。
薄くなったからといって、時間がさらに正確になるわけではありません。
防水性能が上がるとも限りません。
それでも、薄いムーブメントを作り、それを薄いケースに収めること自体に技術が必要になります。
つまり価格が上がっていくと、
「性能を高めるためのお金」だけではなく、「腕時計そのものをどう作るか?」に使われるお金が増えていくんですね。
そして、高額な腕時計を購入するというのは、正確な時間ではなく、その裏にある手間にお金を払っていると言えるでしょう。
ではまた別の角度でそれらを見ていくために、次は同じ価格でも、ブランドによって「お金をかけている場所」は全く違う!という内容で解説して参ります。
同じ価格でも、ブランドによって「お金をかけている場所」は全く違う
ここまで、腕時計は価格が上がっていくほど、単純な性能だけでは比較できなくなるという話をしてきました。
では高級腕時計になった時、どこを見れば違いが分かるのかって話なのですが、ここで重要なのが、ブランドによって「お金をかけている場所」が全く違うということです。
あるブランドは防水性能や耐久性を非常に重視しているかもしれません。
例えば、ケースを頑丈に作って、自動巻きムーブメントを安定して動かして、日常でガンガン使える腕時計を作る!
これは分かりやすく実用性能にお金を使っている腕時計ですよね。
一方でケースやムーブメントを極端に小さく、薄くしたいのであれば、そこには制約が出てきます。
複雑機構もそうです。
機能を追加すれば部品点数は増えます。
その分、設計も組み立ても複雑になります。
ですから、
「機能が多いほど性能が高い」
とも単純には言えません。
ここまで来ると、高級腕時計になるほど、『どれが一番優れているか?』を一つの基準だけで決めることが難しくなってきます。
ある腕時計は防水性能を極めているし、他は薄さを極めているし、他は非常に複雑な機構を小さなケースに収めている技術力を持っているし、他は長期間安定して動く実用性を優先している。などなど
それぞれ目指している方向が違います。
ですから高級腕時計になるほど、
「どちらの性能が上か?」ではなく、「何の性能を優先して作られているのか?」
を見る必要が出てきます。
これは価格を考える上でもかなり重要です。
500万円の腕時計が100万円の腕時計より防水性能が低かったとしても、それだけで「500万円の方が性能が低い」とは言えません。
そもそもその腕時計は、防水性能で勝負するために作られていないからです。
つまり高級腕時計では、価格が上がるほど性能が意味を失うのではなく、性能を一つの物差しで順位付けすることができなくなっていくということなんですよ。
だからもう究極を言ってしまえば、高い時計になればなるほど、機能から離れていって『意味』に変わるんですよね。
そして、もっと言ってしまえばそれを買う意味を自分の中で見出せるのか?
ここになってくると考えております。
ここが、一般的な工業製品と高級腕時計の大きな違いだと思いますね。
では最後に、高級腕時計は、どの地点から「性能」では比較できなくなるのか?という内容で解説して参ります。
高級腕時計は、どの地点から「性能」では比較できなくなるのか?
ではここでは、今回のタイトルに戻ります。
それは腕時計の価格は、どの地点から性能では比較できなくなるのか?って話なのですが私は、金額で明確に線を引くことはできないと思います。
「100万円を超えたら性能では比較できません」という単純な話ではありません。
同じ100万円でも、スポーツウォッチとドレスウォッチでは目的が違います。
300万円でも、非常に高い防水性能や耐久性にお金を使っている腕時計もあれば、薄さや仕上げにお金を使っている腕時計もあります。
ですから金額ではなく、
「腕時計として必要な性能が十分に満たされた地点」
からだと考えると分かりやすいです。
それは当たり前の水準ですが
時間がきちんと分かる。とか
日常的に安心して使える。とか
十分な精度がある。とか
必要な防水性能がある。などなど
ここまで来れば、さらに価格が上がった時に得られるものは、必ずしも便利さではなくなります。
そこから先は、「何に価値を感じるのか」という世界に入っていきます。
例えば300m防水のステンレス製スポーツウォッチと、薄型の金無垢2針腕時計があるとします。
実用性能だけで比較すれば、スポーツウォッチの方が優れている項目はかなり多いでしょう。
それでも薄型の金無垢腕時計の方が高価なことがあります。
それは性能競争ではなく、そもそも違う価値を売っているからです。
それは
薄さ。とか
ケースの造形。とか
貴金属であること。とか
ムーブメントの仕上げと作り込み。とか
歴史。とか
デザイン。などなどそういったものを選んでいるわけです。
そして高級腕時計を見ていて面白いのは、この地点を超えると「一番性能が高いものを買えば正解」という考え方が成立しなくなることです。
ある方は防水性能を重視する。
ある方は薄さを重視する。
ある方はムーブメントの仕上げを見る。
ある方は100年前から続くケースデザインに価値を感じる。
このように高級腕時計は、前述した通り途中から、
「性能の高いものを選ぶ商品」ではなく、「自分が何に価値を感じるのかを選ぶ商品」に変わっていくんですね。
だから500万円の腕時計を見て、
「この価格なのに小さい」
と考えることもできます。
ただ、そこで売られているものが「大きさ」ではないのであれば、その比較自体が少しずれてしまいます。
性能だけを見るなら、もっと合理的な腕時計はいくらでもあります。
それでも高級腕時計が存在し、シンプルな2針や手巻きの腕時計に何百万円、何千万円という価格が付くこともあります。
そこには、性能以外のものに価値を感じる方がいるからです。
この価値は明確に決まったモノではありません。
これまでどんな場所に行き、どんなものを見て、何を所有して、何を美しいと感じてきたかによって答えが変わります。
そして、そこにお金を払う意味を自分が見出すことが出来れば、それが正解であってそれは必ずしも他者が理解出来る範囲ではないし、自分がそれで納得してればそれで良いんだと思いますね。
腕時計というのは本来、値段やブランド名だけでは、その一本が本当に納得できるかどうかは、決まらないんですよね。
その一本が持つ背景まで見えてきたときに、初めて「これだ」と思える自分の一本に出会えるんですよね。
店舗は表参道駅から徒歩2分の場所にあるので、雨の日でもほとんど濡れずにお越し頂けます。
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